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2009年 03月 24日 |
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私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。
(「BOOK」データベースより)

これは確かに好き嫌いがわかれるところかも。
でもあたしは好きだなぁ。
なんていうんだろう。
まるで漫画を読んでるかのようにアタマの中で
キャラクターたちが動き回る!
とくに、文化祭なんてもぅ!

あり得ないことが山のように押し寄せてくるけれど
すべて「あり」!
これこそ小説の醍醐味なのでは、と思ったほど。
これほど純粋な片思いをつっぱしっちゃう男子、
時代設定はいつ?!とまず思うのですが
そのうちどうでもよくなる(笑)

本を読んでいてリアリティを強く感じることで
その世界に入り込むことと
突拍子もなく現実離れしてるからこそ
入り込んでしまうことと
どちらも本を読む楽しさ。
あらためてそれを感じさせてもらいました。

語り手が「先輩」と「乙女」と変わることで
それぞれの視点でしか判り得ないところも
読者は見えることができ、それゆえに
話の世界にさらにどっぷり。

この人の独特の言葉遣いさえクリアしたら
あの不思議で楽しい世界へまっしぐら。
ただひとつだけどうしてもクリアできなかったのが
乙女の使う「オモチロイ」
んー、これは何度もひっかかってしまったなぁ。

京都をよくご存知の方にはそちらでもきっと楽しめるはず。
読んでてすっごい京都行きたくなったもの。
まぁそれ以上にこれくらいお酒が強かったらおもしろいなぁ、と(笑)

どうでもヨイことですがあたしは文庫本の表紙より
単行本の表紙のが好きです。
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2009年 03月 19日 |
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つらいときは、ここに帰ってくればいい。
昭和37年、ヤスさん28歳の秋、長男アキラが生まれた。愛妻・美佐子さんと、我が子の成長を見守る日々は、幼い頃に親と離別したヤスさんにとって、ようやく手に入れた「家族」のぬくもりだった。しかし、その幸福は、突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう—。
我が子の幸せだけを願いながら悪戦苦闘する父親の、喜びと哀しみを丹念に描き上げた、重松清渾身の長編小説。
(「BOOK」データベースより)

いやぁ。久々重松節。
産まれてすぐに母を亡くし、父は親戚に自分を預けたまま失踪。
親を知らないまま育ったヤスさんは、幼い頃原爆で家族をいっぺんに
失った美佐子さんと結婚し長男、アキラが産まれる。
幸せな日。家族でバスに乗って借りたカメラを持って海に行く。
それだけで幸せで泣きそうになる。
ようやく手に入れたもの。
もちろんこの時点で、先は想像できる。
突然襲う不幸。
でもそれを一切アタマから排除しても
すでに、その幸せの描写だけで泣ける。
これはすごい。
不器用なヤスさんの愛情とそれを優しく受け入れる美佐子さん。

その後はもぅ浪花節かってほど何度も何度も
泣かせる場面いっぱいです。
泣いてない箇所がないくらい。それもやるせないとか
悔しいとかではなく、感動して涙が出る。

親としてはもぅまさに、とんびなヤスさんと
鷹なアキラの組み合わせ。
時には暴走しちゃうヤスさん。
照れ屋でこっぱずかしい気の利いた台詞なんて
絶対に言えないどころか、わかっていても
むちゃくちゃなことをお酒の勢いでまくしたてちゃうこともあるヤスさん。
それでも、ヤスさんの周りの人たちも
息子のアキラもちゃんとわかっている。
ヤスさんがどれだけまっすぐか。
理ではない情の部分の筋を通すことにどれだけ重きを置いてるか。

どのシーンがよかったか、なんて書き出したらもぅ大変。
全部のエピソードをあげることになっちゃう。

親はとんびでいい。十分に我が子を愛していれば。

脇役といえないくらい大きな存在のヤスさんの周りの人たちもいい。

子の立場ではなく親の立場で読むともぅたまらない作品。
これから親になる人、すでに親な人、すべてに。
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2009年 03月 19日 |
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10年前、抜刀術・名雲草信流を悲劇が襲った。末の妹・綾が放火により焼死してしまったのだ。犯人は、1年後、別の現場に残された遺留指紋が決め手となって捕まった飯浜幸雄。名雲家長男・修作がつきあっていた奈津の父親だった。修作の父・名雲和也は公判に出廷した飯浜に襲いかかる騒動を起こし、失踪。奈津は母親とともに土地を離れて行ってしまう…。守るべきものは何か?愛する者との絆の在処を問う感動巨編。
(「BOOK」データベースより)

「ヘブンズ・ドア」だったり「天国への階段」だったり
色々と違う作品と勘違いしちゃいそうなタイトルですが
こちらは「天国の扉」
まだ妹が生きていた頃、人は死んだらどこへ行くの?天国ってどこにあるの?などと
質問されたとき、兄である修作が答える。
「天国から階段が降りて来てその人のところだけに現れ、そこには扉があり
鍵がかかっている。ドアをノックすれば開けてもらえる」
「誰があけてくれるの?」
「係の人」
みたいな会話がなされているのです。なわけでこれは「天国の扉」です。

いやぁ、初めはかったるかったです(笑)
登場人物たちが、脇役が多くて。それがだいたいきちんと
名前を持ってたりするから、この人は誰だっけ?みたいな。
あたしがちゃんと覚えてないのと、妙に何日もかけて読んじゃったもんだから
ついつい忘れちゃって。。。(苦笑)

死刑廃止論にまで話が及び、それはそれで考えさせますが
何よりこの話の魅力は名雲草信流の決闘シーンではないかと。
かっこいー。
そう、かっこいい話です。まさにハードボイルドミステリ。

かなりグロい、えぐい、惨殺な描写はあるものの
それがなければ非常に説得力が弱くなりそうな、実行を指示している
リーダー格の犯人の残虐性は表現薄くなると思うなぁ。
また今の時代、そんな犯行も実際にありそうで
その恐怖感もこの物語のスパイスになっているので
そーいうのが苦手な人はやめたほうがいいです。

ただそれ以上に、この親子関係。。。まずそこからして
アリなのかなぁ、とか警察がここまで動くかなぁとか
思っちゃうのは野暮ですかね。
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by acha-books | 2009-03-19 01:02
2009年 03月 19日 |
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太古の森をいだく島へ—学生時代の同窓生だった男女四人は、俗世と隔絶された目的地を目指す。過去を取り戻す旅は、ある夜を境に消息を絶った共通の知人、梶原憂理を浮かび上がらせる。あまりにも美しかった女の影は、十数年を経た今でも各人の胸に深く刻み込まれていた。「美しい謎」に満ちた切ない物語。
(「BOOK」データベースより 上巻)

雨の音を聞きながら、静かな森の中を進んでいく大学時代の同窓生たち。元恋人も含む四人の関係は、何気ない会話にも微妙な陰翳をにじませる。一人芝居を披露したあと永遠に姿を消した憂理は既に死んでいた。全員を巻き込んだ一夜の真相とは?太古の杉に伝説の桜の木。巨樹の森で展開する渾身の最高長編。
(「BOOK」データベースより 下巻)

 「利枝子」「彰彦」「蒔生」「節子」の4部からなるこの話は
それぞれの部で語り手が変わることで
過去をそれぞれの視点で思い出し、語り合い
一つの絵を描いていく。

彰彦の発案で「美しい謎」を持ち寄り、旅の間にみんなで
それを解いていくというベースは
はじめは「ことば遊び」のように進むがやがてそれは
本人達すら覚えていなかったことや曖昧としていた部分を
徐々に、それがたとえ本人達の内側だけであっても
さらけ出されて行く。
本当は知りたくないこと、光を当てたくない無意識なところまで
極限まで行きつく過程に不自然さがないのは
物語の舞台がY島という特殊な場所だからこそ盛り上がって行く。

その間、事件が起きるでもなく
大きな展開があるわけでもない。
ただ過去の回想と会話が続くだけなのにこれだけ読ませるというのは
やっぱり恩田陸の非常に高い技術ならでは、と思うのです。

これは30代後半の、登場人物達と似たような年齢の人には
とてもしっくりする話だと思う。
若い人が読んだらまた違った感想になるんでしょうね。
もやっとしてる、とか、「わかんない」とか。。。

ある程度の年齢を重ね、ある程度遡れる過去があるからこそ
そして、覚えているはずなのに忘れていること、忘れたいのに
ずっと引きずっていること、そんな様々なことを抱え
立場は違えど、心地よく感じる空気感と同時に
危うい緊張感を感じられること、そして
また、家庭や仕事をもちながらも、異性を含めた昔の仲間と
ラグジュアリーなホテルに泊まり、偉大な自然に身を任すことへの
色々な意味での贅沢さを羨ましがれる年齢こそぴったりなお話かと。

屋久島、行ってみたいなぁ〜。
。。。何故、Y島とかJ杉とか匿名なんだろう?
別にいいような気がするんだけどね。
どうしても、ふっと止まって「J杉ってなんだ?あぁ!縄文杉のこと?」とか
ストーリーと全然関係ないとこで思考が止まっちゃって
ちょっとやっかいでした。

「三月は深き紅の淵を」 や「麦の海に沈む果実」を読んでいると
また違った楽しさも味わえる本です。
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2009年 03月 18日 |
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結納のため札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた…。
明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う長編小説。
(「BOOK」データベースより)

いやぁあたしキリスト教徒じゃないし?
なんて、冷静になんて読んでられないくらい号泣。
泣けた〜。
涙が止まらなかった。

なんて美しく悲しく尊い物語なんだろうと思ったら
実際にそういった行動をとった人がいたんですね。
あとがき読んでびっくりです。
もちろん、その生い立ちやそこに至る思考等は
作者の物語ではありますが
周囲の人たちの彼を評する言葉からみると
本当に立派な方だったようです。

でもなぁ。。。あたしは自分の息子が本当に
こんな死を迎えたら、彼の母親のように受け止められるのかなぁ。
やっぱりあたしにはそーいう信仰心はナイらしい。
親より先に逝ってはいけません。
なんて思いながらも、感動的な作品。

ただ連載されたのはキリスト教徒向けの冊子で
キリスト教徒がキリスト教徒の為に書かれた物語であるだけに
聖書の中の言葉や、作者の宗教観があちこちに散見されるため
違和感を覚える人も中にはいるかもしれませんが
若いうちに一度は読んでおいて損はない一冊。
どう感じるか、それが肯定であろうが否定であろうが
考えるに値するテーマかと。
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2009年 03月 18日 |
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「好きよ」—たった一言を遺して同僚の愛果がビルから飛び降りた。死んだはずの愛果の影を感じる董の前に伊勢崎という男が現われる。伊勢崎の周囲で起こる奇怪な出来事の数々—時空が歪み、記憶も操られる中、董子の故郷、真湯島と東京をつなぐ恐るべき企みが明らかに。
予想を遙かに超える衝撃のラスト。
(「BOOK」データベースより)

んーっと。
タイトルだけ見て、ちょっと実際にありそうな
やっぱ日常の普通の人が一番こわいよね〜って
思わせるような「恋愛ミステリ」かと思った。
いやぁ、まったく違う方向へ。
ホラーというか。。。
鎖国状態のような離島を舞台に繰り広げられる
もしかしたら本当にそんな場所がありそうとすら
思わせるあたりは、オカルトめいてはいますが
その独特の恐さ、ここは好き嫌いが別れるかも。

けれどやっぱりこれは恋愛小説だと思う。
「好きよ」と伝えたいのに
伝えられない相手。
その思いが伝わったところで自分の身体はすでになく。。。
それでも好きな相手の為に身を尽くす。
とてもせつない恋愛小説。

それにしても愛果の「メッセージの残し方」
あれを解くのもすごいけれど用意するのも大変そうだ(苦笑)

ラストの主人公董子の強さは潔く気持ちがいい。
SFもオカルトもホラーも嫌いなのに
読後感がイイ、不思議な一冊。
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2009年 03月 18日 |
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自分は少女誘拐監禁事件の被害者だったという驚くべき手記を残して、作家が消えた。
黒く汚れた男の爪、饐えた臭い、含んだ水の鉄錆の味。性と暴力の気配が満ちる密室で、少女が夜毎に育てた毒の夢と男の欲望とが交錯する。誰にも明かされない真実をめぐって少女に注がれた隠微な視線、幾重にも重なり合った虚構と現実の姿を、独創的なリアリズムを駆使して描出した傑作長編。
柴田錬三郎賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)

桐野夏生はその人間描写、心理的な部分で
そこまで人は醜い、おどろどどろしい部分をベースとして
動けるのか、とやられてしまうことが多く
読後はどっと疲れるのですが
それらの作品に比べるとまだこの作品は
弱いかな、と。。。。思ってるとあとからボディブローのように
じわじわくる作品。
やっぱ桐野。なめちゃいけない。

少女の拉致監禁、犯人と暮らした日々。
当然、解放後、周囲の人の目は「自然と」
まだあんな幼い子なのに男の慰み者になったと見る。
「自然」に。
彼女は監禁生活のことを何も語らず大人になった。
そして手紙を残して失踪したとき
そのすべてが語られる。
犯人との異常な生活は、読む側の想像を遥かに裏切り
愕然とさせる。タイトルを見ただけで
「自然」に想像したことを恥じ入るくらいに。
(十分、異常といえば異常な世界なのだけれど)

作者は現実社会のそうした下世話なワイドショー的に
扱われる惨いニュース、そうした世間の目に対して
この作品を発表したのかなぁ。

さらに驚かされるのは少女の想像力。
ま、やおいっちゃーやおいだけどね(苦笑)

それにしても。。。痛いのはやっぱこの母親かなぁ。
一番病んでると思うのだけれど。

読めば読むほど「謎」ばかり残るとは皆さんのおっしゃる通り。
けれどそこに逃げ込むしかなかった少女の
心理はすんなり理解できてしまう。
なかなか一筋縄ではいかない作品。
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