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カテゴリ: :浅田次郎( 13 )
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2008年 11月 23日 |
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バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男城所安男。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるというサン・マルコ病院めざし、奇跡を信じて百マイルをひたすらに駆ける—親子の切ない情愛、男女の哀しい恋模様を描く、感動の物語。
(「BOOK」データベースより)

浅田作品をある程度の数をこなすと
なんとなく泣かせのパターンが見えてきてしまって
あぁ、こうくるなってのがわかるんです。
それでも
泣いてしまう、泣かせる本。
なぜならそこにはとっても大事なことが書かれているから。
もちろんこれが初めて読む浅田作品なら号泣間違いなしでは。

若くして夫を亡くし6畳一間のアパートから
4人の子供をエリートへと育て上げた母。
末っ子の自分も社長におさまり
景気のいいときにはもちろん母を顧みることはなかった。
けれど、母はそれでいいのだ、と。
自分を忘れてくれ、と。辛かった頃の記憶とともに。
そんな無償の愛に始まり
落ちぶれた主人公の安男に対して
なんの見返りも求めず、2年間も面倒をみて
「みーんなよくなってあたしのもとを離れて行くのよ」と
恨みなんて微塵もなく語るマリの無償の愛。
内科医として、それこそ一睡もしなかったであろうほど
最善の治療を施し100マイルに耐える心臓を作った医者の藤本
暑い中、安男の話をきき、クーラーを止めさせて食事をした
ダンプの運転手たち、そしてマルコ病院の曽我医師、歯科医のひげ長他
看護士たち。。。
そこには数えきれないほどの無償の愛が存在し
そのひとつひとつに素直に感動。

作中に歌が効果的に使われているものとして
伊坂幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」だったり
東野圭吾の「手紙」だったりと色々ありますが
これもまたピーター・ポール&マリーの「500マイル離れて」が
とても効果的に使われていて頭の中をまわりますよ。
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2008年 07月 11日 |
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帝国陸軍がマッカーサーより奪い、終戦直前に
隠したという時価200兆円の財宝。
老人が遺(のこ)した手帳に隠された驚くべき真実が
50年たった今、明らかにされようとしている。
財宝に関わり生きて死んでいった人々の姿に涙する感動の力作。
ベストセラー『蒼穹の昴』の原点、幻の近代史ミステリー待望の文庫化。
(出版社/著者からの内容紹介より)

この本の単行本化のときには「消えたマッカーサーの財宝」と
副題がついてるように、過去と現代と視点を
行き来させながら戦争の悲惨さ、悲しさ、ばからしさも
浮き彫りにしていく。

作者のあとがきを読むとちょうど「きんぴか」や「プリズンホテル」を
発表し、ユーモアピカレスク小説作家、極道作家としての
レッテルを貼られ軌道修正をはかるべく書き上げたとあり
この一冊から、この先の「地下鉄(メトロ)に乗って」や
「蒼穹の昴」といった「軌道」も加わった分岐点的作品。
たしかに、この作品の中ではまだ
「きんぴか」にあるようなユーモアの匂いもちらり
残ってしまってはいるけれどそれはもぅ浅田作品の味と
なってるような気が。
「蒼穹の昴」ですら、くすりと笑わせる箇所があるように。
ただ絶対的に軌道が違う、匂いが違う、そいういう意味で
この「軌道修正」いや「あらたな軌道」は成功していると思うし
あたしはこの、新たな軌道の方が好きです。

「壬生義士伝」でも感じさせた、事実ではないけれど
本当はこぅだったのかもしれないと思わせるこの作者の力量
やっぱりすごいと思います。
作者自身ではこの本は「若書き」と色々と辛辣な
評価を下してはいるけれどあえてそのままという部分を
かなり買いたい。

財宝の行方を追うミステリーとしても読めますが
やっぱりこの本の醍醐味は人間ドラマとしてではないかと。
終戦直後の少女達の話はもぅ涙ぼろぼろでした。
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2008年 01月 07日 |
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婿入り先から追い出され、職を失い、すがった相手は
神は神でも人に仇なす厄病神。時は幕末、動乱の世に
貧乏旗本・彦四郎の選んだ真実の生きる道とは。
(「BOOK」データベースより)

なかなか面白おかしく読める時代小説ってことで
時代小説が苦手な人にも入りやすいのでは。
深川元町の十五番御徒歩組の次男坊・別所彦四郎は
逆玉よろしく婿入りしたものの種馬よろしく跡継ぎが
出来た後、やっかい払い、実家に戻ったものの
そこは次男坊、兄夫婦に養ってもらう身は夜鳴きそばの
代金すら困るほど。せめて惚れた妻とかわいい我が子と
一緒に暮らしたい、と願った祠は三巡稲荷。
なんとそれは、ありがたくない神様が3人巡ってくるものだったから
さぁ大変。
羽振りのいい商人の身なりをした貧乏神に祟られ
相撲取りの風体をした疫病神に、かわいい童にしか見えない死神。

コミカルに幕末の侍の心を描きつつほろりともさせる。
じっくり読んでがっつり泣くのなら絶対に壬生義士伝を勧めるけれど
かるーく読むのならこっちでしょう。
映画化もされてるので、ちょっとこれなら見てもいいかも。
とても「絵」が浮かびやすい文章運びで、一日で読めちゃいました。
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2007年 10月 27日 |
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極道小説で売れっ子になった作家・木戸孝之介は驚いた。
たった一人の身内で、ヤクザの大親分でもある
叔父の仲蔵が温泉リゾートホテルのオーナーになったというのだ。
招待されたそのホテルはなんと任侠団体専用。
人はそれを「プリズンホテル」と呼ぶ—。
熱血ホテルマン、天才シェフ、心中志願の一家…
不思議な宿につどう奇妙な人々がくりひろげる、
笑いと涙のスペシャル・ツアーへようこそ。
(「BOOK」データベースより)

出版社/著者からの内容紹介をみると
「任侠団体専用(?)の不思議なホテルに集まる人々の
笑いと涙の傑作コメディ。泣けます。笑えます。癒されます。
浅田次郎の初期を代表する大傑作シリーズ堂々の文庫化。」と
ありまして。。。
さらに、作者本人も自信作な様子。

うーん?
ちょっとドタバタ過ぎ感が。
任侠ものといってももちろん浅田作品ですから
固くはなく、にやっとかほろっとさせる系統なのは
確かなのですが。。。
同じ浅田任侠ものならあたしはずっと「天切り松」シリーズのが
好きだなぁ〜〜〜。
まぁストーリーとして、キャラ設定のおもしろさとして、ナンセンスな
ギャグとして、というのは十分に理解できるのですが
生理的に、女性を愛情で殴る男というのがダメなのではないかと。
そこはこの本の中では、目くじらたてるトコじゃあなく
それこそ野暮ってのはぁアタマでわかっていても。。。ねぇ。

なのでそちらばかりに気が行ってしまって
せっかくのカッコイイ任侠話にこぅ、浸りきれないというか。

でもやっぱり破天荒すぎ(苦笑)

浅田ファンの間ではめっさ評価の高い作品なんですけどね〜。
設定は十分おもしろいし、このヤクザの大親分、仲蔵はほーんと
いいキャラなんだけどなぁ。
任侠団体専用ホテルなんておもしろすぎなのに。
んー、残念。
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2007年 09月 21日 |
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運命の糸に操られた男と女、京の闇に死の衣をまとう者たちがさまよう。浅田版新選組。
(「BOOK」データベースより)

輪違屋とは京・島原の芸妓置屋、糸里はその輪違屋にいる芸妓です。
島原の芸奴は花魁とは違って、小さな頃から
芸や島原のしきたりを厳しく教え込まれるのです。
それは禿(かむろ)から始まり、半夜(はんや)、鹿恋(かこい)、天神(てんじん)
そして太夫(たゆう=こったい)となっていくのです。
太夫は朝廷から正五位の位(大名と同格)を授けられています。

タイトルにもなっている糸里は天神。
時は文久3年8月、壬生浪士組は芹沢鴨と近藤勇との
派閥争いをしていた頃。糸里は土方を慕っていたが
糸里が禿の頃から芸事を教えてくれ姉のような
存在であった音羽太夫が芹沢に殺された。
「だぁれも恨むでない、恩だけを胸に刻め」と
糸里に遺した言葉。

糸里、そして芹沢鴨の愛人であり西陣の太物問屋菱屋の妾のお梅
新撰組の屯所となった八木家の妻、おまさ
菱屋の長女で八木家の分家に嫁いだお勝、平山五郎の恋人で
島原、桔梗屋の天神、吉栄
こうした女性たちが見た「新撰組」

芹沢鴨暗殺と芹沢鴨の新しい解釈。

これは面白いです。

はっきりいって今まで読んだものから
芹沢にいい印象は持ってませんでした。巨漢で乱暴者の酒乱
そんな感じ。

ところがこの話では芹沢が自分自身に
課していたもの、そして芹沢の寂しさが
そして近藤、土方、沖田といった百姓、足軽あがりに
対しての武士として語られています。
芹沢の思いを理解するものとして傍にいるのが
愛人のお梅なのですが、このお梅がカッコイイ。
京女に対しての江戸の莫連(ばくれん)女
すれっからしと周りから評されながらも
お飾りのような女房を追い出し
潰れそうな菱屋を切り盛りしていたのですが
もぅその生きっぷり、いいねぇ〜。

一番泣かされたのは吉栄ですが。
愛する男の子を身ごもりながらも
芹沢暗殺の際に平山五郎も一緒に殺す計画に
加担せねばならない吉栄がお腹の子供に語りかけるのです。

かんにんえ。
おかあちゃんは阿呆やさけ、むつかしいことは
何一つ考えられへんのや。
おかあちゃんは、おまえを殺す。おなごの夢を叶えるために、
おまえを殺す。鬼やろ。そやけど鬼にならな、夢は叶えられへん。
それにしてもきっつい話やなあ。
おまえばかりのうて、おとうちゃんまで殺せえて土方はんは言わはる。
かんにんえ。
おかあちゃん、おとろしうてかなん。もしお断りしたら
おかあちゃんは土方はんに殺されてしまうがな。

もうこれだけで泣ける。

この話、語り手が、がんがん変わるんですよ。
土方が語るときは、土方がいかに田舎から出て来て
どんな扱いを受けたか、いかに武士になろうかと
強く心に思ったかが語られ
その間は、すっかり土方に思い入れし
沖田が語れば、沖田に心中を思い
永倉が語れば、そのまっすぐな気質に正義を見いだし
芹沢が語ればその内側のせつなさに
きゅんっとやられちゃう。

本当に悪い人なんか誰一人いない。
浅田節全開な話です。
どうぞ読んでみてください。

まぁ泣けたといえばやっぱり「壬生義士伝」ですけどね
これもめっさおすすめです。

*ドラマ化、HDDに録画してまだ見てません。さてさてどんな出来やら?
糸里はよしとしてもできればお梅は違う人にやってほしかったなぁ〜と。。。
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2007年 09月 10日 |
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阪口健太、通称ピスケン。敵対する組の親分を殺り
13年刑務所で過ごす。
大河原勲、通称軍曹。湾岸派兵に断固反対し
単身クーデターを起こした挙句、自殺未遂。
広橋秀彦、通称ヒデさん。収賄事件の罪を被り
大物議員に捨てられた元政治家秘書。
あまりに個性的で価値観もバラバラな3人が、何の因果か徒党を組んで彼らを欺いた巨悪に挑む!悪漢小説の金字塔。
(「BOOK」データベースより)

まるで映画のようなと表現する本はいままで結構あるけれど
これは。。。なんていうんだろう?(苦笑)
コミックス的?んー、でもコミックスならここまで情や義を
感じるのはそうそうないかな?文字ならではの「笑い」
(でもコミックス化もされてるようで。。。絵が趣味ではないので
読みませんが)
残念なことにちょっとこーいう気分ではなかったので
笑いきれなかったかなぁ。
確かに浅田作品にあるピカレスクもの、やくざの世界や
仁義を描いた小説は好きだけれど
ちょっと。。。言葉がやたらとかぶったり予定調和が多過ぎで
笑えないお笑いを見てる気分。
あー、このノリな気分のときに読んだらきっと最高だったかも。
残念。
浅田の任侠ものならもぅ少し泣けるほうがよかったかなぁ、とか。

また気分が向いたら続きを読もうと思います(全3巻)
そのときはもぅ気が乗っちゃって書きまくるかも(笑)
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2007年 07月 08日 |
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永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは三十年前の風景。
ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。
さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で
精力的に商いに励む父に出会う。
だが封印された“過去”に行ったため…。
思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。
吉川英治文学新人賞に輝く名作。
(「BOOK」データベースより)

単純に過去に行ってしまうタイムスリップな話と
思いきや父親と自分との関係、親の過去を知ることで
得る自己探しの旅って感じでしょうか。
それにしても「みち子」の存在はとてもせつない〜。
ラスト、え?そうなの?それでいいの?と
何度も読み返してしまいましたよ。

あたし的にはピカレスク小説としての浅田作品が好きなので
ちょっともの足りなさも。。。まぁあとは「壬生義士伝」とかね。

こんなシンプル=単純でいいの?と問いつめたくなる一方
いや、浅田作品のいいとこってそのシンプルさよね、と
思い直したり。
戦前・戦中・戦後の混乱期などの様子が描かれた部分は
本当に活き活きとしていてそちらメインの話のが読みたいかな。
お時さんなんてかっこいいじゃないですか、んも。

かろうじて丸ノ内線の「暗くなる瞬間」を知っているので
妙な既視感をもって読めましたが。。。
ちょうど上手く、ここ最近の「昭和ブーム」に乗ったなぁ、と。

そいえばタイムスリップしてしまう地下鉄について
読んでる間何もつっこみを感じないですんなり受け入れてしまえたのは
やっぱり浅田マジックなのでしょうかね(苦笑)
ファンタジーのにおいのしないファンタジーみたいな。
「困ったときの幽霊頼み」な?(笑)
まぁ今回は幽霊ではないですけどね。

映画もぜひ見てみたいと思えた作品。映画化に
ぴったりって感じ。
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2006年 09月 23日 |
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 久々の浅田次郎ですが、この人には
ずっと「壮大なホラ」を吹いていて欲しい。
「蒼穹の昴」のように、「天切り松」のように
「壬生義士伝」のように。
この短編集にはどれも壮大な舞台は用意されて
いません。むしろものすごく小さな狭い世界。
その世界の中で他人には推し量ることのできない
様々な人の人生の一部がとてもせつなく
やさしく綴られています。

若い頃、今では顔も思い出せないのに胸の内に
強烈なインパクトを残したナオミ「踊り子」

場末の酒場でピアノを弾いている元チェリストが
抱え込んでいた思い「スターダスト・レビュー」

子供の頃に犯した混血児への軽い気持ちだった
いじめから起きてしまった不幸な出来事を
夫婦と幼馴染みが抱えたしこり「かくれんぼ」

取り壊される予定の公団住宅で自殺した老女の
心の内を描いた「うたかた」

我が身を心から心配してくれる恋人と母を
持つチンピラの部屋に。。。「迷惑な死体」

大好きな親友と憧れていた人、
その二人への気持ちから自分を騙す為に
作り上げた過去「金の鎖」

競馬が好きでその為だけに仕事選び
理解ある妻も得たけれど競馬友達の死から
自分でも思いも寄らぬほど深くこたえていた「ファイナル・ラック」

偽装結婚した中国人は言葉も通じない相手なのに
愛してしまった男「見知らぬ妻へ」

どれも様々な人のほんの「一部」なのにその人にはその人の
そこに至るまでの人生があるという当たり前のことが
ちゃんと文章の奥に生きている、まさに短編らしい短編ばかり。
日常の果てとも言えるそんな話です。

とくに「うたかた」とてもじんわりきました。
あ、あと「ファイナル・ラック」小説の最後に書かれた
「結果」にはついついこちらまで「うわぁ〜〜〜」とつい涙が(笑)
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2006年 04月 19日 |
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 んー、なんて言ったらいいんでしょ。壮大な話です。
中国清朝末期、貧しい糞拾いの子、春児(チュンル)は
占い師白太太(パイタイタイ)の予言を受ける。
昴を守護星とし紫禁城(ヅチンチョン)の帝の側近となり
老仏爺(ラオフォイエ)西太后(シータイホウのお宝をすべて手にする、と。
その予言を信じて、科挙の試験を受ける幼馴染みの兄貴分
文秀(ウェンシウ)に従って都へと向かう。
己の身分の低さを痛感した春児は自らの手で浄身(チンシェン)し
「宦官(ホワンクワン)」となり西太后に仕え
また文秀は科挙を主席で合格し
万歳爺(ワンソイイエ)光緒帝に仕えることとなり
対立する后派と帝派にわかれてしまう。
滅びゆく清朝の中、ひたすら自分に課された星のもと
自らの「蒼穹(あおぞら)」を求め生き抜いていく。

浅田次郎の最高傑作との評判が高い本。
でもちらっとこぅ書いただけではちっともわからないどころか
中国の歴史や文化に疎いあたしはもぅ拒否反応すら
起こしそうな単語の羅列!
時間はかかりましたがそれでも読み切れたのは
登場人物たちの魅力でしょうね。

悪女として書かれることの覆い西太后ですが
この話の中では、「おじいちゃん」の霊の前では
少女のようにかわいらしくいじらしく
ジャーナリスト達に西太后について語る春児の言葉は
無垢そのもの。
この世界はまず読んでいただくのが一番感じてもらえるけれど
なにぶん長い。けれど長さを感じながらも
その世界の居心地の良さに最終話では
「彼ら」との別れがちょっと寂しかったり(笑)

苦手意識だけで避けているともったいないことがいっぱいあるね。
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2006年 03月 06日 |
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 つくづくね、この人の書く本は「巧いな」と思いましたよ、
あたしも。解説にあるようなPNがどーのと長いことは
言いませんが、巧みな語り口調と江戸っ子のべらんめぇ調
そして朴訥とした東北弁の使い分け=語り手の変化の流れは
素晴らしいの一言。

何度も泣きました。特に下巻はこれでもかこれでもかと
もぅたたみかけるように。

壬生浪(みぶろ)と呼ばれた「新撰組」に入隊した
吉村貫一郎は「鬼貫」や「人斬り貫一」などと呼ばれ
その非情さを怖れられ、また金銭に卑しいことから
仲間からも蔑まれていた人物。
時は大正、あの幕末の時代に生きた吉村の生き方を
吉村と接した人々からの語りから
吉村の本当の姿が浮き上がってくる。
人を斬るのは、自分が死なないため。
自分は死ぬことができない。死んではならない。
遠く離れた南部の地の愛する妻、子供達が
待っている。脱藩した自分が少しでも多く
「銭こ」を稼いで送ってやらねばならない。
愛する家族達を守るために。

本当の武士として、義を貫き、己のためではなく
己の守るべき者のためだけに生きること。

それは武士の時代だけに限らず本当の男としての生き方に
彼を思い起こす男達にとってかけがえのない存在として
深く胸に刻まれている。

慶応四年の一月、雪の舞う夜更け、満身創痍の侍が
大坂の南部屋敷に命乞いに現れるところから話は始まり
そして交互に、吉村貫一郎本人のお国訛りの語り
吉村と同じ新撰組に属した同期や、吉村の教え子
さらに斉藤一や大野次郎右衛門の息子、千秋
吉村の残された息子と語り手が話を進めるうちに
見えてくるもの。

貫一郎の心の内、長男嘉一郎の母に宛てた独白
そして貫一郎の次男が地元盛岡に帰郷するラスト
大野次郎右衛門の手紙は圧巻です。

はぁ〜〜〜〜、だから浅田は「鉄道員」だけで
判断しちゃいけません(笑)
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