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見知らぬ妻へ:浅田次郎
2006年 09月 23日 |
見知らぬ妻へ:浅田次郎_a0104226_2201874.jpg
 久々の浅田次郎ですが、この人には
ずっと「壮大なホラ」を吹いていて欲しい。
「蒼穹の昴」のように、「天切り松」のように
「壬生義士伝」のように。
この短編集にはどれも壮大な舞台は用意されて
いません。むしろものすごく小さな狭い世界。
その世界の中で他人には推し量ることのできない
様々な人の人生の一部がとてもせつなく
やさしく綴られています。

若い頃、今では顔も思い出せないのに胸の内に
強烈なインパクトを残したナオミ「踊り子」

場末の酒場でピアノを弾いている元チェリストが
抱え込んでいた思い「スターダスト・レビュー」

子供の頃に犯した混血児への軽い気持ちだった
いじめから起きてしまった不幸な出来事を
夫婦と幼馴染みが抱えたしこり「かくれんぼ」

取り壊される予定の公団住宅で自殺した老女の
心の内を描いた「うたかた」

我が身を心から心配してくれる恋人と母を
持つチンピラの部屋に。。。「迷惑な死体」

大好きな親友と憧れていた人、
その二人への気持ちから自分を騙す為に
作り上げた過去「金の鎖」

競馬が好きでその為だけに仕事選び
理解ある妻も得たけれど競馬友達の死から
自分でも思いも寄らぬほど深くこたえていた「ファイナル・ラック」

偽装結婚した中国人は言葉も通じない相手なのに
愛してしまった男「見知らぬ妻へ」

どれも様々な人のほんの「一部」なのにその人にはその人の
そこに至るまでの人生があるという当たり前のことが
ちゃんと文章の奥に生きている、まさに短編らしい短編ばかり。
日常の果てとも言えるそんな話です。

とくに「うたかた」とてもじんわりきました。
あ、あと「ファイナル・ラック」小説の最後に書かれた
「結果」にはついついこちらまで「うわぁ〜〜〜」とつい涙が(笑)
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