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2005年 11月 30日 |
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 「ガーデン」に続いて2冊目の近藤史恵です。
順番的にはコチラの方が昔の作品、デビュー2作目。
ガーデンでも出ていた探偵の今泉はこの作品でも
登場してたのね。今泉好きには嬉しい♪
ことばが頭から消えていくんだ。。。
歌舞伎のこと以外頭にないような、天才肌な歌舞伎役者
中村銀弥は、妻 一子にそんな症状を訴える。
一子は以前より、彼を愛しながらも、愛していたからこそ
その歌舞伎一筋な夫の手応えのなさに疲れ
文芸誌記者 大島良高と密かな関係を持っていた。
後ろめたさを感じつつも夫の病状を案じる一子。
一方、大部屋役者 瀬川小菊は大学時代の友人の
私立探偵 今泉文吾が2ヶ月前に上演中の劇場で
起きた殺人事件の調査に興味を持ち一緒に行動を始める。
銀弥の相方を努める歌舞伎役者 小川半四郎の婚約者が
観客席で刺殺されたのだった。
衆人環視の密閉空間で起こった犯罪。
閉鎖的な梨園で起こった悲劇。
今泉は冷徹に事件の謎を解き明かしていく。

話のテンポもよく歌舞伎に馴染みのないあたしでも
すぐに入り込めましたが、やっぱりここは
「知ってる」とさらにおもしろさ倍増でしょうね〜。
一子が銀弥に一目惚れをした舞台など
想像しただけでうっとりです。
そして事件解決に向けても矢張り、実際の歌舞伎の内容を
知っていればもっとしっくりいくのでしょうが。。。
まぁそれを除いても十分楽しめました。
特に中二階女形、小菊のキャラがいいなぁ。
トリックそのものには首を捻らざるをえないところがあり
ちょっと物足りなさはあるものの。。。
たぶんこの作品の読みどころは
事件解決そのものよりも、その閉鎖的な
人間関係の中で各々が見ている、ねむりねずみ的な
自分の見たい「現実」を見ている人々なのでしょうね。
ミステリとしてよりも文芸作品的に
読み終わった後ちょっとしみじみと考えてしまいました。

「ネムリネズミはたのしかった
目をとじているのできいろと白のキクの花は見えなかった
あたまのなかにうかんでくるのは ただ
青いヒエンソウ 赤いゼラニウム」クリストファー・ロビンのうたより
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2005年 11月 27日 |
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 初乙一です。「はじめ」かと思ったら「いち」なのね。
視力をなくして、家族もなく一人で駅のホームの見える
一軒家で父の残した保険金でじっと暮らすミチル。
幼馴染みのカズエが一緒に外に出てくれる以外は
見えない恐さに負けて外に出ることもままならない。
ある日からミチルは家の中にある気配を感じる。
それは駅のホームから人を突き落とした犯人として
追われているアキヒロだった。
人に馴染むことを拒否し、職場の人間関係も
うまくいかず悩んでいたアキヒロ。
死んだのはアキヒロの同僚であり、アキヒロを
追いつめた張本人でもあった松永だった。
自分が気づいていることを悟られたら
己の身の危険になると怯えたミチルは
気づかない振りをしようと決めて普通に
過ごそうとする。
そうして二人の奇妙な生活が始まった。

ミチルとアキヒロの交互の視点から進められる物語に
次はどうなるのか、と、一気読みです。
適度な緊張感と二人の心をしめる他人との距離の取り方への
悩みにどんどんと引き込まれ、事件の結末を追うよりも
二人の関係の行き着く先に気を奪われている矢先に
唐突に明かされる事実。
んー、やられた。

ご都合主義的な結果論なんてどうでもよくなるくらい
読み終わった後、とても心地よい作品。
突拍子もない設定なのに繋げ方のうまさに長編ながら
いい意味でまとまっていて「面白い!」と素直に読めます。
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2005年 11月 27日 |
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 宮部の「ぼんくら」の続編です。「ぼんくら」から
読むことをお奨めします。

前作「ぼんくら」の登場人物に加え、また様々な人が
登場し、その登場人物たちひとつひとつのエピソードが
最後にはすべて繋がってゆく。もぅ見事です。そしてそれが
いかにも「こうなるんですよ」的にアタマで作られたような
「くっつけられている」感がなく見事に自然。
すべてが必須。余計なものもなければ
じゃああれはどうなったの?なモヤモヤもない。
さらに毎回、魅力的な登場人物たちの面白さが絶妙に
絡み合いもぅずっと読んでいたい、と思うほど。
読み終わるのがもったいない!
ベースは人情捕物帖ですが、普通の小説感覚で読めると思います。

一日一日を積み上げるように暮らすことが
実はどんなに大変かを考えてしまいました。

以下「ぼんくら」のネタバレにもなるのでご注意を。
上巻4作目までは、短編連作として話が進みます。

「おまんま」
一切の食事を拒んで倒れてしまった岡っ引き政五郎の
手下のおでこ。まだ13歳のおでこは自分の
「存在意義」に疑問と不安でいっぱいだった。

「おまんまのいただき方は、人それぞれに違う。
違うやり方しかできない。自分にできるやり方を
するしかないし、それしかやりたくないのが人のわがままだ。」

似顔絵つきの扇子の絵師として人気を博した祥文堂の秀明が
殺された。平四郎がその謎を解けたのは35年前もの事件を
諳んじることのできるおでこの才能があればこそだった。

「嫌いの虫」
鉄瓶長屋で一時的に差配をしていた佐吉。植木職人の
仕事に戻り幼い頃から見知ったお恵と所帯を持った。
周りに祝福され希望抱いて夫婦になったはずなのに
「隠し事」をされていることに気づいていることを「隠す」
お恵の心は揺れていた。
「いつか別れるのではないかと、別れる前から怖れ怯えて
暮らすのも、愚かなことだと教わりました。それは別れが
怖いのではなく、自分の手にしたものを手放したくないという
欲に、ただただ振り回されているだけのことだから」

同じ長屋に住む佐吉の仕事仲間の徳松夫婦。子供を置いて
時々ふらりと姿を消してはきっちりと帰ってくる女房のおとみ。
夫婦の仲のことはその夫婦それぞれ。

「子盗り鬼」
二人の娘を抱えた未亡人のお六とそのお六に病的に
付きまとう悋気持ちの孫八。逃げるために娘達と
住み込みの女中に入った先は「子盗り鬼」が出ると
噂される「葵奥様」が一人で住む屋敷だった。

執拗に追う孫八に「葵奥様」は大がかりな「仕掛け」をする。

「なけなし三昧」
幸兵衛長屋に移り住んだ煮売屋のお徳の並びに
商売敵が現れた。お菜屋のおみねの店では
長屋暮らしの者には手の届かないようなお菜を
法外な安さで評判を集めようとしていた。
自分の存在を「ある人」に知らせるために。

「その人の笑顔を見たい。その人と一緒にいたい。
その人が困っていたら助けてやりたい。惚れると
いうのは、そういうことであるはずなのに。」

商家の娘が首を吊って自害した。散々貢いだ挙げ句に
身籠もり捨てられた果てに。せめてその相手を
突き止めたいという親の申し出を受けた政五郎と
その話を受けた平四郎。仕掛けた罠に荷担したのは
弓之助の従姉、親の縁談に悩むおとよだった。

「日暮らし」
葵が殺された。下手人として捉えられたのは
その場にいた佐吉だった。
無実であると打ち明ける佐吉とどうしても真実を
突き止めたい平四郎たちは事件の解決に奔走する。

煮売屋からお菜屋、果ては仕出し屋へとお徳に
商いを広めるよう手助けをしてくれた庖丁人の彦一。
平四郎が初めて懐柔する時にも二人は
強力な助っ人となる。
一度は解決させたよその島の事件をそうしてまた
洗い直して見えてきたものは。。。

この話一番の長編です。

■鬼は外、福は内
事の顛末を伝え、腰を痛めた平四郎は
佐吉夫婦の家からの帰路、病人を乗せる釣り台に揺られる。

「一日、一日、積み上げるように。
てめえで進んでいかないと。おまんまをいただいてさ。
みんなそうやって日暮らしだ。
積み上げてゆくだけなんだから、それはとても
易しいことのはずなのに、ときどき、間違いが
起こるのは何故なんだろう。
自分で積んだものを、自分で崩したくなるのは
何故なんだろう。
崩したものを、元通りにしたくて悪あがきするのは
何故なんだろう。」

上下巻合わせて700ページを越えますが
一度として中だるみナシ。素晴らしいです。
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2005年 11月 23日 |
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 文章家、小説家、コラムニスト、絵本作家などなど
数々の肩書きをもつリリーさんの初長編。
巷でも大評判のこの本、泣けるとウワサなので
文庫化したら即買おうと思っていたのですが
それまで待ち切れませんでした。
買って正解。

4歳のときに父親と別居した母親と暮らしてきたリリーさん。
そんなリリーさんの母親は
自分のことよりも子どものことや他人を
何よりも気を使い、自分は恥をかいてもいいけれど
他人に恥をかかせてはいけないと教えてくれた人。
台所ではいつでも食べ物のにおいがして
ぬか漬けをいいタイミングで出すために
夜中に目覚ましをセットする。
子供のためには苦労をもいとわない。
そんな愛情に育てられ大学入学の為
東京に上京し一人暮らしを。
遊び惚けて挙げ句の果てに留年。
その間の仕送りはすべて母親が働いたお金。
悪いと思いつつ、その後も定職に就かず
ギャンブルや仲間と酒を飲みまくり。。。
そんな折り、母親がガンであることが発覚。
兄弟姉妹に頼り居候生活に気兼ねする母を
東京に呼び、「一緒に生活しよう」と決意する。

ココリコミラクルタイプでのあのボソッと言う
コメントがいい味だしてるリリーさん。

もぅ読んだ人みんな褒めちぎりですが
これは「いい」って人に薦めたくなる。
ええ、なりますとも。
テーマとしては十分反則。泣いて当然。
でもそのテーマをここまで自己陶酔な文章にならず
ストレートに読ませてくれる。
ぜひ読んで欲しい。

「斬られ権佐」以来の号泣。読み終わった後には
涙と鼻水でティッシュの山でした。

時々はいる抽象的な散文にはアタマを空にして身を
委ねると心地よいです。
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2005年 11月 21日 |
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 読み終わったあと心が洗われるような
とても気持ちのよい充足感。
あたしはこの話、とても好きです。

治療方法もなく命を閉じようとしている息子。
遺伝ゆえの病気で覚悟はしていたけれど
息子に一言、どうしても伝えたい一言がある。
伝えなければ。。。

宮本拓実は共に息子の病気と闘った妻に
昔の出来事を話し出す。
自分は20年以上前に、息子に、トキオに会っている、と。

自分の出生を恨み卑屈になりおまけに短気で
なまじボクシングをかじったばかりに
喧嘩っぱやくどんな仕事も長続きしない。
当時の彼女、千鶴に何かと甘えっぱなしだった拓実。
そんな時、謎の青年、トキオが拓実の元に現れる。
ある日突然、別れを告げられて謎の失踪をした恋人の千鶴を
追うとそこには計り知れない闇の世界が。
千鶴に本当の別れの理由を聞きたい拓実と拓実に
その出生についての「本当のこと」を知らせたいトキオ。
二人は名古屋、大阪へとその謎をはっきりさせようと
旅に出るのです。

トキオ=息子とわかっている読み手側と何も知らない主人公
このバランスがまた読みやすくさらに「知りたい」欲求を高め
一気に読ませるおもしろさと親子について
じーんとさせ、さらに「奇跡」(すでにトキオの存在が「奇跡」)に
胸を打たれる一冊。
読後の気持ちよさはぜひ体感して欲しい。ラストシーン大好きです。
(NHKで放送されたドラマはラストが違うようなのでちょっと残念)
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2005年 11月 18日 |
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 解説より抜粋。
「拝金主義者の画商戸田と、彼に振り回される新進の女性画家志奈子」
「空き巣に入ったら必ず盗品のメモを残して被害者の心の軽減をはかる泥棒の黒澤」
「新興宗教の教祖にひかれている画家志望の河原崎と指導役の塚本」
「それぞれの配偶者を殺す計画を練る女性精神科医京子と、サッカー選手の青山」
「40社連続不採用の目にあっている失業者の豊田」

まったく違ったそれぞれの設定、人物達が
それぞれ語り手となり話が進んでいきいます。
読んでいて恩田陸の「ドミノ」を彷彿とさせますが
ドミノよりは登場人物は少ないし、これはスラップスティックを
狙ったわけではないのです。
この5人のそれぞれの物語が奇妙に交差し、それぞれの人物が
奇妙に出逢い関係し、それは後半に行くにつれ
あ、あの時のあの人がこの時の話しなんだ?と気づかされる驚き。
そして奇妙な「ずれ」
そうこの小説はあの「エッシャーの騙し絵」と同じ。
階段を昇る人たち。でもその階段はずっと同じ高さを
ぐるぐると回っている城の絵。
混乱する。読み返す。納得する。違和感に気づく。混乱する。。。
それは心地よい感覚。
各章ごとに隠された細かいパーツ、その「時間」すべてが
繋がったときの驚き。とても完成度が高いと思います。

その「不思議」は人物の行動にだけではなく
コトバの遊びにも満ちあふれて
「lash」「rush」「rash」「rush」という
すべての「ラッシュ」にかかっていることも気づかされる。
なんて快感。

これはネタバレなんかじゃありません。だってエッシャーの
騙し絵は「こーいう絵だよ」と説明されても
それを見て初めてその「奇妙さ」に感嘆するでしょう?
この本も同じ、読んで初めて感じるおもしろさ
ぜひ堪能してください。
もちろん物語そのものを通して様々なところで投げかけられる
生きていく事へのメッセージにも作者独特の優しさが
含まれていたりして感じさせるところがあり読み応え十分です。
軽くて読みやすく洒脱な文章と凝りに凝った設定とその中に存在する深み。
でも決してテクニックだけに溺れていないところがイイ。
章ごとに配置された「イラスト」もカワイくてツボ。

ちなみに前作「オーデュボンの祈り」ででてきた
カカシの話もちらりでてきたりして、ニヤリとしてしまう楽しさもあります♪
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2005年 11月 15日 |
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 こちらも「初めて」作家な柴田よしき。
ミステリっぽくない語りぶりにさらっと
読んでいくと事件が起こり、そこではっと
そいえばミステリ読んでるんだっけ、と気づく次第。
それくらい今よくあるような夫婦の形、夫婦の問題から
話は始まります。

二つに割れた派閥。その中で上手く立ち回っていると
思ったらその争いに負け、はじき出された雄大。
いきなりの無職。なかなかはかどらない就職活動。
幸い共働き夫婦、むしろ妻は自分よりも高収入。
すぐに生活に困ることはなくても気持ちは焦り、ささくれ立ち
酒に走り、パチンコ三昧。。。
そんなある日、オヤジ狩りにあう。
そして妻からの思いもしない一言。
「専業主夫になって自分を迎えて欲しい」

そんなことになってたまるものかと必死の職探し、だが
見つからないまま、雄大はやがて自分の住んでいる
マンションの住人達に翻弄されていく。
そして事件が起こった。

普通に生きているつもりでも
相手も十分に合意の上であると思っていても
自分たちの理想を互いに語っていても

あちこちに誤解は存在し、様々な面で自分では
思いもよらない恨みをかい、また残酷な言葉で傷つけている。
そう気づかされたときの驚きと後悔。。。

この話の最後、結構好きです。前向きで。
でもね〜、どうでしょ、自分がこんな立場に立ったら。
なんせ集団行動苦手ですから(苦笑)
それが恐くて戸数の多い集合住宅避けてるし(笑)
でもとても大切なこと。
人は誰でも一人で生きているわけではなくて
自分の生活の足下をしっかり意識していくことは
大事なことだものね。

まぁ一つ言わせてもらえば「どうせわからないでしょ
勝手にこぅ思ってるんでしょ、あたしたちのことを
ちゃんとわかってよ」と叫ぶことは
「じゃあ、お前らはこっちのことの何がわかる」
とも返せるわけです。
「わかってよ」と叫ぶのではなく
「自分も大変だけどそっちも大変よね。じゃあせめて
これはこちらでやりますよ」と「こちらもすべきことを
すみません、ありがとう」というセットが一番、あたしは
あるべき姿だと思うんですけどね。
そーいうのがなく井戸端会議でウワサだけを好物と
しているようだから。。。ぶつぶつぶつ。。。。(苦笑)
まぁここまですごい人たちにはお会いしたことありませんが
本当にいそうなリアリティがコワイです。
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2005年 11月 13日 |
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 また「初めて」作家、横山秀夫です。
とても話のテンポがよい上、こちらの「知りたい」欲求を
上手に高め、ぐいぐい引っ張るというよりはこちらの
手がどんどん先へ先へと進んでいくような。

現職の警察官である梶聡一郎がアルツハイマーに苦しむ妻を
殺して自首してきた。ところが自首してきたのは
殺害から2日目。動機も経過も白状はしているのに
その2日間については真実を語ろうとはしない。

警察の隠語ですべてを白状することを「落とす」「落ちる」と
表現する中、梶は「半落ち」の状態であった。

警察側は梶のポケットから「新宿歌舞伎町」で
配られただろうティッシュを押収。
警察官が殺しただけでも問題なのにさらに殺した妻を
放置して歌舞伎町に行っていたとは絶対にあってはならない。
真実を語らない梶、真実を揉み消す上層部に対し、
その違和感に気づく県警刑事、地方検察検事、新聞記者、
弁護士、そして地方裁判所判事、刑務所看守。
その6人の目を通して物語は進んでいきます。

たった一人の息子を急性白血病で亡くし、その命日に
墓参りに行った梶夫妻。ところが妻はアルツハイマーの為
お墓参りに行ったことを記憶すら無くし半狂乱に。
夫に自分を殺してくれと懇願するわけです。
息子の命日すら忘れるなんて母親じゃない。
せめて母親であるうちに死にたい。息子の記憶があるうちに
自分を殺してくれ。

そうして妻の首に手をかける梶。さらに一度は自害を
考えたものの死ぬことをとどまった本当の理由。

彼等6人が時系列順に梶と関わり合いながら
自分自身にも問いかける。
「自分はなんのために生きているのか」

とても涙なしでは読めない重さを持ちつつ
警察などの不祥事隠しとその隠蔽を暴こうとする人たちと
それを次々と阻止されていく緊迫感とその中に漂う無念さ
かなり興味を引くおもしろい作りにベストセラーは納得。
ラストの「理由」は途中で想像はつくものの
謎解きを楽しむ話ではなく純粋に人間ドラマとして
楽しめました。
映画もかなりおもしろいようなのでぜひ見たいところ。

もひとつ。これが直木賞を受賞しなかった経緯について
書かれたサイトを読みました。
くだらない点だけにこだわる審査には呆れてしまうよ。
ちなみにコチラのサイト。ネタバレもあるので読んだ方だけどうぞ。
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2005年 11月 11日 |
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 なんとも不思議な物語。喋るカカシがいる
人々から忘れ去られた島の物語。
この本は第5回新潮ミステリー倶楽部受賞作であり
伊坂のデビュー作。
新人ゆえに取り上げたテーマは「今までにない物語」と
いうのも頷ける奇想天外という言葉がぴったり。
理由もなく自分でもわからないままコンビニ強盗をして
捕まったはずの伊藤は目覚めるとまったく見覚えのない
部屋にいた。見覚えのない日比野と名乗る男が現れ
仙台の牡鹿半島をずっと南にきた荻島という所だと教える。

日本であり日本でない島。彼が「ルール」だからと
殺しを黙認されている男や嘘=反対言葉しか言わない元画家
300kgの体重を持って動けないウサギと呼ばれる女性
地面に寝そべって心臓の音を聞く遊びをする少女。
一癖も二癖もある人ばかりの異世界に突然飛び込んだ主人公
読み手側と同じ視線で、違和感と好奇心を感じながら
進んでいくので読み手側は彼と同じ感覚でその異世界を
体感することになります。
かなり突拍子もない話なのに主人公と一緒に
リアリティがない、と違和感に包まれているうちに
物語にどんどん引きずりこまれていました。

喋るカカシは未来がわかる。
そのカカシが殺された。
未来がわかるのにどうしてカカシは自分が殺されることも
知っていたはずなのにどうして助けを求めなかったのか?

ミステリとして読むよりも「物語」として楽しめました。
もちろん謎解きとしても理由は語られているのですが
違和感が何よりベースになっているので
多少無理があってもすんなり受け入れられちゃう(笑)
途中、コレなんか意味あるの?という行動の描写も
すべて最後にはちゃんとクリアになる心地よさ。

一つ言えば、主人公伊藤が学生の頃から恐れている警察官の城山。
その城山の犯してきた数々の陽の目をあびない行為には
吐き気すら感じ、嫌悪感の固まりまで込み上げたのは
十分、この作家の世界に入り込んだ何よりの証拠。

島に伝わる「この島に欠けているもの」がわかったときは
この作家の感性がとても好きになっていました。
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2005年 11月 07日 |
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 そーいえばまだ読んでなかったなぁで読んでみた
宮部の処女長編作、「パーフェクトブルー」
お財布が語り手というのは以前読んだけれど
今回の語り手は元警察犬のマサ。

高校野球界のスーパースター、諸岡克彦が
殺害され身体にガソリンをかけられ燃やされるという
むごい事件が起こる。そしてその前に実は
まったく同じ場所で同じように燃やされていたものがあった。
そこからして事件は異様で謎めいていく。
しかしその裏にはもっとむごくあってはならない
製薬会社の作り上げた何重ものヴェールが存在した。
その謎を解いていく弟の進也と蓮見探偵事務所の
加代子と加代子のボディガードである「俺」マサ
謎の先にぶつかったヴェールが彼等を待ち受けていた。

処女長編作という目で見てしまっているからか
それ以降の宮部作品の奥深さを知っているからか
もし宮部でなければ素直におもしろかったと
言えたかもしれないけれど、他の宮部作品と
比べると正直、拙さが目に付く。
会話の流れの最中に、これは誰の台詞?や
○○って誰だっけ?と瞬間襲う「?」は
あたしの読解能力の低さだけではないはず。
強請をかける者、脅されて犯罪に加わる者
主人公達を助ける者、そうした様々な人たちが
今まで生きていた人生の跡さえ見せてしまうような
そーいう手腕はまだ芽吹いてなく
単純にミステリーとしての犯人とその他の
割り振り当てられた登場人物として収まってる感じ。
ゆえに会話ひとつ取っても「自然にその者から出た」感じが
薄いせいかと。

マサ視点の間に「幕間」として木原和夫という人物視点の
まったく違った展開が繰り広げられ
一見接点のないように思えるそれぞれの物語が
徐々に繋がりラストへという点では宮部お得意のという流れですが
うわっとまではさせないちょっとツメの甘い部分と
探偵である加代子そのものの魅力が弱い部分が惜しいといえば
惜しいものの宮部らしい読後の爽快感は楽しめました。
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