人気ブログランキング | 話題のタグを見る
:books:
achabooks.exblog.jp
  Top
キッドナップ・ツアー:角田光代
2007年 09月 02日 |
キッドナップ・ツアー:角田光代_a0104226_13174811.jpg
私はおとうさんにユウカイ(キッドナップ)された!
私の夏休みはどうなっちゃうの!?
五年生の夏休みの第一日目
私はユウカイ(=キッドナップ)された。
犯人は二か月前から家にいなくなっていたおとうさん。
だらしなくて、情けなくて、お金もない。
そんなおとうさんに連れ出されて、私の夏休みは一体どうなっちゃうの? 
海水浴に肝試し、キャンプに自転車泥棒。
ちょっとクールな女の子ハルと、ろくでもない父親の
ひと夏のユウカイ旅行。私たちのための夏休み小説。
(出版社/著者からの内容紹介)


(本の内容ゆえちょいネタバレあるので注意)


あたしが読みたくて。。。な本だけれど今、息子にも
読ませています。
小学生でも読める文字の大きさと行間@単行本

夏休みの第一日目、私はユウカイされた。
この一行から始まる物語。え?っとさせられ
何?何?どうしたの?え?別居中のお父さんが犯人?
それも合意の上で「逃避旅行」を初めて。。。どうなるの?
と、「?」だらけで始まり、どんどん引き込まれる。

普通に夏休みを送っていたら
決して体験することのないような数々の体験。
というか、普通の保護者の庇護のもとなら、ということ。

頼りない情けないそしてお金もない父との行動は
貧乏で常識はずれで、初めはそれを嫌がり
逃げ出すことをも考える主人公、ハル。
でもその「異様さ」を子供ながらに感じ取り
その「異様さ」を冒険心から彼女自身「ひきこまれていく」。
いつでも帰れるし?という安心を心に持ちながら。

海や山(その先には幽霊話のある旅館)や
キャンプ(でもテントはゴミ箱から調達)などなど
子供にとって魅力的な場所でありながら
「普通」とまったく異なる体験。
父親に怒りすら感じるハル。

ところがだんだんそれが彼女にとって
快感に変わって行く。楽しいもの、おもしろいもの
心地よいもの、そして本来こぅあってもよかったのではないかと
感じる自分自身の変化。
普段絶対に選ばない服や水着、焼けた肌
薄汚れた自分。

そんな変化をもたらした父親に徐々に
惹かれていく。

この本はずっと一環して子供目線。
主人公のハルの言葉。
だから、父親が何故、娘を誘拐しなければならないのか?
母親との交渉の内容はなんなのか?
そういった「?」には何一つ答えてくれません。
あくまで父親と子供の関係性だけに焦点が当てられ
そして、親の都合で振り回される子供という
絶対的な条件は現実もこの小説の中も不変。

確かに、その「?」を解消されず消化不良を
感じるかもしれないけれどあたしは十分これでいいと思った。
ここで終わらなくちゃ。
だってこれは子供目線の話だから。
後はハル自身がこの後いろいろと想像するように
そして多分、ハルが大人になってからではないと
明かされないように、読む側も本を閉じた後
あれはなんだったんだろう?どんな理由があったんだろう?と
考える余韻を与えてくれる、とても心地よい終わり方だと思う。

作者の言いたいことはきっとそんな「説明」や「理由」ではないはずだから。

自分も親として、子供の視線をもっとありのまま
受けてもいいかなとちょっと免罪符的にも考えたり。
ありのままの自分を見せて、子供自身が理解していけばいい。
尊敬できない親であっても。
まぁそれはそれでなかなか難しいことなのだけれど。

一日で読めるステキおすすめ本です。
<< クライマーズ・ハイ:横山秀夫 PageTop 沈まぬ太陽 1〜5 >>
XML | ATOM

会社概要
プライバシーポリシー
利用規約
個人情報保護
情報取得について
免責事項
ヘルプ
Starwort Skin by Sun&Moon