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疾走 上下巻:重松清
2005年 12月 20日 |
疾走 上下巻:重松清_a0104226_19551953.jpg
 「誰か一緒に生きてください」
これが15歳の少年の内側から出てきた言葉。
それほど凄まじく痛々しく重い。

「浜」は「沖」を差別する、そんな二つの土地を舞台に
浜で生まれ育ったシュウジは4つ年上のシュウイチが
好きだった。シュウイチは学校始まって以来の秀才で
家は兄を中心にまわってきた。ところが優秀な高校に
上がり、親の期待に応えきれなくなった兄は壊れていく。
家の中も徐々に壊れていく。
放火魔−赤犬として捕まる兄。家を捨てて姿を消した父
酒浸りでギャンブルにはまっていく母、そして赤犬の弟として
いじめられる「おまえ」
リゾート開発の話が浮上し次第に溝を深めていく
「浜」と「沖」の人々。
ヤクザが幅をきかせはじめ壊れていく町。

いじめだけをテーマにした本ではありません。
この本は、ただただ人と繋がりたくて、ひとつになりたくて
やみくもに疾走する少年の物語。

疾走、まさにシュウジの生き様はその一言に尽きます。
この表紙のように。

話は、孤独、祈り、暴力、家族離散、セックス、聖書、殺人と
様々なテーマを持ち、語りかけてきます。
ラストは壮絶。
気が付いたら涙がこぼれていました。
悲しいなんて言葉じゃ甘いそんな涙です。


映画化もされてるのね。
と、サイトを見たら「ヤクザの女に手を出して折檻」と。
ほぅほぅ。折檻。
そんな生ぬるい描写じゃないです、原作は。
エログロが苦手な方は覚悟して読んでください。
あまりにひどすぎて吐き気すら(苦笑)
ただ、そういった描写があたしには「余計」には思えない。
むしろ必須。

ひとつになることを望んで、色々な人の「ひとり」を
背負ってしまった15歳の少年。
絵空事と捨てきれない重さ。

「流星ワゴン」とはまったく違った重松作品。
読み終わったあとはしばし放心。
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