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2007年 07月 31日 |
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週刊誌のライターで生計を立てている絵本作家が主人公。
作者自身を重ね合わせたかのような
ライターとしての多忙な日々と、絵本作家としての
作品が書けない日々。元ITビジネスの旗手
落ちぶれたアイドル歌手、年老いたSM嬢、ホームレスの夫婦…
彼が出会い、見送ってきた「東京」が描かれる。
直木賞作家が『ビタミンF』でもなく『エイジ』でもない
新しい世界を描いた、連作短編集。
(出版社/著者からの内容紹介)

哀しいけれどとても読後感のいい作品。
一度は掴んだ成功をいろいろな形で
失っていった人たち、ゆっくりと坂道を下っていく
そんな人たちとやはり同じように坂道を下り
ただ惰性だけで日々を過ごしている主人公。

主人公の進藤宏かつては新進の絵本作家として期待されたが
その注目を浴びた作品がきっかけでその後まったく描けなくなっていた。
娘と同じ名前の主人公。けれどモデルは娘ではない絵本。
そんな昔出した絵本を偶然知っていた人たち
取材をきっかけに偶然出会った彼ら。
進藤は彼らの過去と今を見つめデッサンを続ける。
新しい次の作品が描けるかもしれない思いを抱きながら。
最終章が本当にいいです。
ほろり。

「泣けるうちは、あんたはまだやっていける、俺はそう思うよ、ほんとに。」

ところで「ボウ」と言う字を漢字で書けと言われたら
どんな漢字を想像しますか?
詳しくは進藤の担当編集者のシマちゃんが教えてくれます。
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2007年 07月 27日 |
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ダーウィンと同じく“進化論”を唱えたイギリスの
博物学者・ウォーレスは、『香港人魚録』という
奇書を残して1913年この世を去る。
2012年、セントマリア島を訪ねた雑誌記者のビリーは
海難事故で人魚に遭遇する。
マリア一号と名付けられたその人魚は
ジェシーという娘に発情してしまう。
2015年、沖縄の海で遭難した大学生が
海底にいたにも拘わらず、三ヵ月後無事生還する。
人はかつて海に住んでいたとする壮大な説を追って
様々な人間達の欲求が渦巻く。進化論を駆使し
今まで読んだことのない人魚伝説を圧倒的なストーリーテリングで描く渾身作。
(「BOOK」データベースより)

ごくごく普通に生きてきたはずの自分が実は
人魚の末裔だったら。。。

岩井作品は映画だけで初めて文章で読みました。
予想よりもずっと読みやすい文章、引き込まれる展開。
かなり楽しんで読めました。
かなり調べてあるのかやけに科学的な表現が
がっつりきますが後半になるにつれ
幻想的であり、もしかしてこんな説が本当に
あってもいいのかもと思わせるくらい。
まぁ多少のつっこみどころや
あぁ、岩井作品(「ピクニック」とかね)にあったような
グロテスクな描写はありますが
それよりも先を読みたいと思わせます。
小説なのですが、言葉の流れ、会話のテンポは
やはりどこか映画にそのままなりそうな。
でも映像ではあまり見たくないな(苦笑)
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2007年 07月 20日 |
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スーパースターのような存在だった兄は
ある事故に巻き込まれ、自殺した。
誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後
内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。
僕も実家を離れ東京の大学に入った。
あとは、見つけてきたときに尻尾に
桜の花びらをつけていたことから「サクラ」と
なづけられた年老いた犬が一匹だけ——。
そんな一家の灯火が消えてしまいそうな
ある年の暮れのこと。
僕は、何かに衝き動かされるように
年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を
置き去りにして、実家に帰った。
「年末、家に帰ります。おとうさん」
僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に
微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていた——。
(出版社 / 著者からの内容紹介)

まったく予備知識ナシで読みました。

僕こと長谷川薫が年末年始に実家へ帰ることから
始まり自分の家族の回想へ続きます。
働き者で純粋な心を持ち、宇宙で一番幸せな男のお父さんと
キレイで明るくて優しくて太陽のようなお母さん。
かっこよくて性格も良くて人気者のお兄ちゃんと
誰もが振り返るような美人の妹。
そして女の子らしい犬のサクラ。

若くして手に入れたマイホーム、幸せを絵に描いたような
なんてお決まりの言葉以上に幸せな構図。

でも僕の文章からは、それが過去の出来事であることが、
ちらちらと見え隠れする不安定さ、いったいこの家族は
どうなっていくんだろう?と読むスピードがアップ。

そう、幸せな構図が完璧であるからこそ
兄の事故を境にやってくる闇に
より一層、胸に迫ってくる様々な苦しみ。
でもよく読んでいけば決定的な出来事が起こる前から
少しずつ狂って行く歯車、不協和音、
この人達の異様さはちゃんと表現されてる。
それが事故以来、どんどん表に出て来ているだけ。
口を動かさなければ生きていけないかのように
食べ続けて太っていく母、どんどんやせ細って
仕事もままならなくなっていく父。
決して報われない愛に捕われている妹。
父が家族を捨てて出て行ったように東京に出た僕。

そして再会後、サクラがまた家族をひとつにしてくれる。
けれどこの本は決して「犬頼み」だけの本じゃない。
けれど
このサクラがすごくいい。サクラの「お喋り」がいい。

犬を飼ったことのある人ならきっとわかる。
そう、犬ってあたしたちにお喋りしてる。

確かにこれは、泣ける人には泣ける本なのかもしれないけれど
あたしは泣く以上に、胸を突かれた気分。なのに
読後感はなんかほんわかして暖かい。
とても満たされた気分。

ほんと、すごくいい本だと思うし、本屋大賞ノミネートも
十分納得。
読ませたいと思う反面、万人受けではないかなぁとも
思いつつ。。。

事故にあった後のお兄ちゃんの言葉。
神様はきっといて、みんなの心の中に一人一人いて
ずっとボールを投げてきている、と。
今までずっと直球だけを自分は投げられていたけれど
今回、投げられたボールはもぅ「打たれへん」
悪送球ばかり投げてくる。
「う、打たれへん」と。

すごく辛い。
(そんなシーンでサクラがボールという言葉に反応するのもまた
読ませる!)

けれど僕は最後に気づく。神様はピッチャーなんかじゃなかったことに。
そうしてまたサクラのお喋りが始まる。

とんでもなく素敵なシーンです。ぜひ読んで欲しい。

お母さんが小学生だった妹のミキにセックスについて
話してあげるシーンも素敵。

以下、実際にコレから読まれる方は、本文で読んだ方が
絶対にいいので流してください(笑)


魔法を使ってミキの素をお父さんにもらう。
でもメルヘンな内容で誤摩化したりなんかしません。
汚い!というミキに、ちゃんとお父さんのおちんちん大好きよ、と
言える。どうやって?と聞かれたらミキが生まれるとき
通って来た道の入り口をお父さんがノックして
お母さんはお父さんが大好きだから、どうぞってドアを開ける。
互いに好きで魔法を出し合ったその時から
「ミキやのよ。」と。「ミキ生まれてきてくれて、有難う」
ミキは理解できなくても、自分が
「とても大切な儀式」を通じて生まれたことを感じて
満足する。やがてセックスについて詳しく知ったとき
「自分が途轍もない確率でこの世界に生まれてきたことが分かって
感嘆の叫び声をあげた。」



んー、すてきすぎ。子供が詳しく知った後、すごい!と感じられるような
親の説明。素敵です。
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2007年 07月 17日 |
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小学校六年生になった長男の僕の名前は二郎。
父の名前は一郎。誰が聞いても「変わってる」と言う。
父が会社員だったことはない。
物心ついたときからたいてい家にいる。
父親とはそういうものだと思っていたら、
小学生になって級友ができ、ほかの家は
そうではないらしいことを知った。
父はどうやら国が嫌いらしい。
むかし、過激派とかいうのをやっていて、
税金なんか払わない、無理して学校に行く必要などない
とかよく言っている。家族でどこかの南の島に
移住する計画を立てているようなのだが…。
型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いた、長編大傑作。

ここのところよく読んでる奥田作品。
もぅやっぱりこの人の作品はオモシロイです。
東京、中野と沖縄、西表島と一つの家族を
中心に舞台を南に移して描かれるので
それだけ登場人物は多いのに
その登場人物のキャラがしっかりと描かれて
文中に書かれていない場面でしっかりと「生きている」と
感じられる本は大好き。

一部は二郎の中野での生活を中心に。
中央線のアンダーグラウンドな小学生を
それはそれはリアルに描いていて
ちょっと母親目線で見たらコワイくらい(苦笑)
小学生をカモにする不良中学生相手に
悩む二郎の姿、ちょっと前まで泣けば済む立場だった自分から
大人なんて役にたたない世界で
友達と向かって行く姿は頼もしくすら。
二部は破天荒な父の意向で家族で向かった先は
沖縄、西表島。
ちなみに「サウスバンウンド」とは南に行くという意味。

二部ではもぅお父さん大活躍!元過激派という強烈なキャラクター
炸裂です。現実ではあり得ないけれどもしかしたら
アリかもしれないと思わせてしまうパワーは
伊良部先生にも感じましたが、この父親はそれ以上。
そして沖縄の人たちも、こんな感じなのでは?と思ってしまうほど。
田舎への移住は考えたことは無いけれど
いざ行ってしまえば二郎の姉のように
居着いてしまうかも。

一部だけでもお腹いっぱい、これだけで1冊できちゃうよ?と
思えるほど、詰め込み過ぎ感がないでもないけれど
そこまでしっかりと、東京での二郎の生活を
描いているからこそ、二部で沖縄に移ってからの生活のギャップが
しっかりといきており、また二郎が父親に対する感情も
深く伝わるし、また、家族の絆がしっかりと描かれています。

スピード感もあり考えさせる内容でもあり
十分に楽しめました。
今年の秋には映画公開なのね。
どこまでこの父の破天荒さ、家族の絆を映像で
伝えきれるか、ただのドタバタ劇になりませんように。
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2007年 07月 15日 |
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美丘、きみは覚えているだろうか。
ぼくときみがいっしょに暮らしはじめた八月。
あの夏の光と夜のやさしさを—。
残された命を見つめ、限りある生を全力が走り抜けた美丘。
彼女が生きたことの証として最期を見届ける太一。
奇跡のラストシーンに向かって魂を燃焼しつくした恋人たちを描く、号泣の物語。
(「BOOK」データベースより)

一切、予備知識なしで読みまして、ただの自由奔放な
女の子に惹かれて行く、優柔不断な男の子の恋愛話かと
思いきやとんだラブストーリーでした。
あたしはセカチューとか読んでませんが
きっと世の中、このテの話はお腹いっぱいかもしれません。

でも、あたしはもともと石田衣良の文章は好きだし
まぁちょっと流行や時代に媚びた感は確かにありますが
今の小説として読むとそれはそれで興味深いし
(数年後には読めないかも)
何よりあたし、ヨワイわ、このテのストーリー。
もぅ途中から涙ぼろぼろで大変、大変。

さてこの小説、いったいどこまでネタバレしていいんでしょうか?(笑)

まぁ紹介文を読んでの通り、主人公太一の彼女、美丘は
医原性の薬害ヤコブ病、脳外科の手術による感染。
いつ発症してもおかしくない状態。
詳しい症状についてはその説明すらこの本の読ませどころでも
あるのでいったん書いたものの削除。
だってその症状の説明だけで、今までの美丘の取った
行動の数々がすっと納得できるし
それゆえにまたせつないし読んでいて苦しい。

「愛情なんて、別にむずかしいことではまったくない。
相手の最期まで、ただいっしょにいればそれでいい。
それだけで、愛の最高の境地に達しているのだ。
ぼくたちはそれに気づかないから、いつまでも自分が
人を愛せる人間かどうか不安に感じるだけなのである。」

その境地まで行った二人の物語。

必死で自分自身でいようとした美丘。
たった一人、みんなよりも先に真実に気づいていた美丘。
命は火のついた導火線でためらっている余裕など
本来誰にもないということ。

いやぁ思いっきり泣いて気持ちよかった。
でもラストの1ページはちょっと陳腐。

というか、美丘はそんなお願い=約束をするような
愚かな人間とは思えなかったんだけどなぁ。
いかんですよ、その約束は(苦笑)
自分が本当に愛した相手を苦しませちゃいかんです。
残された相手の残りの人生を考えたら
それはあたしなら絶対に頼まないお願いごとだなぁ。
その病いに侵された故の最期を想像したら
そんな姿で生きていたくない気持ちはわかるけどね。

そーいう深みが足りずに安易に終わらせていいのか?と
ちょっと消化不良気味なところもありますが。。。
まぁ最後の選択が自分の意向に合わないというだけです。

読後、大泣きしてすっきりしたけれど後に残る感想は
石田衣良ってこーいう作品も書けるのかぁ、器用な作家さんだなぁ、と。。。
なんか一杯ヤラレタって感じがしないでもナイ(笑)

「奇跡のラストシーン」ってあるけれど全然奇跡じゃあないし
「魂を燃焼しつくした恋人たち」ってただエッチしまくりだし(苦笑)
あ、でもホント、途中からずーっと泣いてたんですよ、ええ。

でもまぁ勧めるかって言ったら、ご自由にってとこかなぁ。

(素敵表紙におおっ!と思ってこのモデルさん誰?と
名前を見てもわからなかったので、ぐぐってみたら
あーらそーいう方でしたか、という感じでした)
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2007年 07月 12日 |
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伊良部、離島に赴任する。そこは町長選挙の真っ最中で…。
「物事、死人が出なきゃ成功なのだ」
直木賞受賞作『空中ブランコ』から2年。
トンデモ精神科医の暴走ぶり健在。
(「BOOK」データベースより)

重い話の後には軽いモノ♪ということでまたまた伊良部先生です。
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に続き3作目。

今回も暴走しまくってますが暴走の度が過ぎてちょっと
そこまではどうなのよ?とつっこみたくもなりますが
そこは奥田英朗、うまく「興味」を向かせる手法を。

「オーナー」は、巨人の渡辺オーナー、ナベツネを
「アンポンマン」は、ライブドアの堀江貴文、ホリエモンを
そして「カリスマ稼業」黒木瞳をそれぞれに’パロディ’として
仕上げています。
いやいや、普通こんな扱いされたら怒るんじゃない?というような
「オーナー」のナベマンは、権力の座を得て一生現役で
いたいと願う故に死への恐怖が無意識のうちに高まり
暗所恐怖症、閉所恐怖症、挙げ句の果てにカメラの
フラッシュも恐くてパニック障害に、
「アンポンマン」の安保は極端に無駄を省くことを好み
合理化を求めるうちに、なんと「ひらがな」や簡単な名称すら
ど忘れしまくり、
「カリスマ家業」の白木カオルは40代なのに若いと
世間から賞賛されるうち老いに敏感になりすぎて強迫観念に
とらわれる。。。なんて書かれてもきっと
それぞれのモデルとなった人たちは苦笑いだけで
とても怒れないんじゃないかなぁと思うほど
この登場人物達はとても魅力的。
とても偏りすぎて、初めは、違和感があっても
みんなとても「真剣」でユーモラスで愛おしい。
こうるさく考えず、シンプルに楽しめる3作品。
(「カリスマ家業」に出てくるカオルのライバル
川村こと美や「アンポンマン」の熱血して相手を
怒らせることを目的としている司会者とか
脇役にもしっかりモデルがあるのがオモシロイ。)

そしてもぅ一編。タイトル作の「町長選挙」

これがもぅ面白いです。
あたしは離島暮らしは想像はつかないのですが
もしかしたらホントにこんな感じ?と思ってしまうほど。
いや、とんでもなさすぎて逆に、え?こんなのほんとにアリ?と
思ってしまう。
対立する候補者。そして島民すべてが見守る選挙。
自分の応援する候補者が町長となるかどうかで
自分の生活も180度変わってしまう極端さ。
漁業と農業。それぞれの都合のいい公約を掲げる。

東京から出向された東京生まれ東京育ちの良平は
両陣営から支持者になれと迫られ、脅され、金を掴まされ。。。
そして町営の診療所に2ヶ月だけの赴任されてきたのが伊良部。
相変わらずの子供っぷり大爆発。

「どっちも同じ(公約)なら実現せん。うちだけ、という公約から
先に着手するのが政治家じゃ。同じなら永遠に後回しなんじゃ」

「この千寿は過疎の島じゃ。資源もなく、財源も乏しく、
普通なら全員が貧乏じゃ。でもな、曲がりなりにもインフラが
整備された文化生活を送れるのは選挙があるからなんじゃ。
無風選挙なら町長は何もせん。役場もらくをする。
数票差でひっくり返る宿敵がおるから、死に物狂いで
公共事業を引っ張ってくるんじゃ。」
「生まれたときから当然のように病院や学校がある東京者には
わからん」

はぁ〜〜〜〜。そのとおりかも、と思ってしまった。
そして島民すべてが島を愛しているという事実。
不覚にも最後の「決戦」では涙がじわーん。

おもしろいよー、伊良部。ドラマや映画に惑わされず
ぜひ原作かるーく楽しんでみて欲しいです。
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2007年 07月 09日 |
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強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。
弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。
しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せを
つかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が
立ちはだかる苛酷な現実。
人の絆とは何か。
いつか罪は償えるのだろうか。
犯罪加害者の家族を真正面から描き切り
感動を呼んだ不朽の名作。
(「BOOK」データベースより)

映画化もされてかなり経ち、今更?な感もありますが
読んでみました。
周りの評判もよく、あー泣けるのね〜程度で
読んでいたのですが。。。
なかなか泣けないんだな、これが。
加害者の家族を描いたものなら「疾走」とか「うつくしい子供」など
読んだけれど、悲壮感と壮絶さなら断然「疾走」のが
突き抜けているし、純粋さや透明感を持ったまっすぐな心地よさなら
「うつくしい子供」のが印象的だったし
さらに言えば兄弟ではなく親だけれど
「世界の終わり、あるいは始まり」なんて
加害者の親としてどうなってしまうかの状態が次から次からと
表現(笑)されているし(うっかりここで○オチと言いそうになりました)
まぁ加害者の家族はこんなもんよね、とさらっと読み進めていたのですが。。。

やられましたよ。さすが東野。人気のある作品だけあります。

主人公の直貴は兄の剛志の犯した強盗殺人という罪ゆえ
人生を狂わされたが、その犯罪に走ったもとはといえば
直貴の大学受験のためお金が欲しかったから、だった。
それゆえに兄を疎ましく思いながらも捨てきれない。
獄中から毎月届く兄からの手紙。
強盗殺人犯の弟として、世間で生きて行くことの重さ。

直貴の勤め先の社長の言葉。
「我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。
自分が罪を犯せば家族を苦しめることになるーすべての
犯罪者にそう思い知らせるためにもね」
これはある意味、正しいと思う。
そして、そんな彼に対して露骨に(差別を)態度で示すことを
道徳に反すると思い必要以上に気を使ってしまう「周囲」に
対しての反応の見方もまったくもって
その通りだと。

この本は読んでる人にその選択を迫るかのように
問うのです。その答えはもちろん一つではなく。

そんな重いテーマを突き付けてじっくり真実味を持って
読者の前に立ちはだかりながら
最後には。。。やってくれます。

兄の手紙、そして弟の行動。
ジョン・レノンの「イマジン」が読みながら頭の中に響き渡り
そして涙が止まりませんでした。いやぁかなり好きです。このラスト。
未読の方、ぜひ読んでください。
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2007年 07月 08日 |
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永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは三十年前の風景。
ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。
さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で
精力的に商いに励む父に出会う。
だが封印された“過去”に行ったため…。
思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。
吉川英治文学新人賞に輝く名作。
(「BOOK」データベースより)

単純に過去に行ってしまうタイムスリップな話と
思いきや父親と自分との関係、親の過去を知ることで
得る自己探しの旅って感じでしょうか。
それにしても「みち子」の存在はとてもせつない〜。
ラスト、え?そうなの?それでいいの?と
何度も読み返してしまいましたよ。

あたし的にはピカレスク小説としての浅田作品が好きなので
ちょっともの足りなさも。。。まぁあとは「壬生義士伝」とかね。

こんなシンプル=単純でいいの?と問いつめたくなる一方
いや、浅田作品のいいとこってそのシンプルさよね、と
思い直したり。
戦前・戦中・戦後の混乱期などの様子が描かれた部分は
本当に活き活きとしていてそちらメインの話のが読みたいかな。
お時さんなんてかっこいいじゃないですか、んも。

かろうじて丸ノ内線の「暗くなる瞬間」を知っているので
妙な既視感をもって読めましたが。。。
ちょうど上手く、ここ最近の「昭和ブーム」に乗ったなぁ、と。

そいえばタイムスリップしてしまう地下鉄について
読んでる間何もつっこみを感じないですんなり受け入れてしまえたのは
やっぱり浅田マジックなのでしょうかね(苦笑)
ファンタジーのにおいのしないファンタジーみたいな。
「困ったときの幽霊頼み」な?(笑)
まぁ今回は幽霊ではないですけどね。

映画もぜひ見てみたいと思えた作品。映画化に
ぴったりって感じ。
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2007年 07月 07日 |
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人は一遍は死ぬけん、怖がることないきに—鰹船に乗り
命を張って富を求めようと少年は水平線を見据える。
土佐・中ノ浜の貧家に生まれた彼が歩むことになる
破天荒な人生を、このとき誰が予想しただろうか。
時化の海での遭難、無人島漂着、捕鯨船による救出
そして異郷アメリカでの生活…時代を越えて
記憶され続ける“ジョン万次郎”の壮大なドラマが今、始まろうとしている。
(「BOOK」データベースより)

時代小説は好きですが歴史小説は久々。
たまたま上司に「いいよ」と勧められ読んでみました。
いやぁ。感慨深い。

それまでジョン・万次郎=居酒屋チェーン店でしか
なかったんですけどね(苦笑)

1827年土佐・中ノ浜に生まれ、奉公先での扱いに耐えかねて飛び出し
ずっと憧れた鰹漁の船に炊夫として乗ったものの
2日後に嵐で遭難し無人島(現在の鳥島)へ流される。
飢えと乾きと寒さに耐え、島で生き延び、143日後
アメリカの捕鯨船「ジョン=ハウランド号」に救助される。
時代はまだ鎖国中の日本。海外の船が日本に近寄ることもできない時代。
彼らはホノルルへと上陸し保護を依頼。
その中でも特に万次郎は献身的に働き、英語にも
興味を持ち、その態度に感銘をうけた船長ホイットフィールドは
万次郎をアメリカへ連れて行く。

アメリカでホイットフィールドの養子となった万次郎は
名門・バートレット校の試験にも合格、航海士としての知識を蓄える。
「わえがメリケで口すぎしてゆくにゃ、メリケの役に立つよりほかには
ないけん、勉強せにゃあかんぜよ」

仲のいい友達、ガールフレンドもでき学校も主席で卒業。
後にキャサリンとは結婚し1846年には捕鯨船「フランクリン号」に
乗りこみ3年の航海へ。
ところが航海から戻り知らされたのは妻の死。

絶望した万次郎は日本で待つ家族に会いたいという思いに駆られる。
ホイットフィールドが万次郎の才能を買い
一等航海士として今後も活躍して欲しい、今、日本に帰っても
異国の回し者と見られて首を切られかねないと伝えても万次郎は
「ここで暮らすほうがなんぼええか分からんでのーし。
ここは極楽ですらあ。ほんじゃけんど、ユナイッシテイトは
わえの国ではありませんろうが。
わえは殺されてもおのれの生まれた国で死にたいわのーし」
そして万次郎は帰国の為、ホノルルに残した仲間の分の費用も得るため
当時ゴールドラッシュに湧いたカリフォルニアに渡る。


と、こんな感じなのですが万次郎の簡単な経略は
こちらのサイトがとても詳しいです。

母親への思慕、家に戻りたいという思い、その為に努力を重ね
戻ったところで幕末の日本の彼への扱いは
まだまだ差別のある飛んでもない時代。

日本の近代化に尽力したにもかかわらずアメリカの文化に
慣れ親しんだ万次郎には風通しの悪い封建社会は
とても居心地の悪い世界。
それでも母に、自分の生まれた地への思いの強さ。

漁師でありながら武士へと出世した万次郎の賢さ、勤勉さ
実直さがとても心地よく、また
遭難から海外での生活、帰国後の生活とどのシーンも
とても興味深い。
何より万次郎のお国言葉がとても生き生きとしていて
物語りの中に惹き込まれます。

上下巻と長いのですが、長さを感じさせない魅力的な話で
あるとともに、長いゆえに、物語が終わりに近づくにつれ
万次郎との「別れ」を寂しく感じた本。

彼は日本に帰ってきて本当に幸せだったのかな、とか
アメリカにそのまま残った方がよかったのでは、とか
でも、ペリー来航で慌てふためいていた幕府に
万次郎の帰国は、日本にとっては幸運だったんだろうな、とか。。。
たった一人の人間の行動一つでその後の時代が
まったく変わっていたと思うとそれまた凄いことで。。。

またぜひ再読したいです。
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