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カテゴリ: :桐野夏生( 12 )
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2009年 03月 18日 |
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自分は少女誘拐監禁事件の被害者だったという驚くべき手記を残して、作家が消えた。
黒く汚れた男の爪、饐えた臭い、含んだ水の鉄錆の味。性と暴力の気配が満ちる密室で、少女が夜毎に育てた毒の夢と男の欲望とが交錯する。誰にも明かされない真実をめぐって少女に注がれた隠微な視線、幾重にも重なり合った虚構と現実の姿を、独創的なリアリズムを駆使して描出した傑作長編。
柴田錬三郎賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)

桐野夏生はその人間描写、心理的な部分で
そこまで人は醜い、おどろどどろしい部分をベースとして
動けるのか、とやられてしまうことが多く
読後はどっと疲れるのですが
それらの作品に比べるとまだこの作品は
弱いかな、と。。。。思ってるとあとからボディブローのように
じわじわくる作品。
やっぱ桐野。なめちゃいけない。

少女の拉致監禁、犯人と暮らした日々。
当然、解放後、周囲の人の目は「自然と」
まだあんな幼い子なのに男の慰み者になったと見る。
「自然」に。
彼女は監禁生活のことを何も語らず大人になった。
そして手紙を残して失踪したとき
そのすべてが語られる。
犯人との異常な生活は、読む側の想像を遥かに裏切り
愕然とさせる。タイトルを見ただけで
「自然」に想像したことを恥じ入るくらいに。
(十分、異常といえば異常な世界なのだけれど)

作者は現実社会のそうした下世話なワイドショー的に
扱われる惨いニュース、そうした世間の目に対して
この作品を発表したのかなぁ。

さらに驚かされるのは少女の想像力。
ま、やおいっちゃーやおいだけどね(苦笑)

それにしても。。。痛いのはやっぱこの母親かなぁ。
一番病んでると思うのだけれど。

読めば読むほど「謎」ばかり残るとは皆さんのおっしゃる通り。
けれどそこに逃げ込むしかなかった少女の
心理はすんなり理解できてしまう。
なかなか一筋縄ではいかない作品。
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2008年 06月 15日 |
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皮膚の内側に潜むものは静かに激しく蠢いている。
魂の孤独を抉る待望の作品集。
閉じこめられた想い封じ込んだ願い叶えられない夢…
出口を塞がれた感情がいつしか狂気と幻に変わる。
(「BOOK」データベースより)

あれ?これってほんとに桐野作品?と一瞬思いましたが
そういえば、この人、こーいう日常に潜む、あるいは日常の
裏側に誰にでもあり得るような狂気、不気味さを
静かに描く、描ききる面もあったよな、と。
読後、なんとも言えない嫌悪感、気持ち悪さはないの。
そんなのあり得ないからこそ小説を通して体感できる
貴重さはそーいう桐野作品にありがちな空気はなく
ただじわっと普通の生活の裏側にあり得る恐さ。
かえってそこらへんの生半可なホラーより恐い日常。

「虫卵の配列」
この人ならわかってくれると話した自分の失恋話、そして聞かされたのは
彼女自身の劇団の脚本家への盲目的な愛。その本人の語る本人だけの
事実と周囲から映る彼女の姿への異様さ。

「羊歯の庭」
15年ぶりに再会した恋人との不倫。別れた理由を思い出せないまま
のめり込み家庭が崩れたときに受ける仕打ち。男の狡さと悲哀。

「ジェイソン」
自分が酒乱だったと初めて知った主人公。学生時代の友人達は
影で自分をジェイソンと呼んでいたが一切彼には知らされず。。。
それは彼らなりの報復だった。

「月下の楽園」
荒廃した庭の美しさを愛し、やっと見つけた理想の庭を持つ大家の裏に
建つ借家に済むことになった主人公の奇行と大家の奇行。

「ネオン」
暴走族のヘッドから暴走族に喧嘩だけでのし上がり場所を
広げた組、そこへ「仁義なき戦い」にかぶれた若者が弟子入りを志願。

「錆びる心」
10年前の浮気から夫の監視下、家政婦のようにこき使われた
主婦がその仕返しに家出を実行し「家政婦」として「本当に
必要とされる自分」を見つけるために働き始めたが。。。

耽美なグロテスクさだったり、乾いた生活からの欲だったり
ヤクザの世界の狡猾さと滑稽さをユーモア交えて描いたり
同じくユーモア色のオブラートをかけつつ「後で本人が勝手に
困ればいい」といった仕返しだったり
どの話もテイストもカラーも違うのにごった煮的な雑さがなく
不思議と一冊としての仕上がりが出来上がっている。
どの作品もぞわっとくる快感が味わえる秀逸な
短編としての「落ち」を存分に味わえる一冊。
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2008年 02月 12日 |
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張り詰めた東京での生活に疲れ、すべてを捨てて
上海に留学した有子。しかし、どうにも断ち切れぬ思いは
70年前、この地で生き、同じ思いを抱えた大伯父の幽霊を呼ぶ。
枯れた玉蘭の花とともに…。
交錯する二つの思いは時を越え、“過去”と“現在”を行き交う。
人は恋愛の果てに何を得るのか。
(「BOOK」データベースより)

桐野作品は正直言ってグロいものが多くてやたらと
「疲れる」のでいいかな、と思ってたのですが
まぁブックオフで100円だったし?と読んでみたら
意外にコレ、あたし好きかも。
現代と70年前の恋愛がそれぞれ違った形で進み
終わりを迎えて行く。
女性のあり方は時代によっても違いはあるけれど
根本的なところで対照的な女性、侑子と浪子。
まるで、散文詩のように、話はぽんぽんと変わるのですが
その変わり具合がいい感じの散漫さ。
「疲れる」と思っていた密度の濃さがちょうどよく薄まった感じ。

「すべてを言葉で表現しつくす」優等生の侑子の愛の求め方と
言葉で話し合うべきことも話さず、むしろ過去を語らず
身体の交わりだけで愛を確認する浪子。
はっきり言ってどちらも利己的。
けれど求めていることは互いに同じ、愛のかたち。
そしてそれぞれの対象となる男性たちの思い。
すれ違う思い。せつないなんて生温さではなく
そこに存在するのは裂くような痛み。
70年前も現代も。
大人の恋愛ものと言った趣向でしょうか。

ただ救いがないのは相変らず(苦笑)

中国へはもちろん行ったことありませんが鮮明に絵が浮かぶ
その描写も見事。
いきなり幽霊話?と思ったらちゃんと最後には美しくまとまってるし。
あ、でもどうやら文庫化の際に、最後の章を追加したようです。
この章があるのとないのでは読後感、まったく違うのでは?
ぜひとも文庫で読むことをおすすめします。
まぁ、かと言って、読後、すべてがクリアと思ったら大違い。
あやふやな、読者の中で広げてください的なベースはそのままです。

読んでいる間は、中国という異空間へ引込まれ漂い
読後、どんどんこの本の話の大きさが胸に広がる不思議な作品。
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2008年 01月 10日 |
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失踪したAV女優・一色リナの捜索依頼を
私立探偵・村野ミロに持ち込んだのは
フェミニズム系の出版社を経営する渡辺房江。
ミロの父善三と親しい多和田弁護士を通じてだった。
やがて明らかにされていくリナの暗い過去。
都会の闇にうごめく欲望と野望を乾いた感性で描く、女流ハードボイルドの長篇力作。
(「BOOK」データベースより)

探偵村野ミロシリーズ2作目。
父の後を継いで探偵として働いているミロ。
前作の倒錯的な世界もショッキングでしたが
今回はAV。ただそれが浮ついた寓話にならず
しっかりとしたハードボイルドな推理小説にきちんと成立しています。
レイプされた女優を救出すべく追っていたはずが
裏に隠された謎を追ううち追われる立場とない
挙げ句は被害者として存在したものがいつの間にか
加害者として存在し、周囲すべてが味方と敵と混在し
敵と思っていた相手に依存したりともぅ二転三転。
前作よりもずっと人物設定もしっかりしていき
読み応えある作品に。
1作目よりも好きかな。
トリック重視の人には勧めませんがだら〜っと読みはじめたら
いつのまにか引きずり込まれているかもしれませんよ。
まぁ都合よすぎない?とつっこみたくなる場面は諸処ありますが
それでも読ませる力はこの頃から相当のものだったんですね〜。
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2008年 01月 09日 |
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親友のノンフィクションライター宇佐川耀子が
一億円を持って消えた。大金を預けた成瀬時男は
暴力団上層部につながる暗い過去を持っている。
あらぬ疑いを受けた私(村野ミロ)は
成瀬と協力して解明に乗り出す。
二転三転する事件の真相は?
女流ハードボイルド作家誕生の’93年度江戸川乱歩賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)

やーっと探偵村野ミロシリーズの一番初めの物語を読みました。
「ダーク」から読み始めて逆行していったけれど
本作と2作目に関しては順番に読んだ方が絶対にいいね。

この頃はまだ精神的に参っていて探偵を引退し北海道へ
移住した父が住んでいた新宿歌舞伎町のマンションに
仕事もせず暮らしていたミロ。
そこへ舞い込んできた友人の失踪という事件。
女性を主人公としたハードボイルド風味なミステリー。
精神的にもろく頼りないミロが、様々な体験を通して
強く逞しくなって行く、「ダーク」を読んだからこそ
そこはまた違った意味で楽しめました。

倒錯趣味、死体愛好などのフェティッシュなアンダーグラウンドな
世界からドイツの社会情勢、ネオナチにまで
話は膨らむのにちっとも脱線した感がないのは
デビュー作ながらすごいと思います。
あー、でも描写がショッキングで途中吐き気が〜。
読むのならちょっと覚悟して読んでください(苦笑)
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2008年 01月 03日 |
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営業マンとしてジャカルタに赴任して二年。
博夫はミロから逃げようとし、しかしむしろ
深く填まり込んでいく自分を感じていた。
すべては高校二年のあの日
庭に薔薇が咲き乱れる家のベッドでともに
過ごした時から始まったのだ。
そこは彼女が義父と淫らなゲームに興じた場所。
濃密なミロの世界を描く短篇集。
(「BOOK」データベースより)

村野ミロシリーズの短編集。
んー、順番を遡って読んでいる(苦笑)
先日、読んだ「ダーク」の前の話。

離婚した夫のまだ結婚時代の夫目線の話の表題作「ローズガーデン」
探偵ミロとしてミロが主人公の他3作。

新宿がベースになっているせいかとてもアンダーグラウンド。
はっきり好みが別れる話ではないかと。
とてもエロティックでありながらもそれはどれもみな
悲しくて重くて澱んでいます。

歌舞伎町でホステスとして働く女性が借金地獄から
首つり自殺をし1週間、見つけられずにいたマンション。
ミロは管理人からその幽霊がでると聞かされ
管理会社に依頼をうけ調査を開始する。
そこには、幽霊の形を借りた幽霊よりもおぞましい
人間同士の憎悪が満ちていた「漂う魂」

自分を本当に愛しているのか?中国人ホステスに
本気で入れあげた男、宮下の依頼は彼女の本当の
気持ちを調べて欲しい、だった。ところが
その宮下が歌舞伎町で殺されていた。宮下が
最後にミロに伝えようとした言葉はなんなのか。
ミロは独自にそのホステスの周辺を探って行く「独りにしないで」

階段から落ちてきた男がぶつかってそのままホームから
転落し即死した女性は、2500万のSMクラブを買い取った上
さらに2000万の貯金も残していた。
普通に英会話学校へ通っていると信じていた田舎の父は
彼女がSMの女王だった証拠となるものをすべて処分して欲しいと
ミロに依頼をしてきた「愛のトンネル」

表題作の「ローズガーデン」はそんなミロの高校時代の
夫である博夫との出会いの話。
ミロシリーズの中の、ミロの若い頃はこんな感じという
閑話休題にも感じるストーリー。
高校時代は「年上好み」と言われた博夫がミロと出会い
同級生のミロのいやらしさ、クールさ、すべてにやられてしまい
それをそのまま引きずり、大人になっても高校生のミロの姿を
無意識に追い続け「ロリコン野郎」と呼ばれること。
自嘲しながらもそこから抜け出せない博夫の姿が痛々しい作品。

ちょっとミロシリーズは他にも2作品ほどあるので
ちょっとマンションの住人たちも気になるところなので
ぜひとも読んでみたいです。

あ。余談ですが
「独りにしないで」に出てきたレズビアンバーの店長
かなり気になったのですが(笑)彼女はもぅ出てこないよねぇ〜。
これはもぅ想像上の中でえらいヒットですよ(笑)
頭のいい中性的な人間という設定、いいなぁ。
これが女ではなく男だったらもぅ腐女子にはたまりませんね〜←ヲイ
(アタマの中では昔好きだったマンガの 「EX-MEN聞いて」 (高口里純)の
マーメイドでしたよ)
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2007年 11月 08日 |
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上巻:
「私の中の何かが死んだ」出所を心待ちにしていた男が四年前に獄中自殺していた。何も知らされなかった村野ミロは探偵を辞め、事実を秘匿していた義父を殺しにいく。隣人のホモセクシャルの親友。義父の盲目の内妻。幼い頃から知っている老ヤクザ。周囲に災厄をまき散らすミロを誰もが命懸けで追い始めた。
(「BOOK」データベースより)
「40歳になったら死のうと思っている」 成瀬の獄中自殺を知ったミロは狂乱し、今まで生きてきた世界と訣別、周囲の人間を破滅させていく。圧倒的な疾走感で人間のスイッチが切り替わる瞬間を描いた傑作


下巻:
「朴美愛」偽造パスポートを手に入れたミロは海峡を越え韓国に渡る。偽ブランド品を手がける現地の男と即座に愛人契約を結ぶが、彼は自分の身代わりとなって撃たれ下半身の自由を失ってしまう。深い愛情で結びついた二人は復讐を決意した。覚醒剤、レイプ、殺人。善悪を超えて世界を圧倒する壮絶な魂の遍歴。
(「BOOK」データベースより)
出版社からのコメント
「罰なんか絶対に受けない」ミロの神話再び周囲のあらゆる人間たちを滅ぼしたミロは、新しい世界=韓国へと旅立った。そこで出会った心に傷を抱える男。新しい恋人との逃避行が始まった。誕生と破滅の神話


いやぁ。。。。すごい。一気読み。
だいたいここ最近読んだ桐野作品は読後感の後味が悪く
読んでいる最中ですら「気持ち悪い」といった感じで
なのに、読まなくちゃ、と思わせるチカラだけはある、と言った
印象だったのでまぁ気持ちがある程度元気なときに、と
手に取ったのですが
この本はすごい。確かに気持ちの悪い本ではあるけれどね。

女性の心理状態の奥深く。人間の心の醜さをさらけ出され
それは盲目であろうと、ホモであろうと容赦なく。
なんだろう、この疾走感。

まず手に取った一番の理由は主人公村野ミロが今38歳だということ。
そして40歳になったら死のうと思っているという書き出し。
自分がちょうどその年なので、お?と思って手に取ったものの。。。
こんな体験する38歳そうそういない(苦笑)

あたしはかなりこの本、桐野作品では好き。OUTと同じかそれ以上。
別に狙った訳ではないのにどんどん周りを
最悪な状態へ道連れ同然、巻き込んで行くミロのパワーと
選択肢はかなり面白い。

ところでこれ村野ミロシリーズだそうですが。
あたし他のまだ読んでません。こっちから読むとすっごい違和感ありそう(苦笑)
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2006年 06月 05日 |
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 あ〜〜〜↓またやられちゃったよ。
表紙のかわいさに騙された。「魂萌え!」と
同じパターンにひっかかりました。
表紙で判断しちゃあいけません。でもよく見ると
コレ、毒きのこかな?なら、ありですね。

全編「悪意」に満ち満ちてます。
女として、人間として、ここまで
女の、人間の醜い部分、グロテスクさを
晒す勇気。これはある意味恐怖小説。
(伊坂のグロさとはそこが違うのね。)
人間の心に潜む残酷さ、ここまで晒せるのは
もぅこの人しかいないのでは?とオモウほど。

短編集ですがどれもみな長編にできるのではと
思えるほどの濃い内容。

ネタバレしますよ。

周囲からも嫌われ疎まわれ、臭いと言われ
醜く鈍くさく、キスもセックスも未経験な24歳の
真希という女がいるわけですよ。
当然、おどおどしてる「キモチワルイ変な女」
過去、ただ一度だけ痴漢にされた行為を
思い出しては一人熱くなってるような女。
でもその真希がいきなり思い出すわけ。
自分は、あの「グリコ・森永事件」の中心人物だったと。
突然、自分は主役だと自信を持つのね。
その自信の出た姿も、全然明るくもなければ
爽やかでもない、醜い独りよがりに近い形。
周囲はまた余計に気持ち悪がるくらい。
でもそれはもっと深い記憶を呼び覚まされまた
もとの自信のない自分に戻る、けれど
そこに残ったのは、おどろおどろしい悪意。
小さな幼い存在に向けられた悪意。
これはもぅすごくコワイ話。

これが短編。濃いでしょう。

他にも何年も続いた不倫、相手は家庭があり
自分ばかりが損してるという呪縛に囚われ
壊れていく42歳のフリーライターの女性の
惨めに歪んだ悪意。
相手の家庭にばらしても、相手の家庭は
壊れず、自分だけがすべてから攻撃され
自分だけが壊れていく。けれど
最後の最後まで、他に向けられた悪意の塊。

出版社に勤める48歳の女二人と34歳の女の
海外旅行。酒も入り告白ごっこの内容は
性体験。初体験の相手が父親だったり
自分がレズだと気づいたり性奴隷として売られたりと
凄まじい告白のあとに誘いの言葉は
奴隷として売ってみないか、という悪意。

表題作の「アンボス・ムンドス」は小学校5年生の
女子達の大人に、クラスの一番の嫌われ者であった
相手に対する悪意。これもコワイ。

体力ない時に読むと負けます。
つーか読後のこのなんとも言えない不快感。
うーん。。。これがクセになって桐野作品に
はまるのかなぁ?
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2006年 05月 20日 |
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 まったく予備知識ナシで表紙のキレイさ
かわいらしさで手にとりました。
いやぁ、騙されたね(笑)
恋愛ものかと思ったよ。甘かった。さすが桐野作品。
フツウのおばさんを書かせたら天下一品。
すごいです。あまりのリアルさに気持ちが暗く沈みます(笑)
桐野夏生作品は「OUT」「グロテスク」
「アイムソーリー、ママ」などを今までに
読みましたがどれもやっぱ中年女の心理がずば抜けて
ストレートに突いてると思う。

今回は、いきなり長年連れ添った夫の死を迎えた
初老とも言える年齢を迎えた女性の話。
一生懸命、切りつめて友達に誘われる海外旅行も断り
自分のことよりも家族のことを一番に置き
銀行に勤めたにもかかわらず音楽の仕事がしたいと
アメリカにいったっきり一言も連絡をよこさない長男と
フリーターのまま30代になり気は弱いけれど人のよい
年下の男性と同棲をだらだらと続ける長女。
子供達は子供達、と夫婦で、家も退職金でローンを
払い終え、少々の貯蓄と年金で夫婦でこのまま
ゆっくり暮らしていけばいい、と安穏に考えていた矢先。

突然、露わになる亡き夫の愛人関係。
自分の知らない夫の「明るい」姿。
長男はまるで他人のように、己の保身ばかりに
執着して財産を、家を狙っているようにしか見えなくなり
長女は長女で兄に対抗意識しか持たない。
友人達もみな自分の「寂しさ」「戸惑い」をわからない。

気のいい世間知らずの奥さんだった自分に嫌気がさし
「今までにしたことのない行動を取ろう」と決めた
彼女が出逢った様々な人たち。
自分よりもずっとずっと大変な人たち
それぞれの持つ家庭観、世間観、ちょっとずつ一歩ずつ
進んでいくおばさんの姿が
それはそれはもどかしく話は進んでいきます。

世間一般のおばさんというのはこーいう思考回路のもと
動いているのねと小説に教えられた気分です(苦笑)
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2006年 01月 30日 |
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 タイトルそのままとてもグロテスクなお話。
同じく桐野の「アイムソーリー、ママ」を読んだときも
グロテスクな話と思ったけれどそれ以上でした。
「恐ろしいほどの美貌の持ち主」であるユリコと
大企業のOLの和恵、二人は娼婦であり
娼婦として外国人に殺害された。その二人がどうして
死に至ったかを姉であり、同級生だった「わたし」の
語りとユリコの手記、和恵の日記そして犯人の張の
上申書から綴られていく。そこに見えるのはおぞましい
グロテスクな女達の在り方。
その姿は怪物、モンスターでしかなく。

特に、美しい妹を持って「初めから努力など意味を
成さない」と醒めた目で語る歪んだコンプレックスの
塊でしかない「わたし」の話から始まるので
何が事実かわからなくなり本文中の誰も信じられなくなる中
努力すれば必ず報われると努力し続けて壊れていく
和恵の日記は壮絶そのもの。

前に「嫌われ松子の一生」を読んで
自分では決してなり得ない他の人の人生を
本を通して歩むことができるけれど松子の人生は
ちょっとなぁ〜なんて思ったものですが
この本の凄まじさはそれ以上。
誰かに認められることだけを求めて世間からの
評価だけに気を取られ、人を心から信じることが
できなかった人たち。
でもこの本は実際にあった「東電OL殺人事件」を
ベースにかかれたもの。もちろんフィクションですが。
それでもベースとなる事実があったことが、また
読後感をより一層重くしていると思います。

本を読んでいると知らず知らずのうちにその登場人物に
感情移入し肯定的に見てしまいがちですが
今回だけはそれはなかったなぁ〜と思いながら
タバコの自販機でおつりを落としてしまい
落ちた10円玉を拾おうとかがんだ瞬間、
自分の中に娼婦の和恵が降りてきたようで
ぎょっとしたということも加えておきます。
コワイ本だなぁ〜(苦笑)
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