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輪違屋糸里 上下巻:浅田次郎
2007年 09月 21日 |
輪違屋糸里 上下巻:浅田次郎_a0104226_2149591.jpg
運命の糸に操られた男と女、京の闇に死の衣をまとう者たちがさまよう。浅田版新選組。
(「BOOK」データベースより)

輪違屋とは京・島原の芸妓置屋、糸里はその輪違屋にいる芸妓です。
島原の芸奴は花魁とは違って、小さな頃から
芸や島原のしきたりを厳しく教え込まれるのです。
それは禿(かむろ)から始まり、半夜(はんや)、鹿恋(かこい)、天神(てんじん)
そして太夫(たゆう=こったい)となっていくのです。
太夫は朝廷から正五位の位(大名と同格)を授けられています。

タイトルにもなっている糸里は天神。
時は文久3年8月、壬生浪士組は芹沢鴨と近藤勇との
派閥争いをしていた頃。糸里は土方を慕っていたが
糸里が禿の頃から芸事を教えてくれ姉のような
存在であった音羽太夫が芹沢に殺された。
「だぁれも恨むでない、恩だけを胸に刻め」と
糸里に遺した言葉。

糸里、そして芹沢鴨の愛人であり西陣の太物問屋菱屋の妾のお梅
新撰組の屯所となった八木家の妻、おまさ
菱屋の長女で八木家の分家に嫁いだお勝、平山五郎の恋人で
島原、桔梗屋の天神、吉栄
こうした女性たちが見た「新撰組」

芹沢鴨暗殺と芹沢鴨の新しい解釈。

これは面白いです。

はっきりいって今まで読んだものから
芹沢にいい印象は持ってませんでした。巨漢で乱暴者の酒乱
そんな感じ。

ところがこの話では芹沢が自分自身に
課していたもの、そして芹沢の寂しさが
そして近藤、土方、沖田といった百姓、足軽あがりに
対しての武士として語られています。
芹沢の思いを理解するものとして傍にいるのが
愛人のお梅なのですが、このお梅がカッコイイ。
京女に対しての江戸の莫連(ばくれん)女
すれっからしと周りから評されながらも
お飾りのような女房を追い出し
潰れそうな菱屋を切り盛りしていたのですが
もぅその生きっぷり、いいねぇ〜。

一番泣かされたのは吉栄ですが。
愛する男の子を身ごもりながらも
芹沢暗殺の際に平山五郎も一緒に殺す計画に
加担せねばならない吉栄がお腹の子供に語りかけるのです。

かんにんえ。
おかあちゃんは阿呆やさけ、むつかしいことは
何一つ考えられへんのや。
おかあちゃんは、おまえを殺す。おなごの夢を叶えるために、
おまえを殺す。鬼やろ。そやけど鬼にならな、夢は叶えられへん。
それにしてもきっつい話やなあ。
おまえばかりのうて、おとうちゃんまで殺せえて土方はんは言わはる。
かんにんえ。
おかあちゃん、おとろしうてかなん。もしお断りしたら
おかあちゃんは土方はんに殺されてしまうがな。

もうこれだけで泣ける。

この話、語り手が、がんがん変わるんですよ。
土方が語るときは、土方がいかに田舎から出て来て
どんな扱いを受けたか、いかに武士になろうかと
強く心に思ったかが語られ
その間は、すっかり土方に思い入れし
沖田が語れば、沖田に心中を思い
永倉が語れば、そのまっすぐな気質に正義を見いだし
芹沢が語ればその内側のせつなさに
きゅんっとやられちゃう。

本当に悪い人なんか誰一人いない。
浅田節全開な話です。
どうぞ読んでみてください。

まぁ泣けたといえばやっぱり「壬生義士伝」ですけどね
これもめっさおすすめです。

*ドラマ化、HDDに録画してまだ見てません。さてさてどんな出来やら?
糸里はよしとしてもできればお梅は違う人にやってほしかったなぁ〜と。。。
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