最悪:奥田英朗
2007年 09月 08日
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不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や
取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。
銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。
和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。
無縁だった三人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて
転がり始める。比類なき犯罪小説。
小説のタイトル通り、それはそれは「最悪」な状態。
何気ない日常。取り立てて魅力的な登場人物でもなく
本当にどこにでもいそうな、それぞれの立場の人たちが
「自分は悪くない」という考え(それは誰でも同じように
自分に感じていること)からどんどん「最悪」な事態に。
どうして?なんで自分がこんな目に?と思うような出来事
それをこの本はこの厚みとスピード感を持って
その「ずれ」を見事に書いてます。
だってそれじゃだめだろ?と真面目なはずの女子行員にすら
思ってしまうほど納得がいってしまう。
描き方は、読んでいてずっと「絵」が浮かぶほどで
それゆえにまた読みやすい。
感情移入できそうもない立場の登場人物ですら
ついついその中に入り込んでいる自分に気づきます。
そして。。。読んでいてこちらまで「最悪」な
ずと〜〜〜〜んと落ちるような感覚に(苦笑)
どうなっちゃうの?!という最悪な状態がどう落ちをつけてくれるのか
もぅどんどん読めちゃう本です。この厚さなのにまったく
だれない、スピード感が落ちない、これはすごいなぁ。
一番読んでてむかついたのは零細企業の社長相手に
理屈をこねまわすマンション住人ですかね〜。
あたしも殴りそう(苦笑)
ってな感じに話にはいっちゃってます。
暴力シーンは結構グロいのでお気をつけて。
by acha-books
| 2007-09-08 11:15
| :奥田英朗
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