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四十回のまばたき:重松清
2006年 09月 15日 |
四十回のまばたき:重松清_a0104226_21523716.jpg
 重松の初期作品ということで作風が
ちょっと違うと思ったら初期においても
異色作品として見られていたものラシイ。

主人公圭司は感情の表現が上手にできない男
妻の葬式にも涙がでなかった。
生きていた頃の妻には、安定した人
冷静で「一緒にいる人の心のバランスを
取らせる、崩れない人」と言われた。
でもそれは一種の欠陥でもあった。
妻の死に隠された事実が浮き彫りとなり
心に常にひっかかる。そんな状態が続く頃
義妹がまた毎年のように「冬眠」するために
我が家を訪れる。
季節性鬱病の義妹、耀子は妊娠してやってきた。
手当たり次第に誰とでも寝る耀子。
もちろん父親はわからない。
耀子は言う。「家族になって」

冬眠してしまう耀子、日本だけで発売し
文章が上手くない翻訳家を使うよう条件を出した
粗野なアメリカ人作家。
そしてその白羽の矢が当たった圭司
この三人が語り合うシーンがとてもいい。

どこか何か、欠落感を抱えた人たち。

最近の重松に比べて性的な描写も多く
文体も、主人公を意識してか、淡々としていて
まるでつるんとしたプラスティックのよう。
フラットで温度がないような。
だからこそ、感情を爆発させるシーンは
ずんっと響く。

重松独特のこちらに投げかけてくるリアリティを
持った重さ、鋭さは奇病と翻訳家という限られた職業
不思議な魅力を持ち合わせた乱暴な作家という
特異性ゆえに設定的な感情移入はまずないはずなのに
彼らが問いかけている問題はちゃんとこちらに
届き、こちらの感情を揺らす。
まだ包み込むような優しさは完成されていないものの
彼らの中に救いは見いだせることで
読者も救われる、そんな本。

「本質的には、世の中に嫌な奴なんて誰もいない。
自分と異なる価値観や行動パターンや見解を
持っている奴がいるだけだ。あなたは、便宜上、
嫌な奴だと呼んでいるだけなのである。」
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