うつくしい子ども:石田衣良
2006年 09月 23日
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緑豊かなニュータウンを騒然とさせた九歳の少女の殺人事件。
犯人として補導されたのは、ぼくの十三歳の弟だった!
崩壊する家族、変質する地域社会、沈黙を守る学校…。
殺人者のこころの深部と真実を求めて、十四歳の兄は
調査を始める。少年の孤独な闘いと成長を
痛ましくもみずみずしく描く、感動のミステリー。
(「BOOK」データベースより)
殺人という事件は殺された本人、そしてその家族
さらに加害者の家族まで「被害者」となってしまう事実。
今まで読んだ中でも「疾走」や「13階段」でも
それは十分に書かれていたけれど決定的にこの本が
違うのは読んでいてとてもこちらまで引き込まれる程
主人公が真っ直ぐなこと。
加害者である弟の起こした残忍な事件、そして
13歳という年齢ゆえに法的に裁けない苛立ち
逮捕ではなく補導という処置。
日増しに集団として攻撃を加えていく世間とマスコミ。
その歪んだ社会に立たされた僅か中2の少年が
自分の中に持ち続ける「正しいこと」
そして彼は、友達のため、妹のために勇気を振り絞る。
「弟にも誰かがそばにいてやらなきゃいけない。
誰かわかってやる人がいなくちゃって思って。
殺人犯を相手にそんなことを考えるのはおかしいんでしょうか。
だけどあいつはぼくの弟なんです」
気の滅入るような少年犯罪をモチーフに使いながら
主人公の少年の精神力の強さ、心の純朴さに
とても救われる思いです。
ラストの締め方は単純さや甘さなんかではなく
作者自身の視点の優しさのような気がする。
初めて、石田衣良読みましたが、かなり気に入りました。
by acha-books
| 2006-09-23 22:14
| :石田衣良
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