サウスバウンド:奥田英朗
2007年 07月 17日
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小学校六年生になった長男の僕の名前は二郎。
父の名前は一郎。誰が聞いても「変わってる」と言う。
父が会社員だったことはない。
物心ついたときからたいてい家にいる。
父親とはそういうものだと思っていたら、
小学生になって級友ができ、ほかの家は
そうではないらしいことを知った。
父はどうやら国が嫌いらしい。
むかし、過激派とかいうのをやっていて、
税金なんか払わない、無理して学校に行く必要などない
とかよく言っている。家族でどこかの南の島に
移住する計画を立てているようなのだが…。
型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いた、長編大傑作。
ここのところよく読んでる奥田作品。
もぅやっぱりこの人の作品はオモシロイです。
東京、中野と沖縄、西表島と一つの家族を
中心に舞台を南に移して描かれるので
それだけ登場人物は多いのに
その登場人物のキャラがしっかりと描かれて
文中に書かれていない場面でしっかりと「生きている」と
感じられる本は大好き。
一部は二郎の中野での生活を中心に。
中央線のアンダーグラウンドな小学生を
それはそれはリアルに描いていて
ちょっと母親目線で見たらコワイくらい(苦笑)
小学生をカモにする不良中学生相手に
悩む二郎の姿、ちょっと前まで泣けば済む立場だった自分から
大人なんて役にたたない世界で
友達と向かって行く姿は頼もしくすら。
二部は破天荒な父の意向で家族で向かった先は
沖縄、西表島。
ちなみに「サウスバンウンド」とは南に行くという意味。
二部ではもぅお父さん大活躍!元過激派という強烈なキャラクター
炸裂です。現実ではあり得ないけれどもしかしたら
アリかもしれないと思わせてしまうパワーは
伊良部先生にも感じましたが、この父親はそれ以上。
そして沖縄の人たちも、こんな感じなのでは?と思ってしまうほど。
田舎への移住は考えたことは無いけれど
いざ行ってしまえば二郎の姉のように
居着いてしまうかも。
一部だけでもお腹いっぱい、これだけで1冊できちゃうよ?と
思えるほど、詰め込み過ぎ感がないでもないけれど
そこまでしっかりと、東京での二郎の生活を
描いているからこそ、二部で沖縄に移ってからの生活のギャップが
しっかりといきており、また二郎が父親に対する感情も
深く伝わるし、また、家族の絆がしっかりと描かれています。
スピード感もあり考えさせる内容でもあり
十分に楽しめました。
今年の秋には映画公開なのね。
どこまでこの父の破天荒さ、家族の絆を映像で
伝えきれるか、ただのドタバタ劇になりませんように。
by acha-books
| 2007-07-17 23:00
| :奥田英朗
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