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花まんま:朱川湊人
2008年 09月 30日 |
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母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。それには、信じられないような理由があった…(表題作)。
昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。
直木賞受賞の傑作短篇集。2005年第133回直木賞受賞作。

なんなんでしょう。この本は。
カテゴリ的にはホラーなのですが底に流れる
まるで整備されていないどぶ川を眺めるかのような
見たくないようなそれでいて覗き込んでしまうようなせつない
ノスタルジー。差別や暴力が普通に存在した時代の
やるせない子供時代をまるで抱きしめるかのような。
ノスタルジーって優しい懐かしさをさすものではないのよね。

話はすべて関西を舞台に関西弁の会話が連なるので
肌に合う合わないはあるかもしれないけれど
逆に、土地にも時代にも距離のあるあたしは
別世界の話と読んでいたはずなのに、深く感情移入してしまって
痛かった一冊。短編でよかった(苦笑)

解説が重松清というのもぴったり。
「都市伝説セピア」も読んでみよう。

  「トカビの夜」
主人公ユキオは、小学二年の春から四年生の夏まで
父の事業の失敗で東京を逃げるように
大阪の下町の文化住で暮らしていた。
2階建ての一軒家でありながら壁同士が1枚で
くっついているような家は隣りの声がすぐに
聞こえて来る密集した住宅地。
一人っ子だったユキオは友達とまるで兄弟のように
近く接していられるその環境にすぐに馴染む。
みんな貧しく同じような環境でありながらその中でも
存在する差別。一番奥に住む朝鮮人一家。
身体が大きく乱暴者の兄チュンジと身体が弱く
家にずっといるばかりの弟チェンホ
ユキオの持っていた怪獣の玩具や本は2人を仲良くするが
チェンホは病気で亡くなってしまう。やがて長屋で起きる様々な怪現象。

  「妖精生物」
世津子は小学四年生の夏、近所の高架下で怪しげな男から
「ずっと昔の魔法使いが作った、妖精生物」を買う。
クラゲのように見えるその生き物は掌に乗せると
不思議な甘美な感覚=刺激を与えてくる。
幸せをもたらすと言われたはずの妖精生物。
父が営む下請け大工の工務店に急遽雇われた
標準語で喋るまるで芸能人のような大介さんが
やって来たことで、一変する。普段大人たちから
かまってもらえない子供だった世津子と弟は
遊んでくれる大介さんが好きだった。
特に世津子は異性として意識するように。
これが妖精生物がもたらした幸せかと思った矢先。。。
性的な匂いに満ちた作品。ラストがさらに痛々しい。

  「摩訶不思議」
アキラは三十過ぎでぶらぶらしている遊び人の
父の弟、ツトムおっちゃんが大好きだった。
ところがおっちゃんは歩道橋の階段から落ちてあっけなく死んでしまう。
その葬式の日、焼場の前で霊柩車が止まってしまう。
おっちゃんは未練があるに違いない、と
アキラだけが知っていた女性カオルさんを
籍は入っていないもののオッチャンの奥さんが
目の前にいるものの呼び出す。
動いたかと思った霊柩車はしかしまた止まってしまう。
そこへ妹のヒロミがさらに言う。「おっちゃん、もしかして
ヤヨイちゃんに会いたいんやないかな」
「人生はタコヤキやで」と言っていたおっちゃん。
関西ならではなお笑いと逞しさに溢れた作品。

  「花まんま」
主人公、俊樹は三歳離れた妹のフミ子を
どんな時でも守ってやるのが兄の努めだと
事故で死んだ父が生前言われた。
それ以来、兄は損な役回りだと思いながらも
使命のように思って来た。
ところが「フミ子」の様子が4歳ごろガラリと変わった。
いきなり大人びた妹。他の子供達と遊ばなくなったり
突然、一人で遠くまで行ってしまったりする。
俊樹がフミ子のノートから見つけたのは見知らぬ女性の名前。
それもフミ子が習ってない漢字で。
自分には彦根という場所で別の家族といっしょに暮らしていた
記憶があるといいだす妹。
ある日、7歳の「フミ子」の頼みで二人は彦根に向かう。

  「送りん婆」
みさ子の両親が勤める運送会社は遠い親戚であり
その社長の母親は不思議な力を持っていた。
「おばさん」は「送りん婆(おくりんばー)」と呼ばれる
言霊の力で生きているものを殺す呪文をとなえ
臨終に苦しむ人を楽にする技を受け継いでいた。
要は意識より先に身体を殺してしまう言葉。
身体が先に死んでいるので痛みや苦しみから解放され
周りに感謝の言葉を伝えたり、穏やかに、その後
精神も身体から切り離されていく。
8歳のとき、同じアパートに住む友達の
父親が病院からも匙を投げられ家に帰され苦しみ続け
おばさんはその父親を楽にしてあげるよう頼まれる。
そのときからおばさんはみさ子を助手として使うようになり。。。

  「凍蝶」
ミチオは周囲から差別され蔑まれる家に生まれた。
わけも判らない小さい頃から差別され
最初は仲良くなった友達も親が差別を子供に見せることで
やがて子供も同じようにミチオを差別し、離れていく。
自分は要らないものとし、まるで透明な存在のように
過ごしていた小学校2年のとき、引っ越して来たばかりの
東京からの転校生、マサヒロと仲良くなる。
大阪という土地柄、東京というだけで、関西弁を喋らないと
いうだけでどこか浮いた存在のマサヒロは
すぐに同じような扱いを受けていたミチオを子供ならではの
嗅覚で嗅ぎ分け親しくなっていった。
しかし、マサヒロも3ヶ月で「土地に」慣れてミチオから
離れて行った。
そんなある日、ふと出かけた先の霊園で
ミワさんと名乗る美しいの女の人に出会い話をするようになる。
ミチオが故郷にいる弟に似ているのだという。
私は毎週一度その霊園でミワさんと話したり遊んだりするのだが。。。


解説に書かれてたのですが、当時小学校6年生の作者の
息子さんがこの本を読んで泣いたという話が一番印象的だったのですが(苦笑)
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