:books:
achabooks.exblog.jp
  Top
カテゴリ:な:梨木香歩( 6 )
|
2007年 12月 12日 |
a0104226_1984591.jpg
昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。
高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって
絶好の遊び場だ。
その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって
久しい少女、照美は、ある出来事がきっかけとなって
洋館の秘密の「裏庭」へと入りこみ、声を聞いた—教えよう、君に、と。少女の孤独な魂は、こうして冒険の旅に出た。
少女自身に出会う旅に。
(「BOOK」データベースより)

あー、びっくりした。
これ、ファンタジー小説なのね。
日本に良質のファンタジーってあたしは知らないけれど
(もともとファンタジーは苦手分野)
これはイギリス人の家族が住んでいた庭から広がり
かなり、がっつり本格的なファンタジー、異世界へと誘います。

双子の弟を亡くしてからまるで家のことから
離れるように自営のレストランの勤務に
忙しく働く両親、そして置いて行かれた子供、照美。
その寂しさの穴を埋めてくれていたのは
友達のおじいちゃん。
きちんと照美と向き合い、照美の言葉を聞き
照美に話しかけてくれる。
何かをしながら、ではなく。
そのおじいちゃんが入院したという。危ない状態だという。
照美は、おじいちゃんから聞いたバーンズ家の庭に
存在する、隠れた裏庭へと足を踏み入れる。

そこで出てくるのが、もぅ想像するのも難しい生き物たちばかり。
想像力貧困なのかしら、と自分に自信が持てなくなるほど
それはそれは様々な出来事が。

話は、照美が旅する世界と、お母さん=さっちゃんの子供の頃の話
そして今の世界が巧みに交差します。
本って、ただでさえも読み始めてのめり込むと
現実に戻ってくるのが大変なのに、本の中でそれをやられる感じ。
もぅ大変(苦笑)
庭と過去と現在と、そして現実の世界を読んでいる間中常に
ふわふわと行き来してるような錯覚に。

ファンタジー嫌いのあたしでも読めるほど素敵な話。
でも一番始めに読んだ梨木作品がこれだったら
ここまで梨木作品にはまらなかったかも?
あぁ、こーいう本を書く人ね、と決めてかかってしまったかもしれない。
それくらいインパクトのある作品です。

ファンタジーとして良質だけれど
でもそれ以上に、梨木作品ならでは、の味もここそこに。
とてもとても大事なことが書かれている!と感じる部分がそこここに。
その一つとしての「傷」

「無理に治そうなんてしないほうがいい。薬付けて、表面だけは
きれいに見えても、中のダメージにはかえって悪いわ」
「充分に傷ついている時間をとったらいいわ。薬や鎧で無理に
ごまかそうなんてしないほうがいい」
「傷ついたらしょうがない、傷ついた自分をごまかさずに見つめて
素直にまいっていればいい」

「生体っていうのは自然に立ち上がるもんよ。傷で多少姿形が
変わったとしても」


個人的に、お父さんの子供の頃の話が好きです。
わ、びっくり、って感じ。
[PR]
2007年 11月 15日 |
 a0104226_23411593.jpg
町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。
異国の若者たちが囲む食卓での語らい。
虚をつく鸚鵡の叫び。古代への夢と憧れ。
羅馬硝子を掘り当てた高ぶり。
守り神同士の勢力争い—スタンブールでの村田の日々は
懐かしくも甘美な青春の光であった。
共に過ごした友の、国と国とが戦いを始める、その時までは…。
百年前の日本人留学生村田君の土耳古滞在記
(「BOOK」データベースより)

宗教とは。国とは。人間への深いまなざしが捉えた青春小説の新境地。
1899年、トルコ。遺跡発掘の留学生村田君の下宿には
英国の女主人、ギリシャ、ドイツの若者がいて
熱い交流があった。宗教、民族、国家の根っこから人間を見つめ
その喜びと苦難を描いた新スタイルの青春小説。

これは「家守綺譚 」に出てくる主人公綿貫の友人で
考古学者の村田くんのお話。
素晴らしい。もぅ読み終わるのがもったいない一冊。
エフェンディとは学問を修めた人に対する敬称で
「先生」くらいの意。

日々の暮らし。
そこに混ざる様々な人の生き方、考え方の違い。
受け入れること。
否定しないこと。
もちろん自分とは相容れないことはあるけれど
それもそのまますべて、そうなのだな、と受け入れる。
けれど己は、芯はぶれない。
皆が皆そのスタンスでいれば。

淡々と綴られる100年前の「いきいきとした」生活と
奥深く流れる静けさと暖かさ。
そしてラスト。
号泣でした。
もぅ涙が止まらなかった。


そして同じ下宿仲間ギリシャ人のディミィトリスの言葉
「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁な事は一つもない…」

何度でも読み返したい、或いは時々、手に取り開いたところから
自由に読み込みたい。きっとその時間あたしは何度でも
100年前のトルコに心馳せる。
そしてきっとまた最後、同じように泣くと思う。

国とはなんなんだろう?と。
[PR]
2007年 03月 07日 |
a0104226_19484992.jpg
 祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは
共同生活を始めた。糸を染め、機を織り
庭に生い茂る草が食卓にのる。
静かな、けれどたしかな実感に満ちて
重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。
だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている
四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。
心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして—。
生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。
(「BOOK」データベースより)

あたしは「りかさん」を先に読んでいたので
まぁなんとか通じましたが、こちらを先に読んでしまうと
主人公的な立場である「容子」の内面まで読み切れず
ぼんやりとした印象になってしまうかも。
まあ「りかさん」の後に読んでもずっと「りかさん」のが
話のテンポも詰め込み具合もいい感じで。。。
こちらはちょっと読むのに時間がかかりましたね。
話のテーマはとても奥深いのに奥深くまで連れ込む
力の弱さは否めないかも。
ただ染色や織物に興味のある人にはオモシロク読める
うんちくが詰まっています。
同じ「感覚」を持った4人だからこそできる
昔ながらの生活の上に成り立つ「共同生活」
。。。あたしには絶対にできないな。
よく本を読んでいるとまるで自分もその世界に
いるかのような錯覚や、そこに行きたい思いに
囚われることがありますが、この本の世界は
ちょっと拒みたい(苦笑)
同居人たちはあんなにも淡々として個を
守っているのに何故か鬱陶しい。それをさらっと
感じさせるのは作者のもつ文体の透明度のおかげ。
そして、作者の伝える様々なことを
いつか心静かなときにじっくりと読み返したい一冊。
まだまだあたしは心が「幼い」のだと思う。

「私はいつか、人は何かを探すために
生きるんだといいましたね。でも、本当は
そうじゃなかった。人はきっと
日常を生き抜くために生まれるのです。
そしてそのことを伝えるために」
[PR]
2007年 01月 14日 |
a0104226_1345942.jpg
 ようこは自分の部屋に戻り、箱を見た。
お人形のおいてあった下には、着替えが幾組か
たたんであり、さらにその下のほうにもう一つ
箱のようなものが入っている。開けると
和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか出てきた。
「説明書」と書かれた封筒も出てきた。
中には便せんに、おばあちゃんの字で
つぎのようなことが書いてあった。
『ようこちゃん、りかは縁あって
ようこちゃんにもらわれることになりました。
りかは、元の持ち主の私がいうのもなんですが
とてもいいお人形です。それはりかの今までの
持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。
ようこちゃんにも、りかを幸せにしてあげる
責任があります。』…人形を幸せにする?
…どういうことだろう、ってようこは思った。
どういうふうに?梨木香歩・最新ファンタジー。
(「BOOK」データベースより)

ようこは「リカちゃん人形」が欲しかったのだけれど
おばあちゃんから送られてきたのは黒髪の市松人形の
「りかさん」だった。ショックと憤りを覚えたものの
りかさんはようこに話しかけてきて色々な古い
人形達のことばや持ち主に起こったことを
見せてくれていくのです。

ただのファンタジーとは違って夢見るお人形との
世界なんて甘いものではなくそこにはちょっと
恐い思いがうずまいていたり、せつない過去の
歴史が絡んできたり、魂の世界と向かい合った世界。
女の子と人形はとても深い繋がりを持っていて
「人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる
気持ちをとんとん整理してあげること」という。
気持ちは激しすぎると濁っていくから
いい人形は吸い取り紙のように感情の濁りの
部分だけを吸い取っていく、と。
そして、いやな経験ばかりした修練を積んでない
人形は、持ち主の生気まで吸い取りすぎたり
濁りの部分だけ残して根性悪にしてしまう、と。

小さい頃に人形遊びをして濁りを吸い取って
もらわなかった女性が「あく」が強いというのも
妙に納得。コドモの人形遊びにはコドモの満たされない
願望や大きすぎる夢がたくさん詰まってる。
そうして遊ばれることで吸い取っていく。。。あぁなんか
妙に納得してしまいました。

おばあちゃんとりかさんはようこのよき導き役。
人形の過去とそして「染め物」通して大切なことを
ようこに教えていくのです。

「おまえは、ようこ、済んだ差別をして
ものごとに区別をつけて行かなくてはならないよ」と
おばあちゃんは言うのです。
「簡単さ。まず、自分の濁りを押しつけない。それから
どんな「差」や違いでも、なんて、かわいい、ってまず
思うのさ」

こんな教えを受けたかったと思う反面、今からでも
教えを受けてよかった、と、そのおばあちゃんやりかさんの
指し示す様々な教えを深く胸で何度も反芻したくなる一冊です。

短編としてようこがオトナになってからの話も収録。
梨木作品の「からくりからくさ」もようこが大人になって
からの作品らしいのでぜひ読みたいと思います。
[PR]
2006年 12月 30日 |
a0104226_141942.jpg
 これは、つい百年前の物語。庭・池・電燈つき二階屋と
文明の進歩とやらに棹さしかねてる「私」と
狐狸竹の花仔竜小鬼桜鬼人魚等等
四季折々の天地自然の「気」たちとの、のびやかな交歓の記録。

素晴らしい。
読み終わるのがもったいない!
ずっとずっとこの世界でこの言葉、文章の中で
戯れていたいと思った1冊。

友人だった高堂が湖でボートをこいでいる最中に
行方不明になりそのまま消息をたった。
綿貫征四郎は卒業後、物書きを生業としたが
稼ぎも少なく住むところにも困っていたところ
高堂の父が、年老いて嫁に行った娘の近くで
隠居するということで高堂の家の守をすることに。
和風の庭は手入れをしないので
シュロ、クスノキ、キンモクセイ、サツキに
サザンカタイサンボク、槇、榊、芝、杉
どれも伸び放題、ちょっとした野性味を帯びている。
その庭にて征四郎が出逢う様々な「気」のものたち。

サルスベリに思いを寄せられたり
カッパが池にあらわれたりもする。
小鬼がいたり、狸に化かされたり。。。はたまた
行方不明になった高堂が家の掛け軸から
あらわれたり、高堂の薦めで飼い始めた犬の
ゴローは「名仲裁役」としてあちこちの
生き物から呼ばれたりする。

前作の「西の魔女が死んだ」が西洋の田舎の
よき時代を感じさせる本としたなら
こちらは日本の昔のよき時代といった趣。

描かれる世界も魅力的だけれど
日本語の美しさもとても心地よい。
手元に置いて年に一度は読み返したいとまで
思ったほど好きな世界です。

登場する植物をすべて集めたサイトさんも
見ながら読むとまた一興。
[PR]
2006年 11月 17日 |
a0104226_0361181.jpg
 中学に進んでまもなく、どうしても学校へ
足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと
移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。
西の魔女ことママのママ、つまり大好きな
おばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを
受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、
何でも自分で決める、ということだった。
喜びも希望も、もちろん幸せも…。
その後のまいの物語「渡りの一日」併録。
(「BOOK」データベースより)

学校で疎外感を感じて登校拒否、まるで
今の時代にぴったりな設定。
そしてその理由を両親も祖母も問い詰めたりせず
彼女がそこまで言うのならそうなんだろうと
受け止める暖かさ、強さ。
そして、持病の喘息の為、と預けられた祖母の
家での様々な昔ながらの生活スタイル。

これがまたとても具体的に描かれ
(野いちごのジャムを作ること、シーツを
足で踏んで洗ってラベンダーの上に広げて
乾かすことなどなどなど)様々なシーンで
英国風な素敵な習慣にほほぅと感心。

何より素晴らしいのは祖母の孫を思う気持ち。
甘やかさない優しさ。
最後には、突拍子もない出来事に思わず涙。

読んで良かったと心から思える本。
あっと言う間に読み終わるのでぜひ読んで欲しい。
悩んでいるコドモから大人まですべての人に。
とても素敵な一冊。読後感に広がる感情に
もっともっと読みたいと思わせるほど。
[PR]
PageTop
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Starwort Skin by Sun&Moon