雷桜:宇江佐真理
2005年 04月 26日
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宇江佐真理の長編時代小説。雷桜(らいおう)。
雷桜とはこの話に出てくる不思議な桜の木で
この話にはこれ以上のタイトルはないというほどぴったり。
特筆すべきはその人物設定の面白さ。
生まれてすぐにさらわれて死んだと思われていた庄屋の娘、お遊。
ところがお遊は生きていて「狼少女」として戻ってくる。
お遊の生存を強く信じてきた次兄の助次郎は
清水家当主、斉道に仕える。斉道は複雑な生い立ちの中
心を病んでいる。初めはぶつかりあっていた助次郎と斉道。
やがてそこに生まれる主従関係。助次郎は斉道の身体を案じ
自分の村へ静養の為、滞在させる手はずを。
そしてお遊との出会い。
お遊は山の中で生きる上では必要のない女性らしさを
持たずに育った15歳の女の子。
でもね、お遊はとても女らしいと思うよ。
さばさばして正しいこととそうでないことには絶対で
自分の心にも素直なだけではなく相手に対しても
いつだってとても真摯。気持ちがいいほど。
だからなおさらお遊の決断がせつない。
読んでいて「絵」が浮かぶような描写がとても美しい本。
映画を見たような美しいシーンばかりが心に残る。
by acha-books
| 2005-04-26 09:46
| :宇江佐真理
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