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2005年 09月 29日 |
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 やっぱ宇江佐はいいわぁ〜とまたまた思わせてくれた一冊。
江戸は水路の町、浅草、本所など、川沿いの下町を舞台に
「喜び、悲しみ、口惜しさ、怒り」そういった様々な感情を
扱った6つの短編集。
読んでいて、幾度、じーんと目頭が熱くなったり
くっと喉の奥が痛くなったことか。
はっきり言って、大きな何かが例えば人の死とか
そんなものがあるわけではないのに
じーんと心の奥に響く感じ。
心が豊かになる、そんな本です。

宇江佐の短編集「おちゃっぴぃ」の続編的短編もあり
登場人物が出てきたりしますが、そこはもちろん
「おちゃっぴぃ」を読んでいない人にもちゃんと
わかりやすいようになっていますが
読んだ人にはさらに嬉しい、懐かしいキモチも。

「どやの嬶 (かか)」
神田須田町に大店をかまえる水菓子屋のお嬢さんとして
育てられたおちえだが、火事と度重なる不幸とで
母と弟と番頭だった卯之助の4人で小さな仕舞屋で
着物一つ新調も出来ないような慣れない下町暮らし。
そんなおちかに求愛してきた男は近所でも有名な男まさりの
「どやの嬶 」の息子だった。自分はあの家で、
たくさんの兄弟の中でやっていけるのか?という不安が。。。

「浮かれ節」
三土路保胤(みどろやすたね)は小普請組に属し
家禄だけの生活で窮していた。暇だけはあるので
一中節(いっちゅうぶし)のおさらい会には欠かさず
出席し、武士としての謡曲よりも町人好みの端唄を好んだ。
そんな折り、巷で流行の都々逸、別名浮かれ節を完成させた
都々逸坊扇歌(せんか)と端唄の得意な者達で都々逸を
競う合戦が妻の実家の料理茶屋で行われることに。
保胤は褒美金の50両があれば娘の嫁入りの支度が
できると考えるが。。。
扇歌の粋なやりとりに思わずうなってしまいます。

「身は姫じゃ」
外神田、佐久間町界隈を縄張りにする
岡っ引き、伊勢蔵と子分の龍吉が幼い薄汚れた女の子を
見つける。自分を姫と言ってそれ以外は話そうとしない「はやこ」
伊勢蔵は女房のおちかを呼び女中の振りをしてもらい
一時的に預かり、「お姫様」の身元探しをしてみると。。。
最後のはやこの一言が胸をうちます。涙。

伊勢蔵は「おちゃっぴぃ」にも出てきた岡っ引き。
娘の小夏と龍吉の結婚を龍吉の父親が若すぎるのを理由に
一度は反対したものの、今は祝言をあげ伊勢蔵の子分として
仲良く暮らしている模様。

「百舌」
横川柳平はもとは津軽弘前藩の藩校の教官だった。
江戸出府したものの、訳あって無役となり
国には帰れない。その後、以前に姿をくらましていた弟と
3年前に再会し、それから本所相生町に男二人住まい。
五十に手が届く頃、津軽からの客人を迎え
思いは故郷に残る姉のひさに。
姉をぜひもぅ一度江戸に招きたい、また会いたい、と
その手はずを整える。金吉と姉を待ちわびる日々、
金吉の元に別れた妻との間の一人娘が尋ねてくる。
現代と違って簡単に故郷にも帰れない、連絡も取り合えない、
距離感を感じる分だけ思いも今よりずっと深かったのかもしれない。

「愛想づかし」
三十三のお磯は出戻りで前の亭主の所に子供を置いてきていた。
旬助は5歳年下の二十八、旬助は日本橋、廻船問屋「三枝屋」の
一人息子だった。お磯は親代わりに面倒を見てくれた居酒屋の
亀吉の元で働き、旬助はそのお磯の家に転がり込んでいた。
旬助に家を継がせようと探す実家の人たちと
「幸せになりたいのになれない」女、お磯。
旬助はお磯と共に実家に帰ることを考えるが。。。
今なら精神的に不安定と言われるお磯の不安定さが痛々しいです。

「神田八つ下がり」
「おちゃっぴぃ」でもおなじみの菊次郎。
すっかり薬種屋「丁字屋」の主(あるじ)が板についてきた。
3人の娘を持ち、さらに女房は大きなお腹を抱え
遊びもすっかりままならない。
常連の町医者、桂順と店で世間話に興じる日々。
旗本の次男坊伝四郎が通う道場主平四郎と3人で
伝四郎の婿入りの為の工面の相談に
とても綺麗とは言えない狭い見世で額を合わせる。
そこで食したものがその店とはまったく似つかわしくない
素晴らしく手の込んだ品々。不思議と思って様子を伺うと
そこにはまるで高級料理茶屋の板前のような男がいた。
菊次郎は思い当たる節から間を取り持つことで
伝四郎にも思わぬ変化が。。。

どの話も心にしっとりしみます。
秋の夜長の読書のお供に。
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2005年 09月 24日 |
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 直木賞作家重松清のアーバンホラーと名打った短編集。
新宿を始発として郊外へと伸びる武蔵電鉄富士見線沿線を
舞台に家族や夫婦を軸にそれぞれの街に暮らす人々のドラマ。
ホラーは何も幽霊話だけではなく様々な日常に隠れている。

不倫、離婚、リストラ、借金と転げ落ちた先は
月1万の風呂なし共同トイレ、台所の安アパート。
そこには化け猫と噂される老婆5人が住んでいた「フジミ荘奇譚」

フリーランスの雑誌記者の慶子は「ウワサ」を扱ったページを
担当していたがネタにつまり、ふと目に付いたホームレスの
女性を「富士見地蔵」としたネタに仕立て上げる。そんな
小さな嘘が大きくなって彼女は思いもしなかった恐怖を味わう
「ハードラック・ウーマン」

入学前に亡くした我が子への思い。癒えてきていると
感じた傷は思いのほか深く、日々送られる息子名義のDMは
止むことがない。自分は、妻はまだ正常なのかと不安が忍び寄る「かげぜん」

子供のためにと緑に囲まれた地に中古マンションを買い求め
専業主婦となった絵里子は、子供のため、と公園デビューを果たす。
そこで味わう歪んだ世界に戸惑う「漂流記」

いじめから日々を鬱々と過ごす小学生、自殺を考える人を
すぐに察知することのできる駅員、そして世界中を旅する日記を
ウェブ上に公開し自殺を思いとどませるかのように
勇気を与える男、その繋がりを描いた「よーそろ」

パンクと共に青春を過ごしたライターとミュージシャンが
久しぶりに再会したのは、子供を迎えに行った保育園。紹介された男は
自分の盲目的なファンだった「シド・ヴィシャスから遠く離れて」

ドリーム団地と呼ばれる遊園地脇にある団地に一人残った母に
同居を勧める娘夫婦。家族思いという言葉の意味の捉え方の違いを
悟る「送り火」

なんとなくずれてそれが次第に重なり心がすれ違いきり家を出た浩輔。
一人のがラクと住み始めたウィークリーマンションのある駅で
帰りたかったのに今もずっと帰れないと嘆く地縛霊と会う「家路」

一人娘の翠は死期が近い父の為に母に頼まれて、夫と
「富士山が見える場所」に墓地を求めに行く。なんとなく感じている
夫や義父母との違和感に両親と3人で暮らした日々を思う
「もういくつ寝ると」

どれもみな、心にじんと何か深いものを淡く残すせつない話ばかり。
「いってらっしゃい」「いってきます」「ただいま」「おかえり」
こんな言葉の何気ないやり取りが壊れる恐さなんて改めて考えると
本当にコワイこと。公園デビューの異質さ、そのストレスを
抱えたまま過ごす専業主婦はいずれどうなってしまうのかを
考えてもコワイ。普通に成長するはずだった我が子を突然に
亡くしてしまった後も続く生活も想像するだけでもコワイ。
ただその恐さだけではなく、ちょっとした癒しも含まれているので
ほっとはするのですが、でもやっぱりそのコワさを
後からもずんと残すせつないホラー小説。
今、自分の元にある失ったらコワイものを改めて考えられる1冊。
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2005年 09月 23日 |
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 江戸後期、漢方から蘭医学への過渡期、
世界で初めて全身麻酔による乳癌手術を成功させたその裏には
姑と嫁の長年に渡る青洲を我が方へ得ようとする
静かで凄まじい争いの末、麻酔剤を完成させるために
自らの身体を動物実験後の人体実験に
望んで捧げた功績があったのだった。
世間では美談として伝わる姑と嫁の会話も実は
互いにしかわからない針で相手を刺すようなもの。

何故、そうまでして相手より優位に立とうと
しなければならないのか、そうまでしないことには
得られない誇りと自己。
それはそれで矢張りとても哀しくせつない。
生理的で無意識であればあるほど。

そんな嫁姑をうまく采配できるかどうかは
男の器次第、母の沽券を守るため先に母の身体で実験を行うもの
与えたのは眠り薬程度の配合の偽の麻酔剤。妻には本当の麻酔剤で
実験するが後遺症でいずれは失明に至る。
我が身を実際の研究に使ってくれたと勝ちを確信し
姑の死後は美談として「華岡家の物語」の代が姑から我が身に
移ったことを感じながらもそれを快く思えなかったのには
それが決して美談なんかではなく、義妹が死の間際に
残した言葉がすべてだったからこそに他ならない。
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2005年 09月 23日 |
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 信濃毎日新聞夕刊ほかに昭和57年より連載された
長編小説。
その内容は重く暗くなのに心をふっと軽く爽やかに
させるのは藤沢の美しい文体の成せる技。

奉公先から出て仲買いから始めて今では株をもち
店を一代で起こし中堅の紙問屋として人も雇い
順調に商いをしている新兵衛。
しかし、40歳を迎えた頃、髪に白いものを見つけ
こんなものか、とふと寂しく思ったことから
女中の若い身体にふらりと動かされ、妾として
囲ったが、今ではそれもきれいに精算した。
なのに妻はずっと無言で新兵衛を責め続ける。
もともと心の通い合う女子ではなかったのだ、と
特に繕うでもなく、家はいつも冷えびえとしていた。
頼りのはずの長男は、一向に店に力を入れることもない上
岡場所に通い遊びほうけ家を黙って空けることもしばしば。
そんな折り、ふとした縁で同業者である丸子屋のおかみ
おこうと知り合い、おこうこそ、本当に心通い合わせることの
できる運命の相手だと確信するが
不義密通は人の道として世間様は許してくれるわけもない。
時同じくして、新兵衛の得意先が次々と「割り込み」と
呼ばれる極端な値引きにより横取りされていく。
相手は格式のある老舗の問屋達。
新兵衛は目に見えない大きな策略に嵌められていくのを感じた。

藤沢文学として評価の高い作品。
新兵衛はじめ人物の心の静かな動きも洩らさず読み込めるので
読んでいて自然と感情が、新兵衛が感じる得も言われぬ不安感が
海鳴りが聞こえるかのように伝わってきます。

不義密通に対する脅しと仕事の罠、世間の目や、家族問題と様々な
泥沼にはまっているのに、どこか大人のための童話のような
作者の登場人物への優しさは読んでる者の心も癒してくれます。
心の静けさ、一筋の光。
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2005年 09月 20日 |
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 初期の宮部の文句なく「おもしろい」連作短編集。
嵐の夜、ある新興住宅地に侵入しようとした隣の家に
泥棒が落ちてくる。その家の一卵性双生児の中学生に
気を失い倒れたところを助けられ、看病を受ける。
意識が戻ると、何故か親がいない。
問いただすと、父親は愛人と、母親も愛人と同時に駆け落ちし
互いにそれぞれが子供の面倒を見ていると思いこんでいる、と。
ところが実際は双子の中学生ふたりで生活をしていた。
けれど家のローンの支払い、生活費が底をついてきた。
そこで二人は彼に取引を持ちかける。
警察には突き出さないかわりに、僕たちが二人で暮らして
いけるようにお金を出して欲しい、「お父さん」になって欲しい、と。

もぅあり得ないような設定なのに楽しく一気に読ませてしまうのは
何よりもキャラの魅力。
頭のいい双子の兄弟と父親役を演じなくなければならなくなった
極々、フツウの感覚で職業として泥棒である彼の会話もいい。

何が「今」自分にとって大切か、何を心地よいと感じるか。
謎解きの間にそんな人と人の心の繋がりにほっとできる一冊。
普段、本なんて読まないけれど、何か、軽い面白い本ない?と
聞かれたらコレ薦めます(笑)
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2005年 09月 19日 |
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 濁点は読まずに「ひけんみつかかみ」と読みます。
あたしでも知っている佐々木小次郎や柳生十兵衛なども
登場しますが、ほとんどはマニアックな剣豪揃い。
それぞれの剣の流派の代表的な剣豪たちのエピソード。
短編集なのですが、あぁ、この人にとっての師匠が
さっきのあの人なのかぁとか、この時のこの人は
ここではこぅなのね的に人の繋がりがあったり、と
読みながら、これ知識としてアタマに入れちゃって
ふとした時にそれが活かされちゃったりする?なんて
思いながら読んでしまったので
小説というよりは歴史書でも読んだ気分。
剣豪好きにはたまらないのでは。
アタシはもぅ少し人の心を描きほろりと
しちゃったりする方が好きかな。
それでももぅ一度じっくり読み返したいと思わせる
魅力的な、知識欲をくすぐる一冊。
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2005年 09月 14日 |
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 1959年から65年までに雑誌に発表された作品で
本としては未発表のものばかりを集めた
侍をテーマにした短編集です。
宇江佐真理の「深尾くれない」を読んで
同じく深尾角馬を扱った「狐斬り」が読みたくて
読み始めたのですが、どの話も面白い。
さすが司馬遼太郎、ストーリーテラーとして
最高峰の位置に存在する人の文章を堪能しました。
でもこれ、作家としてデビューしたばかりの頃。
キャリアではなく天賦の才なのね。
話は、戦国から幕末までを年代順に並べられ
歴史的には知られていない人物ばかりですが
飛びぬけた個性の持ち主ばかりを扱ったもの。
しっかりとその当時の時代背景も
説明的なだけではなく自然にはいりこみ
語り部としての司馬遼太郎の世界に
違和感なく引き込まれます。

以下、覚書用。

昔にお年寄りから聞かされたような
分不相応が一番身を崩しやすい教訓のような「権平五千石」

恵まれた怪力を活かせず不器用な生き方しか
できない、からと言って夢物語のような出世話は
我が身には降りかからず。。。な「豪傑と小壺」

妻の浮気に対して深尾角馬の取った行動は
妻に見せた奇妙な行動と相手への木刀仕合だった「狐斬り」

忍者同士の巧みな騙し合いを描いた「忍者四貫目の死」

猫を自分の師匠とし独自の流派を貫く「みょうが斎の武術」

好色で命を落としてもいいと思う気儘人「庄兵衛稲荷」

町屋の娘に生まれ武家に嫁ぎ、夫の浮気を疑っていたら
実はとんでもない企みを進めていた「侍はこわい」

新撰組近藤勇の幼き頃を描いた「ただいま一六歳」
以上8編収録。
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2005年 09月 10日 |
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 わりと初期の宇江佐作品。
おろくとは南無阿弥陀仏の6文字をさし
死体を意味する言葉。医者でありながら
患者の脈をとることもなく投薬もしない、
八丁堀の役人と組んで検死ばかりを専門とする
美馬正哲(しょうてつ)を人は「おろく医者」と
呼んでいた。妻のお杏は産婆であり
「人の生まれる前と死後はともに暗い闇の中ということか。
闇から光の中に導くのがお杏の役目ならば、
光から闇に人を葬るのが正哲なのだ。」
という夫婦。正哲は様々な死体と向き合うことで
その死体が、自分はこんな風に死にました、自分は
こんな風に殺されました、と語っているのを
杉田玄白の「解体新書」を胸に
医学的な知識を持って聞き出し事件を解決へと導く。
時に、麻酔を使った乳癌の手術を成功させた
華岡青洲の元、遠く紀州にまで学びに行っている間は
お杏が代わりに事件を解決に持っていったりと
お杏さんもなかなか素敵です。
謎解き的なおもしろみがないわけではないですが
人の生と死を直に扱ったテーマだけに重みが
あるものの、そこをさらっと読ませるのは
正哲やお杏を初めとした登場人物達の
情の深さかな。
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2005年 09月 08日 |
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 大物作家、池波正太郎、名前ばかり知っていて
実際に読んだのは初めて、だと思います。
女性ばかりを主人公にした13作の短編集。
どの話にしても短編なのにその構成力は
読む者を瞬時にその世界へ引き込みます。
架空の物語はもちろん、史実に基づいた
「烈女切腹」にしてもそれは
何一つ損なうことなく自然に呑み込まれる。
ただし、好みを言えばちょっとどうかな。
性的な話が、いかにも男性視点で
女性の強さ、凛々しさ、潔さ、その反面に
男性のせせこましさや意地汚さ、惨めさを
様々な形で対比させているのに
どうしてもその根底には男性から見た性の対象としての
女性でしかなく、まぁ男性が書いてるのだから
仕方ないのですが。。。

大名奥御殿での女中奉公をする力持ちで大女のさつの
生き様を書いた「力婦伝」
愛する夫を殺され下手人を追って江戸に出た
美しい八千代の話「女の血」
不作の生大根と自分を捨てた男を殺め、その後
30年の後に知った真実「三河屋お長」
姉を殺めたことで川に飛び込んだ痘痕顔のおしげを
助けたのは同じく痘痕顔の父親のような友五郎だった
「梅屋のおしげ」
煙管師(きせるし)の父を殺され復讐を願いつつも
なんの手がかりもなく15歳だったおみつは生きるため
出た奉公先は口やかましく厳しいお内儀おりんのいる
小間物問屋。おみつの父を殺した浪人との再会は。。。
「平松屋おみつ」
他、「蕎麦切おその」「烈女切腹」「おせん」
「御菓子所・壺屋火事」「あいびき」「お千代」
「おきぬとお道」「狐の嫁入り」

ちなみに「お千代」は女性の名前ではなく猫の名前。
表題作の「おせん」「平松屋おみつ」が好きかな。
次は世間一般的に大衆小説としての池波に挑戦かな。
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2005年 09月 04日 |
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 日本橋通油(とおりあぶら)町を舞台に江戸の風俗と人情を
ほのぼのと一人の女性の目を通して描く連作集。
琴は北町奉行所の臨時廻りの同心高岡靫負(ゆきえ)の
妻だったが突然に夫は不審の死を遂げる。
子供は二男三女に恵まれ、長男は同心の跡を継ぎ
娘達はみなそれぞれに同心や与力に嫁いだものの
末っ子は「はずれ」とばかりにまったく違った道を選び
家を出ていた。夫の死後、琴は、今や売り出し中の
浮世絵師となった末っ子の賀太郎の住む通油町へ移る。
初めは慣れない町人の暮らしに戸惑いながらも
目新しく興味深いことばかり。

幼馴染みの三省堂藤倉屋の伝兵衛や医者の清順達
その家族達や近所の人達との出来事や巷に流れる噂話など
色々と簡単に賀太郎の描き損じた紙の裏に
書き連ねるようになり、琴女癸酉日記(ことじょきゆうにっき)
ー琴の癸酉の年の日記と名付ける。

息子達と、夫の小者を勤め夫の死後に十手を返上した
汁粉屋伊十と共に、夫が殺された真相を探っていく、という
捕り物話が物語の中心にありつつも
その日常は時にほの悲しく、考えさせられるものでありながら
どこかユーモラス。
と、安心しちゃいけません(笑)なんたって宇江佐真理ですから。
油断してるとやられるよ、とさんざん読了された方々にも
言われていたのに。。。
ええ、やっぱり涙腺やられました(苦笑)
やっぱ宇江佐の人情物の世界に酔うのは心地よいです。
猫のどらの「いい仕事振り」もやっぱいいっす!


御免斎貧町人涙堂困窮上げましょう御意向
(ごめんさいひんちょうにんなみだどうこんきゅう
あげましょうごいこう)に対しての琴の日記には
「涙堂、この世にあるのを知らぬ。それ、人の心に
ひそかに建立したるものにあらぬか。涙堂の構え、
大きくなる人こそ、その悲しみも深しと思ゆ。
妾(わらわ)の涙堂、中ぐらい。 琴」
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