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2008年 09月 30日 |
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母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。それには、信じられないような理由があった…(表題作)。
昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。
直木賞受賞の傑作短篇集。2005年第133回直木賞受賞作。

なんなんでしょう。この本は。
カテゴリ的にはホラーなのですが底に流れる
まるで整備されていないどぶ川を眺めるかのような
見たくないようなそれでいて覗き込んでしまうようなせつない
ノスタルジー。差別や暴力が普通に存在した時代の
やるせない子供時代をまるで抱きしめるかのような。
ノスタルジーって優しい懐かしさをさすものではないのよね。

話はすべて関西を舞台に関西弁の会話が連なるので
肌に合う合わないはあるかもしれないけれど
逆に、土地にも時代にも距離のあるあたしは
別世界の話と読んでいたはずなのに、深く感情移入してしまって
痛かった一冊。短編でよかった(苦笑)

解説が重松清というのもぴったり。
「都市伝説セピア」も読んでみよう。

  「トカビの夜」
主人公ユキオは、小学二年の春から四年生の夏まで
父の事業の失敗で東京を逃げるように
大阪の下町の文化住で暮らしていた。
2階建ての一軒家でありながら壁同士が1枚で
くっついているような家は隣りの声がすぐに
聞こえて来る密集した住宅地。
一人っ子だったユキオは友達とまるで兄弟のように
近く接していられるその環境にすぐに馴染む。
みんな貧しく同じような環境でありながらその中でも
存在する差別。一番奥に住む朝鮮人一家。
身体が大きく乱暴者の兄チュンジと身体が弱く
家にずっといるばかりの弟チェンホ
ユキオの持っていた怪獣の玩具や本は2人を仲良くするが
チェンホは病気で亡くなってしまう。やがて長屋で起きる様々な怪現象。

  「妖精生物」
世津子は小学四年生の夏、近所の高架下で怪しげな男から
「ずっと昔の魔法使いが作った、妖精生物」を買う。
クラゲのように見えるその生き物は掌に乗せると
不思議な甘美な感覚=刺激を与えてくる。
幸せをもたらすと言われたはずの妖精生物。
父が営む下請け大工の工務店に急遽雇われた
標準語で喋るまるで芸能人のような大介さんが
やって来たことで、一変する。普段大人たちから
かまってもらえない子供だった世津子と弟は
遊んでくれる大介さんが好きだった。
特に世津子は異性として意識するように。
これが妖精生物がもたらした幸せかと思った矢先。。。
性的な匂いに満ちた作品。ラストがさらに痛々しい。

  「摩訶不思議」
アキラは三十過ぎでぶらぶらしている遊び人の
父の弟、ツトムおっちゃんが大好きだった。
ところがおっちゃんは歩道橋の階段から落ちてあっけなく死んでしまう。
その葬式の日、焼場の前で霊柩車が止まってしまう。
おっちゃんは未練があるに違いない、と
アキラだけが知っていた女性カオルさんを
籍は入っていないもののオッチャンの奥さんが
目の前にいるものの呼び出す。
動いたかと思った霊柩車はしかしまた止まってしまう。
そこへ妹のヒロミがさらに言う。「おっちゃん、もしかして
ヤヨイちゃんに会いたいんやないかな」
「人生はタコヤキやで」と言っていたおっちゃん。
関西ならではなお笑いと逞しさに溢れた作品。

  「花まんま」
主人公、俊樹は三歳離れた妹のフミ子を
どんな時でも守ってやるのが兄の努めだと
事故で死んだ父が生前言われた。
それ以来、兄は損な役回りだと思いながらも
使命のように思って来た。
ところが「フミ子」の様子が4歳ごろガラリと変わった。
いきなり大人びた妹。他の子供達と遊ばなくなったり
突然、一人で遠くまで行ってしまったりする。
俊樹がフミ子のノートから見つけたのは見知らぬ女性の名前。
それもフミ子が習ってない漢字で。
自分には彦根という場所で別の家族といっしょに暮らしていた
記憶があるといいだす妹。
ある日、7歳の「フミ子」の頼みで二人は彦根に向かう。

  「送りん婆」
みさ子の両親が勤める運送会社は遠い親戚であり
その社長の母親は不思議な力を持っていた。
「おばさん」は「送りん婆(おくりんばー)」と呼ばれる
言霊の力で生きているものを殺す呪文をとなえ
臨終に苦しむ人を楽にする技を受け継いでいた。
要は意識より先に身体を殺してしまう言葉。
身体が先に死んでいるので痛みや苦しみから解放され
周りに感謝の言葉を伝えたり、穏やかに、その後
精神も身体から切り離されていく。
8歳のとき、同じアパートに住む友達の
父親が病院からも匙を投げられ家に帰され苦しみ続け
おばさんはその父親を楽にしてあげるよう頼まれる。
そのときからおばさんはみさ子を助手として使うようになり。。。

  「凍蝶」
ミチオは周囲から差別され蔑まれる家に生まれた。
わけも判らない小さい頃から差別され
最初は仲良くなった友達も親が差別を子供に見せることで
やがて子供も同じようにミチオを差別し、離れていく。
自分は要らないものとし、まるで透明な存在のように
過ごしていた小学校2年のとき、引っ越して来たばかりの
東京からの転校生、マサヒロと仲良くなる。
大阪という土地柄、東京というだけで、関西弁を喋らないと
いうだけでどこか浮いた存在のマサヒロは
すぐに同じような扱いを受けていたミチオを子供ならではの
嗅覚で嗅ぎ分け親しくなっていった。
しかし、マサヒロも3ヶ月で「土地に」慣れてミチオから
離れて行った。
そんなある日、ふと出かけた先の霊園で
ミワさんと名乗る美しいの女の人に出会い話をするようになる。
ミチオが故郷にいる弟に似ているのだという。
私は毎週一度その霊園でミワさんと話したり遊んだりするのだが。。。


解説に書かれてたのですが、当時小学校6年生の作者の
息子さんがこの本を読んで泣いたという話が一番印象的だったのですが(苦笑)
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2008年 09月 28日 |
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男前でもてるのに堅物の同心・玉島千蔭と、お人好しでおっちょこちょいの岡っ引き・八十吉の名コンビが大活躍!
次々に起こる事件に、千蔭の勘と推理力が冴え渡る。
そんな中、千蔭に押しかけ女房が…?! 美貌の花魁・梅が枝との仲はどうなる?
軽妙と繊細が絶妙にマッチした、近藤史恵の真骨頂!
(出版社/著者からの内容紹介)

読んでいて、やたらと「前」の話がでて来るので
ん?と思ってたらこの本ってシリーズものでその前に2冊あるのね。
読まねば!
と思ってしまったほど面白い。

芝居小屋が軒を連ねる江戸は猿若町。
南町奉行所の同心玉島千蔭は男前だが女心には疎い朴念仁。
けれども事件となれば冴えた名推理を披露する連作短編集。

千蔭を初め、千蔭とは正反対の洒落者の父親、千次郎
千次郎の代から小者として仕える岡っ引きの八十吉
千蔭を恋い慕う吉原の花魁、梅が枝
その梅が枝と顔が瓜二つ、同じ上方から江戸に来て
幼なじみでもある中村座の人気若女形、水木巴之丞
そして千蔭と見合いをしたもののその父親の
千次郎に惚れてしまい今や千蔭の母親となった年下のお駒。
そういったキャラたちがしっかりとその個性を発揮し
話を支えて行くので読みやすい。
これはシリーズ3作目ならではの、ということとでしょうかね。

江戸の風俗も満載で時代小説としても十分に楽しめるうえ
この作者お得意の歌舞伎も謎をとく一つとなり、さらに現代ものにも通用する
男女の愛憎を交えながらも、ほのぼのとした人間関係の暖かみも
描き出されつつ、ぴりっと世知辛い一面も浮き彫りにする。
贅沢な内容ではないかと。

まだ同性愛がタブー視されていなかった江戸時代。
そして公然とした売春も一区画に納めることで存在した時代。
陰間だったり稚児だったり、花魁、女郎部屋にしても
ひどく淫猥なはずなのに、男女間のどろどろの愛憎劇、相手を
愛しているからこその歪んだ憎しみですら
どこかギリギリのところで上品にまとめているのは近藤作品ならでは。

もちろんミステリとしても秀逸。
「吉原雀」「にわか大根」「片陰」の3編からなる物語を
ひとつずつ謎を解きながらも、実はそれぞれの物語が
リンクしていて、最後にその一つの問題も解決する、 という構成もいい。

 「吉原雀」
吉原で、3人の遊女が立て続けに亡くなった。医者はそれぞれ
違った病死の診断を下し不審なところはないという。
しかし、彼女たちを結ぶ「雀」という共通点に気がついた千蔭。
懇意にしている歌舞伎役者の巴之丞が舞踊「吉原雀」を
演じていたこと、浮世絵師の歌川国克がその舞台を
役者絵にしていたことなどを手がかりに千蔭は
その謎を解いていく。「雀」という言葉が指すものは。。。

 「にわか大根」
人気の実力派女形、そして 巴之丞のライバル村上達之助が
上方巡業から戻ってきたらの芝居が、突然下手になり
客席からは「にわか大根」という罵声が飛ぶほど。
そんなおり、彼の幼い息子が転落死という悲しい事故が。
しかしその事故後、達之助は元の見事な演技力を取り戻す。
そこに何か関連はあったのか。息子の事故は本当に事故だったのか。

 「片陰」
巾着切りの茂吉は、その日すった財布を、近くにあった天水桶に
隠すために投げ入れる。後日、その財布を回収しに行くと
天水桶から男の死体を発見が。
真面目で人当たりも良く、人に恨まれるような人物ではなかった
船芝居の役者、片岡円蔵。
そしてその円蔵の相方は巴之丞が上方の陰間茶屋時代に
知り合いだった与四郎だった。与四郎は円蔵に頼り切り
自堕落な生活を送っていたのだった。
円蔵の妻の、夫の優しさに対する言葉がとても印象的な作品。
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2008年 09月 25日 |
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お台場にあるテレビ局が、72時間テレビ生本番の最中に、
正体不明のグループにのったられた。
劇場型犯罪に翻弄される警察。
犯人たちの真の狙いは何か?30歳を目前にした女子経理部社員が、人質となった恋人を救うためひとり立ち向かう。
手に汗握る、著者のすべてが詰まった幻のデビュー作。
(文庫裏表紙より)

ふははは。
絶対に友達の「おすすめ」でなければ手に取らなかったであろう表紙(笑)
帯には
「ジョン・マクレーン(「ダイ・ハード」)?いえいえ。
ジャック・バウアー(「24」)にも負けてません。
最弱OLがたった一人で最強テレビ局ジャック犯に戦いを挑む!
ベストセラー「交渉人」より100倍面白い!(当社比)」
って。。。。(苦笑)

というか、まさにそのままです。
ダイ・ハード、テレビ局OLバージョン。
はぁ?な設定なのにこれが面白い。
だいたいね、この作者の「安政五年の大脱走」も大笑いできましたからね〜。
この人の書く本はすべて笑えるのか?と
思ってしまったほど。
その前回書いた記事に「つっこみどころ満載だけれどそんなの関係ない。
そのパワーと言ったら!」とあるのですが
ここでもまったく同じ台詞を書かせてもらいます(笑)

つっこみどころ満載だけれどそんなの関係ない。
そのパワーと言ったら!

これマジ怒っちゃう人いそうだけれど
これは笑うとこでしょ。
フジテレビあたりでちょっと笑えるラブコメアクション作品として
ドラマ化してもヨイとすら思う。
もちろん元気のある旬な女優を使ってね。

いやぁおもしろい本読んだという満足感。
ありえね〜って笑いながらね。
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2008年 09月 23日 |
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「月読(つくよみ)」とは、死者の最後の思いを読み取る能力者。
月読として生きる朔夜が、従妹を殺した犯人を追う刑事・河合と出会った時、さらに大きな事件が勃発してー。
人は死の瞬間、何を思うのか。それを知ることに意味はあるのか。
地方都市で鬱屈する若者たちの青春を描く、著者渾身の傑作ミステリー長編。
(文庫裏表紙より)

すごい。
なんだこのすごい本は。

初めはすごい読みにくかった。
なに?なんなの?の疑問符だらけ。

なぜならこの話は「現代の日本」を舞台にしながら
まったくのパラレルワールド、別世界の話だから。
この世界では誰でも死ぬと「月標(つきしるべ)」が出現するのです。

いきなり子供の目の高さに浮かぶ虹や
突然庭に出現する大きな岩、信号機の支柱が
蝶結びを失敗したような形にねじまがったり
スチール製のドアの表面だけに現れるレリーフだったり
あり得ないものがそこここにある世界。
そして、それを見た人たちが、あぁ誰かが近くで死んだな、と
普通に受け止める世界。

一切の科学理論、物理法則を無視したその存在に
世界中の学者、科学者たちは解を求めても
現在もなお謎のままで、その知能をそちらに向けたが故
素晴らしい能力がそちらに使われることで
携帯電話も薄型テレビもまだ開発されていない世界。

さて。ここまでついてこられてますか?(苦笑)
そしてその「月標」を読み取ることで亡くなった人たちの
最後の「思い」を読み取ることの出来る能力者、月読がいます。
彼らは、異能ということで、その能力の存在が明らかになった時点で
親とは離され、月読のもとで育てられ、次世代の月読としての
教育を直接受け育つのです。

それ意外はまったく「現代の日本」と状況はまったく同じ。

そして殺人事件が起こり、それを追う刑事が存在する。
そこに、月読が絡む。
と、こんなお話しになるのです。
ただし、月読は、万能ではなく、死者の最後の言葉を
すらすらと読み取り、はい、事件解決なんてものではありません。
そんな簡単なコメディか?なつっこみ満載な単純な本じゃないです。
この状況で作り上げられたミステリは人間の心の闇を
せつなく、深く、描いています。

従妹を殺されたことで事件担当からはずされた警察という
機構の枠からもはずれている一匹狼的な変わり者扱いされる刑事の
話と心に鬱屈としたものを抱える高校生の男女の話を
絡め、そこに起きた二つ事件が次第に繋がって行くのですが
これがまたミステリとしても十分に成り立っている。
無理もなければ無駄もない。

だいたいこのファンタジスティックな設定やら
登場するのが、自分の出生の秘密に
悩み傷ついているのにクールに歪みつつある少年だったり
(それもアタマがよいという設定)
妙に気の強い美しい少女だったり
キャラたちが、なんていうのか、どこかステレオタイプで
ライトノベルな要素があるのにライトノベルに落ちてない。

いやぁすごい。
この作品にはさらに(まだ文庫化にはなっていない)「落下する花 月読」という
続編もでているそう。朔夜がさらに出会う様々な月標と
事件の解決を描いた短編(スピンオフ系かな?)らしいので
こちらもぜひ読んでみたい。

はっきりいいます(笑)
朔夜、ツボりました。直球ど真ん中。
くぅ。たまんない。
腐女子とでもなんとでも呼んでくれ(>ε<)ぶっ
朔夜の雨の日スタイルなんて吹き出しそうでした(笑)
黒いマントにつばの広い黒い帽子って。。。
お茶を飲むときは自分で毎回煎じてから飲むって設定も(笑)
丁寧な口調で話すオトコってツボだったのね、あたし。

実在する超有名アーティストたちの実名で実際にある曲の
タイトルを無理くり「月標」に「読ませる」マニアックさも好きだ(笑)

実際に、こんな世界だったらあたしの月標はなんなんだろう?と
考えてしまったり。でもその月標はその人の内側だったり
生き様だったりとはまったくの無縁なものを生み出したりするんだよね〜。
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2008年 09月 19日 |
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十五年前、大物歌舞伎役者の跡取りとして将来を嘱望されていた少年・市村音也が幼くして死亡した。
それ以後、音也の妹・笙子は、自らの手で兄を絞め殺す生々しい夢に苦しめられるようになる。
自分が兄を殺してしまったのではないだろうか—。
誰にも言えない疑惑を抱えて成長した笙子の前にかつて音也の親友だったという若手歌舞伎役者・市川銀京が現れた。
音也の死の真相を探る銀京に、笙子は激しい恋心を抱くようになるが—。
梨園を舞台に繰り広げられる痛切な愛憎劇。
ミステリ界の最注目株・近藤史恵が満を持して放つ、書き下ろし歌舞伎ミステリ。

「ねむりねずみ」「散りしかたみに続く歌舞伎シリーズ第3弾。
でも今泉文吾の活躍が少なく残念。

小乃原笙子は梨園の大御所市村朔二郎の愛人の娘。
名子役だった兄、音也の病死後、引き取られ実父と養母に
育てられた。しかし、笙子には子供の頃の気億が曖昧でさらに
自分が兄を絞め殺したという悪夢に苦しむ。
会ったこともない兄。写真でしか見たことのない兄。

ある日、笙子は覚えのない大部屋の勉強会としての
発表会「桜姫東文章」に招待される。
招待したのは主役の桜姫を演じる中村銀京。
銀京は生前の音也の親友だった。
ところが銀京はたまたま彼の写真を撮った日付が
彼の死後の日にちであることに気づき
音也の死の謎に迫ろうとし、笙子に近づいたのだった。

一方 「伽羅先代萩」に出演していた子役が幕後、
普段人が立ち入らない大道具部屋で死体となって発見される。
死因は風邪薬によるアレルギー。
しかし、彼は喘息持ちであったため、風邪薬は飲まないようにきつく躾られていた。
彼の母親役だった瀬川菊花の指示で、弟子の小菊は友人である
探偵・今泉文吾に調査を依頼する。

 笙子と小菊の一人称によって交互に語られ
2つの謎が同時進行で追われて行きます。

毎回思うのですが、この人の歌舞伎シリーズ
歌舞伎をしらないあたしでも作品や歌舞伎についての説明が
適度にされ、さらにそれを上手く物語の伏線に
歌舞伎を知らない人でも気づけるように描かれているのは
素晴らしい。歌舞伎そのものにも興味を持てるし
知っている人は楽しめることはもちろん
知らなくても、その美しさを十分に想像できる。
今回も存分に楽しめました。

今回まるで悪役のような、出世欲の塊のように
描かれていた銀京ですが読み進めるうち
本当に友達を大切に思う、意思の強い青年であることに
救われたなぁ。
ラスト、あたしはかなり好きです。
そっちだったか!という裏切り。それも両方の謎に対して。
片や、なんとも言えないくらいやりきれないけれど
片や、ラブストーリーとしてかなりいい終わり方をしているのではないかと。
ま、出番は少なかったけれどどちらにも重要な役割は
果たしてたかな、今泉。
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2008年 09月 17日 |
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同級生の謎めいた言葉に翻弄され、担任教師の不可解な態度に
胸を痛める翠は、憂いを抱いて清海の森を訪れる。
さわやかな風が渡るここには、心の機微を自然のままに見て取る森の護り人が住んでいる。
一連の話を材料にその人が丁寧に織りあげた物語を聞いていると、頭上の黒雲にくっきり切れ目が入ったように感じられた。その向こうには、哀しくなるほど美しい青空が覗いていた…。
(「BOOK」データベースより)

いやぁ。。。いいです。これ。びっくり。
大穴。だって表紙がこれですもん。
いきなりおおたか慶文の透明水彩の少女。
こりゃ好みの別れるところでしょう(苦笑)

表紙の透明感をそのまま反映しているような
少女の無垢さ、若さが文面に溢れていて
その主人公目線での一人称なので
それが苦手な人には受け付けられないかもしれないなぁ。
いまどきこんな女子高生、とつい言いたくなるかもしれない。
大昔の少女漫画か?ってな感性。

またミステリといっても人間関係の中で
生まれる感情の行き違いとか日常ミステリに
近いものなのですが、その日常ミステリとして
例えば、北村薫のような秀でたものがあるでもなく
妙に青春小説の青くささが漂っていたり。。。
どこまでも予定調和すぎを感じてしまったり。。。

だいたい個人的に集団行動臭が苦手なので
作中にでてくる活動(一般の人たちが参加して
泊まりで初対面の人たちとどーの、とか〜)からして
うざっ!と感じるタイプだし〜。。。
ガーデニングレベルすら苦手な土いじり
ダメダメだし〜。。。

なのに!
思いっきりツボった!
探偵役でもある深森護(主人公の名前は
若杉翠だし。こーいうところもすべて「(苦笑)」な感じでしょ)
彼がもぅツボです。
なんでしょ、どこか文系腐女子の心にきゅっとくるキャラで。
あの「丁寧」な言葉遣いもたまらんっ。

そして何より
自然と対話をしたい、向き合いたいとすら思わせる
この魅力溢れる根源はなんなんでしょう。
(実際、あたしがそのテのキャンプや自然愛護団体の
イベントに参加することはまずナイと思いますが
瞬間、感化されてる自分がいました)

本の帯にあるように「どこまでもピュア」に偽りはありません。
これを心地よく思えるかどうか
まるで試されているような一冊。

「森のいのちは今の自分を一生懸命生きてるからやないですか。
自分らしく一生懸命生きてる姿って、何であれ美しいんと違うかなぁ」
「人間はそうはいかないよな。
人間が好き勝手生きたら、完璧どころか泥棒やら人殺しやらえらいことだ」
「それは少し違うんじゃないかな。
自分らしく生きる方法が見つからないから、
人は盗んだり殺したり、自分を傷つけたりするんでしょう」

あ。こちら連作短編集で3つのお話からなっています。
うん、これは連作短編が一番スタイルとして合っているなぁ。
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2008年 09月 16日 |
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懐かしく切ない傑作ファンタジー
20世紀初頭の東北の農村。少女峰子は、集落の名家・槙村家の
聡子嬢の話し相手を務めていた。
ある日、聡子の予言通りに村に謎めいた一家が訪ねてくる。
不思議な力を持つ一族を描く感動長編。

「光の帝国〜常野物語」に続く常野シリーズ。
前作は現代が舞台でしたが今回は日露戦争直前の
明治の農村が舞台となります。
「光の帝国」でも登場した春田一家の先祖、でしょうかね。

その村の指導者は、私欲に走ることなく
村のために力を尽くし、また村人達もその指導者、槇村家に
尽くす、そんな美しい共存が当たり前のようにあった時代。

槇村家の末娘、聡子は生まれつき身体が弱く
家で過ごすことが多かったため、話し相手として
選ばれたのが村医者の娘、峰子。
この話は峰子の視点で綴られた日記「蒲公英草紙」を
ベースに昔語りの形で勧められていきます。

まだ幼いのに自分の生まれて来た意味、存在意義を
求める聡子には神々しい美しさすら感じられ
読んでいるこちらまでまるで心が洗われるかのような
そして、不穏な動きを見せて行く時代の流れに
その時代の急激な変化に呑み込まれて行く峰子たちに
昔のよき時代を思い起こし語る峰子に
せつない、やりきれなさも。
と、同時に異能としての常野一族へのせつなさもまた。

常野一族は普通の人とは違った能力を持った一族。
春田家の人たちは「しまう」ことが出来る人たち。
その人が生まれてからそれまでのすべての記憶、感覚、思い
そのすべてを我が身の中に「しまう」こと。そして「響かせる」こと。
この春田家の能力が今回のお話の一番深い部分で
存分に活かされ、その能力の素晴らしさに感嘆。
長男の光比古が重要な役を果たしています。

前作を読んでからでも、或いはこれだけを先に読んでも
十分にわかるし、どちらから読んでもいいと思いますが
特に今回は常野をクローズアップしたというより
昔のよき時代の日本人を描いた話として秀作。

優しく澄んだ気持ちに慣れる一冊ですが
ラストの問いかけには深く重く心に沁みます。
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2008年 09月 15日 |
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これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。
いやそもそも、この世に存在することさえ知らなかった。
運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。
(「BOOK」データベースより)

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた
高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に
密かな思いを寄せていた。彼女達が前夫を
殺害した子をと知った彼は、2人を救うため完全犯罪を
企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である
物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。
ガリレオシリーズ初の長編、直木賞受賞作。
(文庫本裏表紙より)

とてもいい本を読み終わったとき
もぅ一度最初の部分を読み直してしまう本と
もぅ一度、同じ終わりの部分を読み直してしまう本と
あたしにはあるのですが
これは後者でした。
号泣もので読み終わって本を閉じて
もぅ一度ラストを読み直し
再度泣いてしまった、という。
それくらいせつない話です。

どちらかというとあたしはミステリというより
文学として一気読み。
でもそこまで引込む力のある小説だと思います。
もちろんミステリとしてもあたしは十分に
驚かされましたね〜。
丁寧な伏線の張り方がしてありさすが、と。
この話は、読み手側は「犯人」は最初にわかります。
ただその「完全犯罪」の方法を読みながら
追って行くわけですが
え?!でした。騙されましたよ。素直なんで。

「そこまでやるか?」とか「動機が弱いのでは」という
声もありますが、まずこの石神の人物設定を
よく読み直せば十分に「そこまでやる」一途さは
描かれていると思うし、まぁそこは天才となんとかの
紙一重というか。。。そこまで、という驚きが
また胸をうつのではないかと。
親友の完全犯罪を、わかってしまった湯川の苦悩も
読ませます。じっくり。

まぁあと特筆すべきは読みやすさ、かなー。
ほんと読みやすくてあっと言う間です。
なので、もし映画を見るのなら
ぜひその前に読んで「文字」で泣いて欲しい。
文庫化したし、ぜひ。
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2008年 09月 12日 |
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ややひねくれているけれど、料理自慢で世話好き店長のいる酒場。
今日もクセモノ常連客が、いわくつきの「とっても不幸な幸運」の
缶を持ち込んだ。缶から現れた物がもたらしたのは「災い」? それとも「幸せ」?
「しゃばけ」シリーズで大人気の作家が贈る現代版ファンタジックミステリー!
内容紹介より

新宿伊勢丹からさほど遠くないあたり、地下一階に
その店はあります。
うまくたどり着ければドアに小さく「酒場」の文字。
これはその「酒場」という名前の酒場を舞台にした連作短編集。

「酒場が舞台のミステリー」というと北森鴻の
「香菜里屋シリーズ」みたいに常連客が日常ミステリーを
持ち込んでマスターが解決、安楽椅子探偵よろしく解決?なんて
思ったのですが、これは、持ち込まれるのが日常ミステリーならぬ
「100円均一で買った不思議な缶」
その名も「とっても不幸な幸運」
その缶をあけると何かしら幻覚が見えて
自分の今の問題、過去の何かしらに決着をつけるような
何かが必ず起こる。。。

「香菜里屋シリーズ」と違ってこちらの「店長」は背の高い
ロン毛の乱暴者、家具はアンティークにおしゃれな照明と
高級な感じの酒場で、酒も上等、客も医者や弁護士、警察関係
世界中を飛び回る有名なマジシャンや裏世界の大物だったり
何やら敷居が高い感じ。
ところがそのキャラ達がみんな、なんて言うのかな
まるで長屋の住人のよう(笑)

畠中恵=江戸もののイメージでしょうかね。
ファンタジー色がちょっと強めなので現代ものよりも
時代もののほうがもしかしたらしっくり行くのかも。
現代だとついつい、つっこみたくなるし
また精神的な問題、幼児虐待やらを持ち出しちゃうと
ちょっとコミカルにファンタジーにしたいのか
シリアスなハードな設定にしたいのかぶれるところ。
リアルさが感じられず、型通りにだけ触れてある程度に終わり
ちょっとそこに手を出すには軽すぎな印象。かと言ってそこを
掘り下げちゃうとまったく別な印象の本になっちゃうだろうし。
扱うには難しいテーマに手を出しちゃったなって感じ。

とりあえず缶をあけると必ず何かしらトラブルが起こって
その開けた人物に何か起こるというお約束な連続短編集という
それだけでかなり楽しめる設定。
ファンタジーとしても人情ものとしても
こんな居酒屋行ってみたい、と思える場所。ただし過去に女性は
4人だけしかこの店の常連として認められてないので
そうとうハードル高いです(笑)
そうだなぁ。
料理では香菜里屋の勝ちかな?
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2008年 09月 10日 |
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人の不幸のみを予言する謎の占い書「フォーチュンブック」。
偶然入手した七人の男女は、運命の黒い糸に絡めとられたかのように
それぞれの犯罪に手を染める。錯綜する物語は、やがて驚愕の最終話へ。
連作ミステリーの到達点を示す傑作長篇。
(「BOOK」データベースより)

「花の下にて春死なむ」「桜宵」
「香菜里屋」シリーズが面白いので安心して手に取ってみました。
まず設定が面白い。本屋が自主回収するような
不幸のみを予言する本を手にした人たちの
連作短編集?と思ったらちょっと違う。
連作短編と呼ぶには、深く、まるで因縁かのように
絡み合う関係。
プロローグで松本にある書店員が目にした
本を買い求める人たち、名前がそこで一人一人
店員の目を通してあがっていくわけですが
ついつい、見返してその名前を確認してしまう。

帝銀事件、大学闘争、ホテルニュージャパン火災事故、
横須賀線爆破事件、500円硬貨偽造事件、そしてグリコ・森永事件
昭和を象徴する大きな事件を絡ませていくのですが
途中で人物名同様、え?この人がここに?!と
何度も見返して確認したくなるほど。
あー、この本の流れに添った年表を作りたい!!!と
思ってしまった(笑)

と思ったらこちらのサイトさんが人間関係と時制をまとめてくれています。
ご参考までに。

にしてもよくここまで作り上げたなぁ、と。
そ−いう妙に感心しちゃう本。
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