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2008年 01月 29日 |
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「奇妙な殺人事件は、奇妙な構造の館で起こるのが定説です」
三星館と名づけられた西洋館の主は
四人の招待客にある提案をした。
それぞれが殺人者、被害者、探偵役になって行なう
“殺人トリック・ゲーム”である。
そして今、百数十年前にイギリスで起こった事件が再現される!
時空を超えて幽霊のごとく立ち現われる奇怪な現象、謎
さらに最後の惨劇とは。
(「BOOK」データベースより)

中編だとは思いますがなんせ薄い、153ページ。
数時間で読み終わります。
たぶんミステリ好き、本格好きさんは出てくる固有名詞すべてに
反応できてそこもまた楽しめるのでしょうね。
館を使ったトリック、そこに夢を抱くマニアには
きっと同調するところが多いのではないかと。
ただあたしはさほど詳しくないミステリファンなため
まず人物にさほど思い入れがわかず。
人物の区分けすらあやしくなる始末。
あくまで「トリック」ものとしてだけ読み進め
あたしの貧困なアタマがそのトリックを理解する前に
読む手がどんどん進んでしまい、あら、そうだったんだ?みたいな(苦笑)
ダメじゃん(苦笑)自分。
歌野お得意の叙情詩トリックではなくあくまで館トリック。

どうせならもぅ少し長くしてじっくり人物設定もされた上で
味わいある作品として楽しみたかった気がしないでもないけれど
作者はあくまでこのトリックそのものをメインに
書きたかったのかなと思うとこれはこれで正解なんでしょうかね。

じっくりその謎を自分で解くくらいの、作者と対決するくらいの
意気込みで読まないといけなかったようです(笑)
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2008年 01月 29日 |
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ぼくたち夫婦は引っ越し運が悪い。
今回の新居は完璧、だったはずなのに…
ディンクスの夫婦は互いにぶつかりながら
隣家とまじわりながら、共に生きることを確かめあっていく。
四季折々に紡がれた連作短篇『となりの花園』を縦糸に
いとおしい毎日のくらしを横糸に
カラフルに織りあげた12の物語集。
(「BOOK」データベースより)

短編集?あれ?連作短編集?でもまた違う短編が。。。と
読み進めるうち、すっかり読者はこの「リビング」という四季を
巡る様々な生き様、生き方にはまっていきます。

「婦人公論」に1年間連載されたもので作者自身で決めたルールが
特集と連動した短編小説、というものらしいのですが
それをリアルタイムで読めたらもっと面白かったかもしれない。
まぁ十分この一冊でも重松節楽しめますけどね。
。。。重松節というにはちょっとヨワイかな?

それでも十分、家族、夫婦をテーマに日常を書かせるとやっぱり巧い。
些細な不安、心の揺れ、そして思いやる気持ちとすれ違う思い。
泣ける重松というより、まったりできる重松作品。
そろそろ重いのも読みたい気分ですがこんな作風もやっぱり好きです。
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2008年 01月 26日 |
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真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。
気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから目覚める自分がいた。
3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。
が、この世界には真希一人のほか誰もいなかった。
そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると
一日前の座椅子に戻ってしまう。
いつかは帰れるの?それともこのまま…
だが、150日を過ぎた午後、突然、電話が鳴った。
(「BOOK」データベースより)

面白かった〜。うん。これは面白い。はまりました。
二人称で始まるこの話。
初めは「主人公へのインタビュー」的な感じで
徐々にこの主人公の人となり、人間関係がわかっていき
そしてその主人公の置かれた状態が明らかになり
もぅその頃にはすっかり話の中に。
うまい。

そしてその設定。いつもいつも同じ時間の中だけを
ひたすら繰り返す。
空想が広がりますね。もし自分なら。。。と。
そこからして「面白い話」だと思います。
どうします?世界に一人だけ。
そして、自分はどうなるのか、元の世界に戻れるのかという
不安。何をしても何を作っても無になってしまう恐さ、空しさ。
ちょっとした「感想」すら人に伝える、こぅなのよ、そぅなんだ、という
会話のない世界、一人だけの世界。

この話の中で、わ?と思ったのが主人公、ちゃんと
お金を払うのです。何を買っても。
人の家に勝手にあがることもなく(ゴミが腐ってしまう!と
考え仕方なく「処分」しにあがるという自分で理由が
あるときのみ、ね)ちゃんと、世の中のルールを守るのです。
もちろん「くるりん」して前日に戻りますから
買った物も手元には残りませんし、お金も戻ってます。
でも必ず払う。
なんかね、こーいう部分だと思うんです。
この本の、この主人公の気持ちよさ。
この作者の書く世界の「きちんと」さだと思うのです。

そんな心地よい空気が全体に流れる作品。
ミステリ的要素も最後には用意されていますが
まぁそこは、主人公が「気づく」きっかけ程度。

ラストの美しさは絶品。
ぜひ読んで欲しい。
一瞬一瞬の、流れるときの大切さを改めて感じてしまう作品。
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2008年 01月 25日 |
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—神の声が聞きたい。牧師の息子に生まれ、
一途に神の存在を求める少年・早乙女。
彼が歩む神へと到る道は、同時におのれの手を
血に染める殺人者への道だった。
三幕の殺人劇の結末で明かされる驚愕の真相とは?
巧緻な仕掛けを駆使し、“神の沈黙”という
壮大なテーマに挑んだ、21世紀の「罪と罰」。
(「BOOK」データベースより)

慟哭」ではあやしい新興宗教でしたが今回はキリスト教ですか〜。
あたしはキリスト教の牧師と神父の区別もつきませんが
それでも早乙女の陥った悩みに、一緒にどんどん話に引込まれ
答えをも求めるかの如く先へ先へと読み進める手が
早くなりました。

3部作として、早乙女輝の幼少期から大人となる姿を描いていきます。
無痛症の彼は痛みを感じることがない。
体の痛みがわからない彼は自分が心の痛み、人の痛みも
わからないのか或いは本当にその程度の出来事なのか
その判別がつかないまま成長していきます。
ただひたすら神の福音を聞きたいと願い、神の存在を
信じ祈り続ける。神とは何か、神が存在するのであれば
この世の不幸はないはず、神は人間を見捨てたのではないか、と。

貫井作品は他にも何作も読んでますがあえて「慟哭」を
比較として出したのは読んでいただければわかるはず。
あぁ、またやられたよ、って感じです。あたしはね。
一部〜三部まで、読んでから読み直してしまうことになるかと。

まぁね、キリスト教をこんな形で書くことは
もしかしたら人によっては反感を買うかもしれないけれど
そこは受け流して読んで欲しいなぁ。(っても無理かな)
宗教に興味のない人にこそ読んでほしい、けれど。。。余計に
そーいう目で見ちゃうかもね(苦笑)
別に宗教者すべてが人格者ってわけじゃあなくて
どんな世界にも、間違った行動を正しいと信じる人はいるわけよね。
って程度で。
というか、一般的な(誤認であっても)認識として
犯罪を犯すまでの過程としてやっぱり
教会の息子、無痛症という設定はネタとして、はずせない。
ミステリーとして完成度はかなり高く仕上がっている分
宗教がテーマであっても人に勧めたくなる一冊。
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2008年 01月 22日 |
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行方不明の兄を追うようにしてアジアの国へ来た私。
闇両替で所持金のほとんどを失い、一日パン一個で食いつなぎ、
安宿をシェアして、とうとう日本企業の前で物乞いを…。
帰る気もなく、行くあてもなく、いったい今ここで何をしているのか。
それでも、私はまだ帰らない、帰りたくない—。
若いバックパッカーの癒しえない孤独を描く表題作他一篇を収録。
(「BOOK」データベースより)

表題作「真昼の花」と「地上八階の海」の2編が収められた作品。
どちらも目立たず地味な、どちらかというと言葉で表現するより
心の中でずっと自問自答するようなタイプの女性が主人公。
そしてどちらの作品も、とりたてて大きな事件が起きて
それにどう対処して。。。なんて話ではなく
淡々と彼女たちの世間からはどこか歪んだ「日常」が
描かれていきます。

「真昼の花」そのものはどこかアジアの貧しい国を舞台に
しているのでより、あたしたちが感じている日常からは
遠いのですが、そんな地から日本に電話をかけたとき
友達の「今いる会社の中の音」に、今までいた自分の「日常」を
描きつつ「今いる異国の地」をより際立たせ
「地上八階の海」では、そんな勤め先あるの?という不思議な職場の
中で辞めていった女性たちが、辞めた理由を想像する「ごくごく
一般的な考え方」を並べることで、常識を見せつつ
別れた男からの手紙の異常さを際立たせる、不思議な平行線が
感じられる。

恋愛小説でもなければミステリでもなく
そこに蔓延しているのはある種の不安感。
そういった意味では、今の日本の女性のリアルさが
出ているのでは。

自分はどこにいたいのだろう?帰りたくない、今のまま
ただ漠然と旅をしたい、かと言ってその旅にはなんの目的もなく
旅先でも、受け入れられたとしても、いずれは出て行く人とだけしか
見られない、絆なんてどこにも感じられない、けれどそれを強く
求めているわけでもない自分の内側に気づきつつも
見ようとしない不安、
年老いた母が義理の妹からの報告をうけてもしやボケたのでは?と
実際、母にその行動を尋ねれば母なりの理由があり
それでも、真新しい綺麗なマンションに向かう母の後ろ姿を
見つけたとき始めは気づかず、その場にそぐわない老女と
見てしまったときの不安感。

本を読む面白さは、自分の体験することのない世界を
擬似的に味わえることも一つにあるけれど
この作品たちは、その立場に立っていない自分までもが
気づかなかった自分の内側の不安をぼんやりと
浮かび上がらせる、ただ漠然と。
そこに答えはなく、それゆえに妙に心に残る作品。

にしても。。。。男を嫌いになった理由が、朝起きていきなり
要求された「オレンジジュース」っての、すっごい共感してしまうなぁ。
そう、そーいう細かい部分。
うわぁ。。。。そうだよねぇ。。。。と思わず共鳴してしまう部分。
それ以外、それまで否定していても一気に本の中の女性に
同化してしまう。作者の力ってそーいうところに出るのね。
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2008年 01月 20日 |
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改心した悪党・八神は、骨髄ドナーとなって
他人の命を救おうとしていた。だが移植を目前にして
連続猟奇殺人事件が発生、巻き込まれた八神は
白血病患者を救うべく、命がけの逃走を開始した。
首都全域で繰り広げられる決死の追跡劇。
謎の殺戮者、墓掘人の正体は?
圧倒的なスピードで展開する傑作スリラー巨編。
(「BOOK」データベースより)

13階段」の作者です。
すでにこの人の作品を読んだ友達が感想を教えてくれまして
でもこの作品ではなく別の作品。
それがちょっとコメディ?と思えるような設定で。。。
まったくこれとは違う作品なのに何故かあたしのアタマに
コメディ、コミカルとインプットされていて
どうしても文章の隅々に
コミカルなタッチを探す自分がいてなかなかストーリーに
入り込めず違和感を感じたままスタート。
ありゃ(苦笑)

ところが途中から、もぅどんどん話の展開に引きずり込まれました。
スピード感あり緊張感もあり謎をどんどん追いたくなる。
最終的には政治家の裏まで絡み。。。とここまでくると
他にそういった癒着などについて深く書かれてる本に比べると
軽いなぁという印象は否めませんが。
何が悪で何が善かという形がまったくのステレオタイプというか。
まぁ娯楽作品として存在するのならばそれくらいの
設定でちょうどいいのかもしれません。

ヨーロッパ中世の魔女狩りの時代に実在した「グレイヴディッガー」の
殺人方法を模した連続殺人の話なのですが
実はこの作中に登場する「グレイヴディッガー」という存在自体が
作者の作った話とありまさにストーリーテラーとしては逸品だと思います。

でもなぁどうしてもスピード感、アクション的な部分ばかりが
印象に残る本で、どうなのよ?とそれこそつっこみたいところ満載。
あり得るかどうか、とか、現実味がない、とか
そんなの面白ければどうでもいいのでは?と本の評価の甘いあたしですが
そこばかりクローズアップされているともっと深みを求めたくなるのかなぁ。
主人公のキャラが結構楽しめるのが救い。

読後感は悪くはないですし、「はずれたぁ」ともまったく思わないしね。
あ、殺人に関する表現はグロすぎですので気をつけて。
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2008年 01月 15日 |
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自称ひきこもりの友人、鳥井真一が風邪で寝こんでいたある日
僕、坂木司は同僚から、同期の女性の様子がおかしいと
相談を受ける。慣れない探偵役をつとめた僕が
導き出した解答は…。
また、木村栄三郎さんのもとで出会った男性と
地下鉄の駅で見掛けた少年の悩み
そして僕自身に降りかかる悪意の連続、それらの真実を鳥井はどう解明するのか。
ひきこもり探偵シリーズ第二弾。
(「BOOK」データベースより)

シリーズ2作目。1作目に登場した人たちも出てくるので
順番に読むのがおすすめ。
確かにね
すっごいご都合主義っていうかミステリーとして
そりゃ出来過ぎだろ?とかありますよ、ありますけど
でも、不思議と魅力ある作品なのです。
キャラの魅力が大きいかな。

読んでいて気持ちがほっこりする。
ボーイズラブ系だなんて言われ方で済ませて欲しくない
さわやかな読後感。
ひとにやさしく、そうありたいと思わせてくれる本。
初対面の相手、快く思わない相手であっても
徐々に心を開き、最後には友達という関係になり
そして強くなっていく。その輪が広がっていく。

主人公坂木の祖母の言葉がとてもいいです。
困っている人、悩んでいる人、世界中にたくさんいて
自分はそれを何も変える力がないと思い悩む子供に
あなたならなんて声をかけますか?
大人ならではの「しょうがない」で済ますのではなく。
自分の手の届くところから、優しくすればいい。
そしてそこでできたらまた少し手を広げればいい。
自分の手の届く範囲で、少しずつ広げていけばいい。
素敵なアドバイスだと思います。
そしてそれをまさに実行できている、しようと頑張っている主人公。
その形がとても素敵。
いつか息子にも読ませたいなぁ。

まぁただ正直言って、この系統(加納朋子とかね)好きだからと言って
連続してこればかりは読めない。
さすがに疲れる、というか、優しすぎるというか甘過ぎるというか。
辛口とかの合間にふっと入るととても心地よい。
そんな読むタイミングをとても選ぶ本だとは思います。
癒されたいとき、優しくされたいときにどうぞ。
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2008年 01月 14日 |
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—教えたら旦那さんほんまに寝られんようになる。
…この先ずっとな。
時は明治。岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客に
ぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。
残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた…。
岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。
文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、
山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。
(「BOOK」データベースより)

この岩井志麻子自身はよくテレビのコメンテーターとして
知っているけれど本を読んだのは初めて。
んー、本人さながらなかなかおどろおどろしい(苦笑)

どんな幽霊話よりもやっぱり恐いのは人間だぁねぇ。
とくにこの本に納められた4編とも明治時代の岡山、ムラ社会を
舞台に語られていきます。
岡山弁で語られるそれらは女ならではの恐さ。怪談に近い恐さかも。

女郎の寝物語で語られる間引きの母、近親相姦によって
産まれた自分と「姉」そして地獄へ堕ちていく罪「ぼっけえ、きょうてえ」
コレラ患者をかくまう家族を密告させる為に置かれた「密告函」
漁師の元に嫁いだ町育ちの酌女とその地にまつわる話をなぞる「あまぞわい」
貧しい兄妹が世間から疎まれて暮らす「依って件の如し」

どの話もじわりじわりと恐いのですが読後感は
女の哀しさがじわり。
とくに表題作はせつないなぁ。
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2008年 01月 14日 |
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連続幼児誘拐事件の謎を追う警視庁捜査一課・特殊犯
捜査係勤務の有働公子。
婦人警官でなく、一人の母親として事件の
当事者となってしまった彼女は、わが子を取り戻すため
犯人のみならず警視庁4万人を敵にまわすことに…。
驚愕の展開、そして誰も予想だにしなかった戦慄の結末。
ミステリーの到達点。
(「BOOK」データベースより)

昔、ドラマでCharaが主題歌だったこともありちらっと見たのですが
なんせ幼い子供が誘拐される話だっただけに当時まだ小さかった
我が子を考えると辛くて最後まで見られず。
だって誘拐されて身代金を、ではなく、臓器売買のパーツとしてだったり
小児性愛者の道具として売られていく。
それはもぅきつすぎ。
なのでどんな話かは知っていてもラストも知らなければ
本書を手にとってもすぐに買う気にもなれず。
何度も本屋で見るたびに、まるで、通らなければいけない道かのように
いつかは読まなければ、目をそむけちゃいけないような
そんな気持ちにさえなり。。。

何年も経ってようやく読みました。
凄かった。もぅ一気読みです。読む手が止まりませんでした。
確かに子供たちがどうなるかの描写や監禁されているシーンは
何度も本を閉じたくもなりましたが
誘拐された我が子を追う婦人警官、有働公子の母性を
信じて、ひたすら信じて、次へ次へと。

始まりはただ、身代金の要求がない誘拐事件の誘拐される様が
描かれるのですが、その子たちにもちゃんとフルネームが与えられ
その子の性格、置かれている状況などがきちんと描かれているゆえに
その子たちの行く末を知らされる読者は
よりダークな世界に突き落とされ、また犯人たちのそこに至るまでの
経緯も物語性をきちんと持たせているからこそ
どちら側が語り手になっても、その心理まで読み取ることができます。
中心となる楢崎あゆみちゃんが誘拐され身代金を要求された事件に入ったとたん
それはいきなり「調書」という形を取って淡々と知らされる、そのギャップ。
それが段々と公子と被害者家族との関わりで
厚みを加えたところで、事件はとんでもない展開を見せるのです。
婦人警官、公子の一人息子の誘拐。
母一人、子一人の家庭。
息子を取り返したければ、身代金をこちら側に、警察内部をまいて
よこせと。
公子は我が子の為に、警察を敵に回し、一人、誘拐犯たちに
立ち向かっていくのですがここからがまたすごい読ませる、読ませる。
手に汗握るとはまさにこのこと。
カーチェイスの描写といい銃撃戦といい抜かりなし。
そしてその機動力は母性であることが細かいプロットから
読者に伝えられ、また誘拐された子供たちの様子からじわじわと
こちら側を引込む。
子供たちの臓器をバラバラに売りさばくなんて人間として
最低な凶悪犯であるはずの、主犯格の智永、
その教え子泉や泰史、そしてチャイニーズ系タイ人のグエンでさえ
その過去を語らせれば、せつなく壮絶な人生。
もぅ巧いとしか言いようがない。

息子を取り戻す為の最後の公子の様子には涙をだらだら流しながら。
ミステリーとしての犯人解きも含めてとてもよくできた1冊。
たしかに分厚い本ではあるけれど(文庫本で514ページ)
無駄がなく完成度が非常に高い。
読み終わったときには、こちらも一戦交えたような疲労感(苦笑)
確かに子供たちの残酷なシーンは子を持つ親には辛いですが
形は違えど、一部ではそのような世界もあると知ることは
決して悪いことではないと思うし、むしろ知るべきではないかと。

ラスト、被害者家族の一人である古賀が息子直樹への思いが救い。

ちなみにドラマでのキャスティングはこんな感じ。違和感ナシなとこがすごい。
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2008年 01月 13日 |
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小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。
傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。
事故の線も考えられたが、状況は殺人を物語っていた。
ガラス切りを使って外された窓の鍵
睡眠薬が混入された箱詰めのチョコレート。
彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり
事件は容易に解決を迎えるかと思われたが…
『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んだ衝撃の問題作。
(「BOOK」データベースより)

プリズムとは入射光を屈折・反射・拡散するといった働きをし
ガラス製の多角形の形をしている三稜鏡であり
周囲の様子に応じて様々な様相を見せるものの
イメージとして与えられる言葉。

そう、まさしくこの小説はプリズムのごとく
一つの事件が様々な方向から見ることによって
色々な表情を見せていく。

先に言っておきます。
犯人が誰か、とすっきりさせることが好きならば
この本は読んではいけない。
読者も一緒に謎を楽しむ、じゃあ、犯人はいったい?と
解いていく、それくらいの気持ちで臨んでいただきたい本。
で、これがまたとてもよく、きれいに作られている。
感心してしまほど。
ミステリーってこんな可能性もあるんだ、と改めて
思い知らされた次第。

まずはその小学校教諭が担任するクラスの子供たち。
独自に推理を働かせて「犯人」を探していく。
親たちの噂を集めて、また怪しいと思う人たちに
直接話を聞きにいき。。。
やがて子供たちは一つの結論にたどり着く。
もしかしたら。。。

そして次の章。
また別の語り手が独自に犯人を突き止めようとし、そして。。。

ネタばれにならないように伝えるのが難しいのですが
怪しいと思われた人たちが、次の章では語り手となり
その語り手は、語り手で自分自身の中だけでも
彼女に何が起こったか、いったい誰が彼女を殺したのか
別に警察に突き出すつもりはなく、自分自身で納得したい、と
それぞれの理由で「納得いくところ」まで
独自の捜査を進めるわけです。

読み手も、当然、その内容に新たな発見とともに
「納得」をする。
ところが次の章でそれがひっくり返される。
だって「犯人」と限定された人間が「犯人」を次の章で
探していくわけなのだから。

最後、犯人を特定するのは読者であることを忘れずに
あなた自身の推理を働かせてどうぞ立ち向かってみては?
さらに別の章をあなた自身の中で組み立てることだって可能なくらい。
(正直、この本で一番最後に「犯人?」と疑われる人物、その動機は
やっぱり後味悪いんですけどね〜〜〜。しんどいつーか重い。)

もちろんプリズムの名の示す通り、色々な語り手が見てきた被害者の姿
人によって人はこんなにも違う見方をされている
当たり前のことなのだけれど
実はミステリーは特にそうなのだけれど物語って「キャラ」を
立てる為に人間の多角性は無視されることが多く
これまた力量のある作者でなければできない技。
この部分もぜひ見落としなくどうぞじっくり読み味わってください。


まぁ。。。読んでいくうちに、こんな人が犯人?!というびっくりを
求めるタイプには「消化不良!」と言われちゃうんだろうなぁ。
そーいう本じゃないこと、ぜひわかった上で読んで欲しいです。
ま、そーいうのもあたし、大好きですけどね。
色んな本があるということでこんな本もオススメ、ということで。
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