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プリズム:貫井徳郎
2008年 01月 13日 |
プリズム:貫井徳郎_a0104226_14173712.jpg
小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。
傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。
事故の線も考えられたが、状況は殺人を物語っていた。
ガラス切りを使って外された窓の鍵
睡眠薬が混入された箱詰めのチョコレート。
彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり
事件は容易に解決を迎えるかと思われたが…
『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んだ衝撃の問題作。
(「BOOK」データベースより)

プリズムとは入射光を屈折・反射・拡散するといった働きをし
ガラス製の多角形の形をしている三稜鏡であり
周囲の様子に応じて様々な様相を見せるものの
イメージとして与えられる言葉。

そう、まさしくこの小説はプリズムのごとく
一つの事件が様々な方向から見ることによって
色々な表情を見せていく。

先に言っておきます。
犯人が誰か、とすっきりさせることが好きならば
この本は読んではいけない。
読者も一緒に謎を楽しむ、じゃあ、犯人はいったい?と
解いていく、それくらいの気持ちで臨んでいただきたい本。
で、これがまたとてもよく、きれいに作られている。
感心してしまほど。
ミステリーってこんな可能性もあるんだ、と改めて
思い知らされた次第。

まずはその小学校教諭が担任するクラスの子供たち。
独自に推理を働かせて「犯人」を探していく。
親たちの噂を集めて、また怪しいと思う人たちに
直接話を聞きにいき。。。
やがて子供たちは一つの結論にたどり着く。
もしかしたら。。。

そして次の章。
また別の語り手が独自に犯人を突き止めようとし、そして。。。

ネタばれにならないように伝えるのが難しいのですが
怪しいと思われた人たちが、次の章では語り手となり
その語り手は、語り手で自分自身の中だけでも
彼女に何が起こったか、いったい誰が彼女を殺したのか
別に警察に突き出すつもりはなく、自分自身で納得したい、と
それぞれの理由で「納得いくところ」まで
独自の捜査を進めるわけです。

読み手も、当然、その内容に新たな発見とともに
「納得」をする。
ところが次の章でそれがひっくり返される。
だって「犯人」と限定された人間が「犯人」を次の章で
探していくわけなのだから。

最後、犯人を特定するのは読者であることを忘れずに
あなた自身の推理を働かせてどうぞ立ち向かってみては?
さらに別の章をあなた自身の中で組み立てることだって可能なくらい。
(正直、この本で一番最後に「犯人?」と疑われる人物、その動機は
やっぱり後味悪いんですけどね〜〜〜。しんどいつーか重い。)

もちろんプリズムの名の示す通り、色々な語り手が見てきた被害者の姿
人によって人はこんなにも違う見方をされている
当たり前のことなのだけれど
実はミステリーは特にそうなのだけれど物語って「キャラ」を
立てる為に人間の多角性は無視されることが多く
これまた力量のある作者でなければできない技。
この部分もぜひ見落としなくどうぞじっくり読み味わってください。


まぁ。。。読んでいくうちに、こんな人が犯人?!というびっくりを
求めるタイプには「消化不良!」と言われちゃうんだろうなぁ。
そーいう本じゃないこと、ぜひわかった上で読んで欲しいです。
ま、そーいうのもあたし、大好きですけどね。
色んな本があるということでこんな本もオススメ、ということで。
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