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日暮らし:宮部みゆき
2005年 11月 27日 |
日暮らし:宮部みゆき_a0104226_1652572.jpg
 宮部の「ぼんくら」の続編です。「ぼんくら」から
読むことをお奨めします。

前作「ぼんくら」の登場人物に加え、また様々な人が
登場し、その登場人物たちひとつひとつのエピソードが
最後にはすべて繋がってゆく。もぅ見事です。そしてそれが
いかにも「こうなるんですよ」的にアタマで作られたような
「くっつけられている」感がなく見事に自然。
すべてが必須。余計なものもなければ
じゃああれはどうなったの?なモヤモヤもない。
さらに毎回、魅力的な登場人物たちの面白さが絶妙に
絡み合いもぅずっと読んでいたい、と思うほど。
読み終わるのがもったいない!
ベースは人情捕物帖ですが、普通の小説感覚で読めると思います。

一日一日を積み上げるように暮らすことが
実はどんなに大変かを考えてしまいました。

以下「ぼんくら」のネタバレにもなるのでご注意を。
上巻4作目までは、短編連作として話が進みます。

「おまんま」
一切の食事を拒んで倒れてしまった岡っ引き政五郎の
手下のおでこ。まだ13歳のおでこは自分の
「存在意義」に疑問と不安でいっぱいだった。

「おまんまのいただき方は、人それぞれに違う。
違うやり方しかできない。自分にできるやり方を
するしかないし、それしかやりたくないのが人のわがままだ。」

似顔絵つきの扇子の絵師として人気を博した祥文堂の秀明が
殺された。平四郎がその謎を解けたのは35年前もの事件を
諳んじることのできるおでこの才能があればこそだった。

「嫌いの虫」
鉄瓶長屋で一時的に差配をしていた佐吉。植木職人の
仕事に戻り幼い頃から見知ったお恵と所帯を持った。
周りに祝福され希望抱いて夫婦になったはずなのに
「隠し事」をされていることに気づいていることを「隠す」
お恵の心は揺れていた。
「いつか別れるのではないかと、別れる前から怖れ怯えて
暮らすのも、愚かなことだと教わりました。それは別れが
怖いのではなく、自分の手にしたものを手放したくないという
欲に、ただただ振り回されているだけのことだから」

同じ長屋に住む佐吉の仕事仲間の徳松夫婦。子供を置いて
時々ふらりと姿を消してはきっちりと帰ってくる女房のおとみ。
夫婦の仲のことはその夫婦それぞれ。

「子盗り鬼」
二人の娘を抱えた未亡人のお六とそのお六に病的に
付きまとう悋気持ちの孫八。逃げるために娘達と
住み込みの女中に入った先は「子盗り鬼」が出ると
噂される「葵奥様」が一人で住む屋敷だった。

執拗に追う孫八に「葵奥様」は大がかりな「仕掛け」をする。

「なけなし三昧」
幸兵衛長屋に移り住んだ煮売屋のお徳の並びに
商売敵が現れた。お菜屋のおみねの店では
長屋暮らしの者には手の届かないようなお菜を
法外な安さで評判を集めようとしていた。
自分の存在を「ある人」に知らせるために。

「その人の笑顔を見たい。その人と一緒にいたい。
その人が困っていたら助けてやりたい。惚れると
いうのは、そういうことであるはずなのに。」

商家の娘が首を吊って自害した。散々貢いだ挙げ句に
身籠もり捨てられた果てに。せめてその相手を
突き止めたいという親の申し出を受けた政五郎と
その話を受けた平四郎。仕掛けた罠に荷担したのは
弓之助の従姉、親の縁談に悩むおとよだった。

「日暮らし」
葵が殺された。下手人として捉えられたのは
その場にいた佐吉だった。
無実であると打ち明ける佐吉とどうしても真実を
突き止めたい平四郎たちは事件の解決に奔走する。

煮売屋からお菜屋、果ては仕出し屋へとお徳に
商いを広めるよう手助けをしてくれた庖丁人の彦一。
平四郎が初めて懐柔する時にも二人は
強力な助っ人となる。
一度は解決させたよその島の事件をそうしてまた
洗い直して見えてきたものは。。。

この話一番の長編です。

■鬼は外、福は内
事の顛末を伝え、腰を痛めた平四郎は
佐吉夫婦の家からの帰路、病人を乗せる釣り台に揺られる。

「一日、一日、積み上げるように。
てめえで進んでいかないと。おまんまをいただいてさ。
みんなそうやって日暮らしだ。
積み上げてゆくだけなんだから、それはとても
易しいことのはずなのに、ときどき、間違いが
起こるのは何故なんだろう。
自分で積んだものを、自分で崩したくなるのは
何故なんだろう。
崩したものを、元通りにしたくて悪あがきするのは
何故なんだろう。」

上下巻合わせて700ページを越えますが
一度として中だるみナシ。素晴らしいです。
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