明日の記憶:荻原 浩
2005年 07月 20日
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2005年本屋大賞ノミネート作品ということで
「本屋さんが売りたい本」です。
さすが「本好き」な方々が薦めるだけあって
読み応えある素晴らしい作品。
広告営業マンとして働く佐伯は最近、頓に物忘れが
激しい。単語が思い出せない。外国人俳優のあの
有名な名前、映画のタイトルが思い出せない。
それどころか部下の名前も忘れる、そして
仕事の打ち合わせを忘れる。
自分自身にショックを受けて「鬱病か?」と
不安を抱き精神科をたずねると
診断された病名は「若年性アルツハイマー」だった。
まだ50歳、仕事もまだ責任ある地位にあり
妻もいる、娘のお腹には新しい命が宿り
式を目前にしている。
まだまだ自分の人生は捨てられない。
なのに身体がどんどんと自分を裏切っていく。
メモでいっぱになった背広のポケット。
それでも追いつかないほど記憶が消えていく。
自分が壊れていくのを自分でわかってしまうという恐怖。
病気の進行は個人差。まったく先が見えない状態で
確実にやってくるその時。
下手なミステリーよりもずっと恐く
そこらの恋愛小説よりもずっと愛を感じます。
小説だからこそ「きれい」に仕上げているものの
逆にその美しさがとてつもなくせつないです。
最後の一頁はきっと涙。
by acha-books
| 2005-07-20 11:01
| :荻原浩
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