淋しい狩人:宮部みゆき
2008年 02月 24日
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東京下町、荒川土手下にある小さな共同ビルの
一階に店を構える田辺書店。
店主のイワさんと孫の稔で切り盛りする
ごくありふれた古書店だ。
しかし、この本屋を舞台に様々な事件が繰り広げられる。
平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挾まれていた名刺。
父親の遺品の中から出てきた数百冊の同じ本。
本をきっかけに起こる謎をイワさんと稔が解いていく。
ブッキッシュな連作短編集。
(「BOOK」データベースより)
ひっさびさに宮部作品です。
一時宮部ばかり読んでいてまぁ他も開拓したいよねってな
感じでちょっと他の作家さんばかり手に取ってたのですが
やっぱり久々に読むと、この安定感、すごいですね。
さすがだな、と。
すべて出来上がっていてつっこみどころもない。
女王の貫禄って感じでしょうか(笑)
事件は確かに殺伐としたもの、痛々しいものを扱っているけれど
下町の古本屋のおじいちゃんとすれていない高校生の孫の
やり取りが全体を暖かくしているのもお見事。
古本屋のおじいちゃん(でもまだまだ現役)を
中心に繰り広げられる6編の連作短編集。
「六月は名ばかりの月」
結婚式の引き出物の表紙に書かれた「歯と爪」という文字と
姉の失踪。新妻にまとわりついていたストーカーを問いつめて行くと。。。
「黙って逝った」
急死した父の遺品は302冊の同じ単行本。父とは
まったく関係のなさそうなその本の跡を辿って行くとそこには
何ものかに殺された緑のおじさんが。
「詫びない年月」
夢枕に立つ親子の霊の騒ぎの後、家の建て替えをしようと
掘り起こしたら出て来たのは親子らしき戦時中の遺体。
「うそつき喇叭」
絵本を万引きした少年の体に残る暴力の跡。
親によるものかと周りは緊張感を高めるが。。。
「歪んだ鏡」
電車の網棚に忘れられたのか置かれた文庫本「赤ひげ診療譚」
そしてその間に挟まれた1枚の名刺。持ち主は死体となって新聞に。。。
「淋しい狩人」
連続殺人の結末を発表しないまま失踪した作家。そこに
自分はその推理がすべて解けた、と本の内容のまま殺人を
犯して行く犯人。
どの短編も質が高く安心して勧められる一冊。
by acha-books
| 2008-02-24 14:46
| :宮部みゆき
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