陰陽師 付喪神(つくもがみ)の巻:夢枕獏
2006年 05月 20日
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陰陽師3巻目です。もぅね、心地よいです。
やっぱりね、これはミステリ、謎解きだと思います。
だから読み終わったあともまた心地よい。
純粋に安倍晴明と源博雅の関係も心地よいし
不思議なさまざまなもの、鬼や呪の存在を
あるがままに受け入れるその世界そのものも心地よい。
読んでいてわくわくもするし
そうか、と心に沁みるものもあり
すべてを心に吸収したい気分です。
またまた以下覚え書き。ネタバレだから読まないように(笑)
■瓜仙人
博雅が帝の使いで瓜を運ぶ途中に出逢った不思議な老人。
最近都で起こる奇怪な事件はすべてその老人、
方士丹蟲(たんちゅう)が操る「管狐」くだきつね
ー妖力を持った小さな狐の仕業。管狐に対するのは
晴明が紙から作った小さな犬。
■鉄輪(かなわ)
愛した男が他の女にうつつを抜かし残された女の恨みは
毎夜、「丑の刻参り」でというありきたりに見える話の
オチが、生成(なまなりー女が鬼に変わる前の段階)に
なった死者が心を静めるため、博雅の笛の音を聞きに
現れるという「自然」な姿
一方を守るということは一方を見捨てるということ。
■這う鬼
屋敷の女主人へと下男が預かってきた箱。中身は
瞼ごとくじりとった目玉がふたつと陰毛を付けたまま
えぐり取られた男根。預けた女は付き合っていた男が
通わなくなり、挙げ句に殺されるところを逆に殺して
新しい女の元へ送りつけた。我が身の髪の毛を皮から
はいで生き霊となっていた。願いを達成させたように
信じ込ませることで嬉しさと哀しさの中消えていく女。
■迷神
愛する男が流行病で死んだ。残された妻は哀しさゆえ
一目でいいから夫に会いたいと願い智徳法師に
いくらでも金は出すと泣きついた。智徳法師に紹介され
鼠牛法師に死者を蘇らせてもらったものの恐ろしさの
あまり会うことができない。なんとかならぬものかと
晴明に話が舞い込んだ。鼠牛法師とは蘆屋道満という
陰陽師であった。人がかけた呪を解くために
晴明は道満と話をつける。呪を解く鍵は博雅の語った
満開の桜への思い。自然にはらりと落ちる桜。
■ものやと思ふと。。。
帝のもと、大きな歌詠み(歌合うたあい)の会が催され
接戦の末、負けたのち食べ物を受け付けなくなって
死んでいった壬生忠見。夜な夜な彼の鬼が内裏に出て特に
悪さを働くでもなく自分の詠んだ詩を呟いて消えていく。
しかしそれが帝の耳に入り、なんとかするように、と。
実は壬生忠見も親の忠岑も2代とも歌を詠む者だったが
すべて自作ではなく「万葉集」に詠み人知らずと
表された鬼が作ったものだった。忠見の最後の最後に
詠んだ詩は初めて己で作ったもの、しかし対戦相手が
出した歌はその鬼が過去に詠み人知らずとして作った歌を
元歌にして作ったもの。鬼はいくらでも忠見を
勝たせることができたがこのときばかりは悩みぬいて
逃げたのだった。勝負を天に任せた結果、
死んでしまった忠見に対して悲しむ鬼の姿。
■打臥(うちふし)の巫女
瓜を手土産に持ってこいという晴明に博雅は瓜を
持って行ったところ、仕事のために瓜を確認したかったと。
理由を聞くとなんでも「予言」する巫女がいる、彼女に
瓜が見える、とだけでよいのか悪いのかもわからず
困っている兼家に、買った瓜を見てもらいたいと
いうものだった。見るとその瓜には呪がかけられていた。
呪をかけたのは道満。依頼したのは兼家の兄、兼通。
晴明が出てきたら降りる、と言っていた道満はそのまま引き
事は解決。予言した女の元に行ってみるとそこにいたのは
前に晴明が身体の中にたまった苦蛇(くだ)を取ってやった
白比丘尼(しらびくに)であった。
■血吸い女房
夏の暑さ、雨がもぅ30日以上も降っていない。
空海和尚や妙月和尚のように雨乞いで雨を降らすことが
できるかと尋ねる博政に晴明は「天地の運行を
どうこうすることはできない」けれど「よむことはできる」。
そんな折り、雨乞いの派手な宴をした藤原師尹公の屋敷で
女房達が次々と「血を吸われる」事件が起こる。
捕まえてみると一人の女房、彼女にはものが取り憑いていた。
聞くと神泉苑の池に150年も生きている蛭(ひる)
空海和尚や妙月和尚の投げ入れた諸龍真言の紙を
食べまた真言が食べたくて、池の中で真言を唱えていた
この女に取り憑いた。
蛭を池に戻す折り「このような日照りの原因を作ったのは
お前であろう、東海龍王に雨を降らせるよう伝えよ」と
もったいぶった口調で説くと、その夜には雨が。
師尹公はしばらくの間、宮中にて晴明が降らせたと
いいまわるに違いないという博雅の言葉に微笑を
浮かべるばかりの晴明。
あ、すっごい長い(苦笑)
by acha-books
| 2006-05-20 23:23
| :夢枕 獏
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