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2007年 09月 30日 |
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深夜、十六歳の少女の部屋に男が侵入、母親に猟銃で撃たれた。男は十七年前に少女と結ばれる夢を見たという。天才科学者湯川の推理
(出版社/著者からの内容紹介より)

「探偵ガリレオ」シリーズ2作目。帝都大学理工学部物理学科助教授、探偵ガリレオこと湯川学が、摩訶不思議な事件を論理的に解決していく、本格推理短編集。

今回はよりオカルト色が強くなってるような。
幽霊見たら枯れ柳では済まないような複雑な偶然や
計算されつくしたトリック。シンプルに楽しめる1冊。
シリーズ化にはもってこいなのだけれど化学で説明のつくネタが
どれだけ「かぶらずに」続くか、といった感じ?
短編なだけにさらりと読み過ごしてしまい、人と人の深い絡みや
内面、内側の深さは次回作の長編「容疑者Xの献身」で解決されてるのかな。

第一章:「夢想る(ゆめみる)」
16歳の少女の部屋に忍び込んだ男とそれを見つけ猟銃を発砲した母親。
犯人は小学校時代から、その少女が産まれる前から、既に少女の名前を書き記し
恋していた。

第二章:「霊視る(みえる)」
いるはずのない恋人の姿を見かけたとき、その恋人は離れた場所で殺されていた。

第三章:「騒霊ぐ(さわぐ)」
理由もわからず失踪した夫が最後に立ち寄ったと思われる老婆の家。同じ日、
老婆は死んでおり、その家からはポルターガイストと思われる怪音や怪現象が。

第四章:「絞殺る(しめる)」
借金を返してもらえる、と待ち合わせ場所に向かった零細企業の社長。しかし
死体で発見された。その娘は深夜、父親の生前、父親の周りで火の玉を見た、と。

第五章:「予知る(しる)」
不倫相手が向かいのマンションに超して来た。そしてマンションから見える場所で
首つり自殺を計る。しかし、隣の部屋の少女は、その様子を数日前に見ていた。
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2007年 09月 27日 |
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26才スナック勤務の「あたし」と
おなかに「俺の国」地図を彫っている4才年下の
ダメ系学生風間くんとペット亀の「バタ」の
ほわほわ脱力気味の同棲生活から一転
あたしはリセットボタンを押すように
気がつけばひとり深夜長野の森にいた。
人っ子一人いない、真っ暗闇の世界のなかで
自分のちっぽけな存在を消そうと幽体離脱を試みたり
すべてと対峙するかのように大の字になって
寝っころんだりしていたあたしの目に、ふと飛び込んできた
うす青色の野生の花。その瞬間、彼女のなかでなにかが氷解した——。
ゆるゆるなのにギリギリなデイズ。
そこで見つけた、ちっぽけな奇蹟。
あンたのことが好きすぎるのよ。
今世紀の女子文学に愛の一閃を穿つデビュー作。
(出版社 / 著者からの内容紹介)

気がついたらあたしは、真っ暗な山の中で大の字になっていた。しかも、深夜。ひとりぼっちで—。
(「BOOK」データベースより)

いやぁ、好きだわ、西加奈子。
関西弁がなんて心地よい。
3話収録されてますがどの話もパンク!
そう西加奈子はパンクだと想う。

最初はとても詩的な文章から始まります。
果たしてこの話は?と読み進めると
そこは関西弁のキャッチボール。
会話と感覚で綴られる世界。

どんなに言葉の少ない人でもその人の頭の中は
言葉で広がっている。
会話が少ないから、話したことが少ないから、
接する時間が短すぎるから、と相手の言葉を
たくさん受けてないがゆえに「変な人」と
思われてしまう人もこの世にはたくさんいて
でもその人の内側も実はこれくらい言葉が
浮かんでいて、そして、それがすべてこの本の中身のように
読み取ることができたら
きっとそこに表れる感情は親近感以外なにものでもない。

はっきり言ってそんな平和な「お話」なんかじゃないです。
レイプされた女の子がどんな大人になるか
それは別に劇的なヒロインぶった涙、涙の話ではないだけに
もっと痛々しい。

主人公のさっちゃんが本屋で見つけて気になった
女の子みいちゃんの存在もいい味出してます。

ネタバレすりゃあ、主人公が妊娠したけれど
その相手はダメ男な彼氏ででも大好きで
でもどうしていいかわからないで距離を置こうとしたけれど
それも面倒くさくなりなんだかんだで
もとに戻るってだけの話なんですけどね。
そこじゃないんですよ。
人生で一番頑張った夜(といってもそれはすべて
冷静にみりゃ自業自得なんだけれど)
でもその夜、相方が初めて見せた「必死」
なんかそれはとてもあたしには劇的で
涙が出そうなほどだった。

好き嫌いのわかれる作家さんだと思いますが
あたしはこの「空気」大好きなんです。

短編集っていうのかな。
他に収録されている「サムのこと」
これもすごいですよ〜。
もぅ登場人物がパンク。

主人公はホモで、モモは彼氏の家に転がり込んでは
別れてまた違う男の家に転がり込む生活をしてるし
スミはレコード家で働いてたまにDJなんかして
もてるから女の子達に電話番号聞かれて断るのが
面倒で教えてでも出るのが面倒になって携帯を
変えるような奴だし、ハスは人とは違うところ、人に
理解されにくいところでえらいナーバス、その恋人の
キムは在日朝鮮人で16歳で家出、めちゃくちゃ
可愛いのにモモと同様、人の悪口ばかり、口癖は
「うっとーし」
僕らの共通点は面倒くさがりとプロレス好き。
そしてもぅ一人、サムはウェブデザイナー。
そのサムのお葬式。
トラックに撥ねられたサム。
サムのおかげで普段、話さない胸の内を
語り合う通夜の席。
そして僕らの日常はまた淡々と続いていく。

パンクだわ〜〜〜〜。

「空心町深夜2時」はもぅ独り語りで
めちゃくちゃ短編ですが読み終わった後は
(これまた関西弁のせいか)まるで別世界から
ふっと帰って来たような錯覚すらおこさせます。

西加奈子の描く世界、とても新鮮で心地よい空間
ぜひ体感してみてください。
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2007年 09月 24日 |
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突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、
池に浮んだデスマスク、幽体離脱した少年…
警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない難事件にぶつかったとき、
必ず訪ねる友人がいる。
帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学。
常識を超えた謎に天才科学者が挑む、連作ミステリーのシリーズ第一作。
(「BOOK」データベースより)

いやぁ月9でやるってんで慌てて読みました(笑)
だって映像よりも本を先に楽しみたいもの。
でもすっかり湯川=福山くんで読んじゃいましたが。

連作短編集で、どれもみな怪談話?と思えるような
不可思議な事件ばかり。
その事件をすべて科学的に立証し解決していくのです。
まるで小説版でんじろうのよう(苦笑)

「燃える(もえる)」
真夜中の住宅街、騒音をまき散らす若者の集団
ある日突然、そのうちの一人の頭が燃えて死亡。
その火元は?原因は?

「転写る(うつる)」
中学校の文化祭、展示されていたデスマスクは
本物のデスマスクだった。池に捨てられた死体が
作り出した謎。

「壊死る(くさる)」
借金をする女と付きまとう男たち。
その一人が入浴中に心臓発作で死亡。しかし
その左胸の一部分は壊死していた。

「爆ぜる(はぜる)」
突然、海で爆死した女性と
真夏にアパートで殺され腐敗した男性。
その二つの事件は繋がるのか。

「離脱る(ぬける)」
独身者向けマンションで死亡していた女性。
アリバイを証明したのは幽体離脱した少年が
描いた風景だった。

科学を題材としたミステリー。
おもしろいですよ。軽く読める。
解説を読むと作者は湯川のモデルとして
佐野史郎を考えていたようですがやっぱその方が
ぴったりくるかな?
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2007年 09月 21日 |
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運命の糸に操られた男と女、京の闇に死の衣をまとう者たちがさまよう。浅田版新選組。
(「BOOK」データベースより)

輪違屋とは京・島原の芸妓置屋、糸里はその輪違屋にいる芸妓です。
島原の芸奴は花魁とは違って、小さな頃から
芸や島原のしきたりを厳しく教え込まれるのです。
それは禿(かむろ)から始まり、半夜(はんや)、鹿恋(かこい)、天神(てんじん)
そして太夫(たゆう=こったい)となっていくのです。
太夫は朝廷から正五位の位(大名と同格)を授けられています。

タイトルにもなっている糸里は天神。
時は文久3年8月、壬生浪士組は芹沢鴨と近藤勇との
派閥争いをしていた頃。糸里は土方を慕っていたが
糸里が禿の頃から芸事を教えてくれ姉のような
存在であった音羽太夫が芹沢に殺された。
「だぁれも恨むでない、恩だけを胸に刻め」と
糸里に遺した言葉。

糸里、そして芹沢鴨の愛人であり西陣の太物問屋菱屋の妾のお梅
新撰組の屯所となった八木家の妻、おまさ
菱屋の長女で八木家の分家に嫁いだお勝、平山五郎の恋人で
島原、桔梗屋の天神、吉栄
こうした女性たちが見た「新撰組」

芹沢鴨暗殺と芹沢鴨の新しい解釈。

これは面白いです。

はっきりいって今まで読んだものから
芹沢にいい印象は持ってませんでした。巨漢で乱暴者の酒乱
そんな感じ。

ところがこの話では芹沢が自分自身に
課していたもの、そして芹沢の寂しさが
そして近藤、土方、沖田といった百姓、足軽あがりに
対しての武士として語られています。
芹沢の思いを理解するものとして傍にいるのが
愛人のお梅なのですが、このお梅がカッコイイ。
京女に対しての江戸の莫連(ばくれん)女
すれっからしと周りから評されながらも
お飾りのような女房を追い出し
潰れそうな菱屋を切り盛りしていたのですが
もぅその生きっぷり、いいねぇ〜。

一番泣かされたのは吉栄ですが。
愛する男の子を身ごもりながらも
芹沢暗殺の際に平山五郎も一緒に殺す計画に
加担せねばならない吉栄がお腹の子供に語りかけるのです。

かんにんえ。
おかあちゃんは阿呆やさけ、むつかしいことは
何一つ考えられへんのや。
おかあちゃんは、おまえを殺す。おなごの夢を叶えるために、
おまえを殺す。鬼やろ。そやけど鬼にならな、夢は叶えられへん。
それにしてもきっつい話やなあ。
おまえばかりのうて、おとうちゃんまで殺せえて土方はんは言わはる。
かんにんえ。
おかあちゃん、おとろしうてかなん。もしお断りしたら
おかあちゃんは土方はんに殺されてしまうがな。

もうこれだけで泣ける。

この話、語り手が、がんがん変わるんですよ。
土方が語るときは、土方がいかに田舎から出て来て
どんな扱いを受けたか、いかに武士になろうかと
強く心に思ったかが語られ
その間は、すっかり土方に思い入れし
沖田が語れば、沖田に心中を思い
永倉が語れば、そのまっすぐな気質に正義を見いだし
芹沢が語ればその内側のせつなさに
きゅんっとやられちゃう。

本当に悪い人なんか誰一人いない。
浅田節全開な話です。
どうぞ読んでみてください。

まぁ泣けたといえばやっぱり「壬生義士伝」ですけどね
これもめっさおすすめです。

*ドラマ化、HDDに録画してまだ見てません。さてさてどんな出来やら?
糸里はよしとしてもできればお梅は違う人にやってほしかったなぁ〜と。。。
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2007年 09月 10日 |
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阪口健太、通称ピスケン。敵対する組の親分を殺り
13年刑務所で過ごす。
大河原勲、通称軍曹。湾岸派兵に断固反対し
単身クーデターを起こした挙句、自殺未遂。
広橋秀彦、通称ヒデさん。収賄事件の罪を被り
大物議員に捨てられた元政治家秘書。
あまりに個性的で価値観もバラバラな3人が、何の因果か徒党を組んで彼らを欺いた巨悪に挑む!悪漢小説の金字塔。
(「BOOK」データベースより)

まるで映画のようなと表現する本はいままで結構あるけれど
これは。。。なんていうんだろう?(苦笑)
コミックス的?んー、でもコミックスならここまで情や義を
感じるのはそうそうないかな?文字ならではの「笑い」
(でもコミックス化もされてるようで。。。絵が趣味ではないので
読みませんが)
残念なことにちょっとこーいう気分ではなかったので
笑いきれなかったかなぁ。
確かに浅田作品にあるピカレスクもの、やくざの世界や
仁義を描いた小説は好きだけれど
ちょっと。。。言葉がやたらとかぶったり予定調和が多過ぎで
笑えないお笑いを見てる気分。
あー、このノリな気分のときに読んだらきっと最高だったかも。
残念。
浅田の任侠ものならもぅ少し泣けるほうがよかったかなぁ、とか。

また気分が向いたら続きを読もうと思います(全3巻)
そのときはもぅ気が乗っちゃって書きまくるかも(笑)
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2007年 09月 08日 |
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『さくら』『きいろいゾウ』の西加奈子、待望の最新刊は初めて
の短編集!
・・・・・・・・・・・・・・
そうか、あなたがいたんだ。

迷っても、つまずいても、泣きそうでも。
人生って、そう悪くない
・・・・・・・・・・・・・・
少し笑えて、結構泣ける、「女どうし」を描く六つの物語
(出版社/著者からの内容紹介より)

読んでいて、気づくと少し元気になっている、そんな本です。
大きな事件も、びっくりするような奇跡も起こりません。
それでも、読み終えた後には、心の凝りがほぐれたような、
あたたかい気持ちになれました。
どうかひとりでも多くの方が、この本と出会ってくれますように。
心からそう願っています。
(出版社からのコメントより)

あ〜〜〜〜。いい本読んだ。
そう本を閉じることのできる本。

「ランドセル」
久しぶりにあった幼なじみとの海外旅行。
「灰皿」
老婦人が一人で住むには大きすぎる家、貸した相手は
小説家である若い女の子。
「木蓮」
大好きな、結婚したい彼はバツイチ。
その彼の7歳の娘を1日預かることになった30女。
「影」
人に対して自分を偽る女と旅先で出会った
うそつきな女の子。
「しずく」
仲のいい夫婦とその互いの猫2匹の会話。
「シャワーキャップ」
几帳面なあたしと雑で、乙女のような心を持った母。

とくに猫を通してみる一作「しずく」が好き。
泣けたな〜。
すごくせつない。
愛し合っていた二人。仕事が忙しくなりそして
二人の取った決断と何も知らない猫たち。
猫たちの喧嘩の様子がすごくカワイイゆえに
また一段とせつない。

そうそう「木蓮」、いいねー、これも。
好きで好きで、と思っていた恋人、彼に好かれたい
だからこそ、このくそ生意気な7歳のガキに
邪魔されたくない。いいように彼に言ってほしい
そう思えば思うほど、ガキはかわいくない言動ばかり。
子供なんて大嫌い。
そんな彼女が、自分の心の内側に気づいてからの
子供との会話、とてもいいです。

「シャワーキャップ」大好き。
自分も娘として、最後の気持ち、とてもわかる。
なんとも言えない安心感。
’お母さん’の大丈夫という言葉。
お嬢さん育ちで頼りなくて、無邪気で、まるで
悩みなんてないかのような母と几帳面すぎる主人公。
短編ならではの味。

久しぶりに短編集のよさをじっくり楽しみました。

一日で読めるのですが何度でも読み返したいと思える一冊。
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2007年 09月 08日 |
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不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や
取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。
銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。
和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。
無縁だった三人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて
転がり始める。比類なき犯罪小説。

小説のタイトル通り、それはそれは「最悪」な状態。
何気ない日常。取り立てて魅力的な登場人物でもなく
本当にどこにでもいそうな、それぞれの立場の人たちが
「自分は悪くない」という考え(それは誰でも同じように
自分に感じていること)からどんどん「最悪」な事態に。

どうして?なんで自分がこんな目に?と思うような出来事
それをこの本はこの厚みとスピード感を持って
その「ずれ」を見事に書いてます。
だってそれじゃだめだろ?と真面目なはずの女子行員にすら
思ってしまうほど納得がいってしまう。

描き方は、読んでいてずっと「絵」が浮かぶほどで
それゆえにまた読みやすい。
感情移入できそうもない立場の登場人物ですら
ついついその中に入り込んでいる自分に気づきます。
そして。。。読んでいてこちらまで「最悪」な
ずと〜〜〜〜んと落ちるような感覚に(苦笑)

どうなっちゃうの?!という最悪な状態がどう落ちをつけてくれるのか
もぅどんどん読めちゃう本です。この厚さなのにまったく
だれない、スピード感が落ちない、これはすごいなぁ。

一番読んでてむかついたのは零細企業の社長相手に
理屈をこねまわすマンション住人ですかね〜。
あたしも殴りそう(苦笑)
ってな感じに話にはいっちゃってます。

暴力シーンは結構グロいのでお気をつけて。
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2007年 09月 05日 |
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北関東新聞の古参記者、悠木和雅は、同僚の
元クライマー、安西に誘われ谷川岳に屹立する衝立岩に
挑む予定だったが、出発日の夜、御巣鷹山で
墜落事故が発生し、約束を果たせなくなる。
一人で出発したはずの安西もまた、山とは無関係の
歓楽街で倒れ、意識が戻らない。
「下りるために登るんさ」という謎の言葉を残したまま—。
未曾有の巨大事故。社内の確執。親子関係の苦悩…。
事故の全権デスクを命じられた悠木は、二つの「魔の山」の狭間で
じりじりと追い詰められていく。
(「BOOK」データベースより)

横山秀夫というと警察小説、社会派ミステリーといった
イメージ。それもそのはずもともとこの方、上毛新聞の記者だそうで。
そして実際に御巣鷹山日航機墜落事故取材を体験した一人。
——記録でも記憶でもないものを書くために、18年の歳月が必要だった。
とは著者の弁。

「沈まぬ太陽」が日航という組織を奥底まで調べ尽くし
書き上げたものに対して、こちらは新聞社という組織を
描ききっています。

地方新聞の一筋縄ではゆかない、どこか壊れ、異様とすら
思える人間関係はとてもリアル。そして
明日の記事のために、印刷にまわすその瞬間までの臨場感。
トップ記事に何を持ってくるかで政治的な絡みや社内の
派閥抗争があったり、記者としての社員、営業としての社員
それぞれの課ごとの牽制、男同士の仕事の上で嫉妬、
実にありそうと思えることばかり。

そしてベタとも思えるラストにひたすら涙。

確かに事故後に発見された遺書にまた涙したけれど
社内においての主人公悠木の生き様。
そして親子関係。

あえてこの小説で書かれていないのが
事故そのものの陰惨さ。
事故はたしかに「大きなもの」と位置づけられていますが
けっしてそこがメインではなく。

正直、これでいいの?と思うことがありました。
だってあの大事故だよ?それをテーマにした本じゃないの?
なのに同僚の容態を気にかけたりするシーンとかいる?
この登山の「現代」のシーンを差し込む必要あるのかなー。
なんか話がぶれてない?と。

ぶれてないんです。

そのシーンがあるからこそ、より「人の命」あの女子大生が
伝えたかったことが伝わる。
あたし自身、読んでいて人の命の重さ、軽さを
こうしてわけているんだ、と。

日航機の事故を扱いながらその事故に関わった新聞記者の
生き様を通してとても大切なことを訴えかけている。
決して読んで損のない作品というか
ぜひ読んで感じてほしい。

わずか7日間、そしてそこから17年の月日。
とても濃厚な読み応えのある本。
難しいテーマだし、はっきりいって出てくる人出てくる人
みんな影を持っている。抗えない様々な事情も絡み合う。
いったいどうなるんだ?と読む手は進むばかり。
そこに開かれる爽快とも思えるラスト。
読後がとてもよいです。
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2007年 09月 02日 |
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私はおとうさんにユウカイ(キッドナップ)された!
私の夏休みはどうなっちゃうの!?
五年生の夏休みの第一日目
私はユウカイ(=キッドナップ)された。
犯人は二か月前から家にいなくなっていたおとうさん。
だらしなくて、情けなくて、お金もない。
そんなおとうさんに連れ出されて、私の夏休みは一体どうなっちゃうの? 
海水浴に肝試し、キャンプに自転車泥棒。
ちょっとクールな女の子ハルと、ろくでもない父親の
ひと夏のユウカイ旅行。私たちのための夏休み小説。
(出版社/著者からの内容紹介)


(本の内容ゆえちょいネタバレあるので注意)


あたしが読みたくて。。。な本だけれど今、息子にも
読ませています。
小学生でも読める文字の大きさと行間@単行本

夏休みの第一日目、私はユウカイされた。
この一行から始まる物語。え?っとさせられ
何?何?どうしたの?え?別居中のお父さんが犯人?
それも合意の上で「逃避旅行」を初めて。。。どうなるの?
と、「?」だらけで始まり、どんどん引き込まれる。

普通に夏休みを送っていたら
決して体験することのないような数々の体験。
というか、普通の保護者の庇護のもとなら、ということ。

頼りない情けないそしてお金もない父との行動は
貧乏で常識はずれで、初めはそれを嫌がり
逃げ出すことをも考える主人公、ハル。
でもその「異様さ」を子供ながらに感じ取り
その「異様さ」を冒険心から彼女自身「ひきこまれていく」。
いつでも帰れるし?という安心を心に持ちながら。

海や山(その先には幽霊話のある旅館)や
キャンプ(でもテントはゴミ箱から調達)などなど
子供にとって魅力的な場所でありながら
「普通」とまったく異なる体験。
父親に怒りすら感じるハル。

ところがだんだんそれが彼女にとって
快感に変わって行く。楽しいもの、おもしろいもの
心地よいもの、そして本来こぅあってもよかったのではないかと
感じる自分自身の変化。
普段絶対に選ばない服や水着、焼けた肌
薄汚れた自分。

そんな変化をもたらした父親に徐々に
惹かれていく。

この本はずっと一環して子供目線。
主人公のハルの言葉。
だから、父親が何故、娘を誘拐しなければならないのか?
母親との交渉の内容はなんなのか?
そういった「?」には何一つ答えてくれません。
あくまで父親と子供の関係性だけに焦点が当てられ
そして、親の都合で振り回される子供という
絶対的な条件は現実もこの小説の中も不変。

確かに、その「?」を解消されず消化不良を
感じるかもしれないけれどあたしは十分これでいいと思った。
ここで終わらなくちゃ。
だってこれは子供目線の話だから。
後はハル自身がこの後いろいろと想像するように
そして多分、ハルが大人になってからではないと
明かされないように、読む側も本を閉じた後
あれはなんだったんだろう?どんな理由があったんだろう?と
考える余韻を与えてくれる、とても心地よい終わり方だと思う。

作者の言いたいことはきっとそんな「説明」や「理由」ではないはずだから。

自分も親として、子供の視線をもっとありのまま
受けてもいいかなとちょっと免罪符的にも考えたり。
ありのままの自分を見せて、子供自身が理解していけばいい。
尊敬できない親であっても。
まぁそれはそれでなかなか難しいことなのだけれど。

一日で読めるステキおすすめ本です。
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