火の粉:雫井脩介
2005年 06月 10日
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「隣人」をテーマにしたそれはそれはコワイ話。
「私は殺人鬼を解き放ってしまったのか?」
元裁判官の梶間勲の隣に引っ越してきたのは
勲が2年前に、幼い子供を含めた一家惨殺の裁判で
無罪判決を言い渡した武内真吾伍。
武内はとても紳士的な態度で、人なつっこい笑顔を
浮かべ、勲の家族に対して異常なほどの
親切心を見せる。そう、異常なほど。
最初ねぇ。。。ダメかなぁと思ったですよ。
勲の妻、尋恵は寝たきりの姑、曜子の介護に疲れ切ってる。
感謝の言葉の一つもなく、彼女は下の世話から
何から何まで嫁として、せめて最後に
ありがとうと言わせたいが為だけの意地で
更年期障害を抱える身体で尽くしている。
でもそんな尋恵を夫の勲はまかせきり、義姉は
嫌味と文句ばかり。その行動がひどすぎて
読むに絶えられず一度はやめようかと思ったほど。。。
でもその時点で作者の掌中にはまっていたわけです。
この作者のすごいところって30過ぎの息子を持つ尋恵
その嫁の雪見の女性の心理描写の的確さ。
僅か2〜3歳の娘の書き方まで違和感がない。
そして傍観を決め込む勲や飄々としたいかにもいそうな
坊ちゃん育ちの息子など本当に「どこにでもいそう」
そして隣人の武内。絶対にいないと言い切れない恐さ。
まさしく「現代のミステリー」
あ、でも文庫裏の説明文「読者の予想を裏切り続ける
驚愕の犯罪小説」ってのはどうかなぁ?(苦笑)
by acha-books
| 2005-06-10 10:32
| :雫井脩介
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