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秘密:東野圭吾
2005年 10月 16日 |
秘密:東野圭吾_a0104226_13225092.jpg
 平穏な生活に訪れた突然のバスの転落事故。
そこには妻と娘が乗っていた。
瀕死の重体で担ぎ込まれた血だらけの妻と
脳に損傷を受け植物状態の娘。
妻が息を引き取り悲しみに明け暮れていると
娘が目を覚ました。
しかしそれは娘ではなく、36歳の妻の魂だった。
という、映画化もされたお話。
意識だけ別の身体に入ってしまうというのは
有名なところでは「転校生」やら色々と今までにも
あったわけで、まぁあのパターンか、と
映画情報を見ているときは、よくある設定だよね、と
タカを括っていました。
が。
これはすごくせつない。
36歳の妻が小学校5年生の娘の身体を手に入れる。
2度目の人生を与えられた妻は
初めは、娘のために、自分のようにはなって欲しくないと
後悔しない人生を過ごさせてあげたいからという理由で
勉強を始め、私立中学を受験し、さらに高校受験もし直し
クラブ活動、友人との交流と青春を謳歌しはじめた頃
中年の夫は一人残されたような疎外感を感じ始める。
問題は、そんな精神的なものだけじゃない。
当然、肉体的な欲求もあればストレスも感じる。
妻は妻であっても、身体は自分の血を分けた実の娘。
これはもぅホント生々しい。
これを果たして映画でどこまで描ききれたかどうか。
文章で読むからこそ、せつなくて哀しい。

最初この夫婦の奇妙な関係を世間に対して「秘密」と
名付けていると思っていたけれど
最後は飛んでもない結末。
本当の「秘密」がそこには存在した。

んー、これも映画見ちゃった人はわかってるんですよねぇ。
そのオチがたまたま想像できちゃったり、知っちゃったり
していたらこの本のおもしろさはきっと半減。

見ていない映画を酷評するのもなんですが
この文章上の世界、心は表せないんじゃないかなぁ。
映画を見た友人は「オヤジの夢物語って感じの内容で最悪」と
語ってましたが本を読んだ限りでは
この状態に陥りたいオヤジは皆無だと思うよ。
誰に感情移入して読むかでも、本の味は変わるけれど
あたしはすっかりこの主人公の男性に感情移入して
涙。

蛇足ですが、犯人が最後の最後までわからなくて
その犯人に行き着くまでの謎解きを描いたのが
「ミステリー」で、犯人は最初からわかっているけれど
主人公が犯人と接触しながらも謎を解いていくのを
読者にハラハラさせながら描くのが「サスペンス」だそうです。
前者がアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」や
「オリエント急行の殺人」だとしたら後者は
刑事コロンボのシリーズ、と先日テレビでやってましたが
(これが正しいどうかは別として(苦笑))
そう考えると、この本は立派な「ミステリー」だと思います。
最後の最後までしっかり味わって欲しい本。
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