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町長選挙:奥田英朗
2007年 07月 12日 |
町長選挙:奥田英朗_a0104226_2019426.jpg
伊良部、離島に赴任する。そこは町長選挙の真っ最中で…。
「物事、死人が出なきゃ成功なのだ」
直木賞受賞作『空中ブランコ』から2年。
トンデモ精神科医の暴走ぶり健在。
(「BOOK」データベースより)

重い話の後には軽いモノ♪ということでまたまた伊良部先生です。
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に続き3作目。

今回も暴走しまくってますが暴走の度が過ぎてちょっと
そこまではどうなのよ?とつっこみたくもなりますが
そこは奥田英朗、うまく「興味」を向かせる手法を。

「オーナー」は、巨人の渡辺オーナー、ナベツネを
「アンポンマン」は、ライブドアの堀江貴文、ホリエモンを
そして「カリスマ稼業」黒木瞳をそれぞれに’パロディ’として
仕上げています。
いやいや、普通こんな扱いされたら怒るんじゃない?というような
「オーナー」のナベマンは、権力の座を得て一生現役で
いたいと願う故に死への恐怖が無意識のうちに高まり
暗所恐怖症、閉所恐怖症、挙げ句の果てにカメラの
フラッシュも恐くてパニック障害に、
「アンポンマン」の安保は極端に無駄を省くことを好み
合理化を求めるうちに、なんと「ひらがな」や簡単な名称すら
ど忘れしまくり、
「カリスマ家業」の白木カオルは40代なのに若いと
世間から賞賛されるうち老いに敏感になりすぎて強迫観念に
とらわれる。。。なんて書かれてもきっと
それぞれのモデルとなった人たちは苦笑いだけで
とても怒れないんじゃないかなぁと思うほど
この登場人物達はとても魅力的。
とても偏りすぎて、初めは、違和感があっても
みんなとても「真剣」でユーモラスで愛おしい。
こうるさく考えず、シンプルに楽しめる3作品。
(「カリスマ家業」に出てくるカオルのライバル
川村こと美や「アンポンマン」の熱血して相手を
怒らせることを目的としている司会者とか
脇役にもしっかりモデルがあるのがオモシロイ。)

そしてもぅ一編。タイトル作の「町長選挙」

これがもぅ面白いです。
あたしは離島暮らしは想像はつかないのですが
もしかしたらホントにこんな感じ?と思ってしまうほど。
いや、とんでもなさすぎて逆に、え?こんなのほんとにアリ?と
思ってしまう。
対立する候補者。そして島民すべてが見守る選挙。
自分の応援する候補者が町長となるかどうかで
自分の生活も180度変わってしまう極端さ。
漁業と農業。それぞれの都合のいい公約を掲げる。

東京から出向された東京生まれ東京育ちの良平は
両陣営から支持者になれと迫られ、脅され、金を掴まされ。。。
そして町営の診療所に2ヶ月だけの赴任されてきたのが伊良部。
相変わらずの子供っぷり大爆発。

「どっちも同じ(公約)なら実現せん。うちだけ、という公約から
先に着手するのが政治家じゃ。同じなら永遠に後回しなんじゃ」

「この千寿は過疎の島じゃ。資源もなく、財源も乏しく、
普通なら全員が貧乏じゃ。でもな、曲がりなりにもインフラが
整備された文化生活を送れるのは選挙があるからなんじゃ。
無風選挙なら町長は何もせん。役場もらくをする。
数票差でひっくり返る宿敵がおるから、死に物狂いで
公共事業を引っ張ってくるんじゃ。」
「生まれたときから当然のように病院や学校がある東京者には
わからん」

はぁ〜〜〜〜。そのとおりかも、と思ってしまった。
そして島民すべてが島を愛しているという事実。
不覚にも最後の「決戦」では涙がじわーん。

おもしろいよー、伊良部。ドラマや映画に惑わされず
ぜひ原作かるーく楽しんでみて欲しいです。
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